松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

参院選の重大争点 消費増税強行に識者40人が真っ向反対

  


〈安倍首相が10月の消費税率10%の引き上げを延期し、衆参同日選に踏み切るのではないか〉
 新元号「令和」に入るや否や、新聞・テレビで連日、報じられ続けていた「解散風」が、国会の会期末が26日に迫る中でピタリと止まった。
 安倍政権の支持率が依然として40%台半ばから50%台半ばを維持していることに加え、自民党が独自に実施した世論調査で「参院選単独でも勝てる」との結果が出たことから、政権幹部が新聞・テレビの政治部記者に対して「なし」と報じさせたのが主な要因だ。
 自分たちが選挙に勝つためには、参院選単独がいいのか、それとも思い切って衆参同日選に踏み切るべきなのか。政権に居座り続けられるのであれば、選挙の「大義」などクソったれ。後付けの屁理屈で何とでもなる――。
 この国民生活を無視した身勝手極まりない政府・与党の姿勢にはホント、怒り心頭だが、ここにきて参院選の争点に急浮上してきたのが、金融庁の審議会ワーキンググループ(WG)が報告書にまとめた「老後2000万円貯蓄」問題だ。
「国民に向かって『100年安心』『人生100年時代』と言いながら、年金に頼らず自己責任でカネを工面しろというのは政治の責任放棄だ」「2000万円貯蓄しなければ老後生活は安心して送れないのか」
 イケイケドンドンで責め立てる野党に対し、政府・与党は防戦一方。突き上げられた麻生財務相は報告書を「受け取らない」と言い出し、森山国対委員長からは「もうない」との仰天発言が飛び出す始末で、国民の怒りの火に油を注ぐ展開となっている。
「都合の悪い事実」は、頬かむりして「ナシ」にするのは、安倍政権の常套手段とはいえ、すでに国民に公表された報告書さえも好き勝手に隠せると考えているのだから、長期政権の驕り高ぶりもまさに極まれりだ。いずれにしても参院選の大きな火ダネになったことは間違いないが、そんな政府、与野党の年金バトルの様子をほくそ笑んでいるのが財務省だろう。
 これまで新聞・テレビであふれた「増税延期で同日選」との報道に対し、幹部が「選挙向けのパフォーマンス」と切り捨てていた財務省にとって、国民の関心が高い「老後2000万円貯蓄」問題は、「安心の老後生活を送るためには増税は避けられず」という格好の理屈付けにもなるからだ。
 金融庁WGの「消された報告書」には、年金収入を補完するための手段として金融商品の必要性が紹介されていたが、これは「年金制度はいずれ財源不足に陥る」との見方を示したとも受け取れる。つまり、そうやって年金制度の破綻、財源不足を静かに煽り、それを逆手に増税強行――という財務省の思い描くシナリオがこの問題のウラには透けて見えるのだ。高千穂大の五野井郁夫教授(国際政治学)がこう言う。
「財務省に何らかの思惑があったのかはともかく、(2000万円貯蓄問題は)年金財源の現状を周知する効果はあった、消費増税も理解を得られやすい環境になった、と考えているのではないか。ただ、増税となれば生活を切り詰め、節約に動く家庭が増えるのは容易に想像がつく。景気が上向く状況は何もなく、不況まっしぐらでしょう」


■「信用できない政府」の消費増税が日本経済の破滅に拍車を掛ける
〈全世代型社会保障の構築や財政健全化に向け、本年10月に消費税率を10%に引き上げます〉
 自民党は7日に公表した参院選の公約で消費増税を明記。世の中には、もはや増税は避けられないとのあきらめムードも漂っているが、日本世論調査会が今月初めに実施した全国面接世論調査によると、10月の消費増税に反対する人は60%にも上る。反対理由で最多は「低所得者ほど負担が重くなる逆進性の問題」(33%)だったが、次いで懸念されたのは「税金の負担増」と並んで「景気への悪影響」(いずれも23%)だ。
 政府は5月の月例経済報告で〈景気は緩やかに回復している〉との認識を示したものの、内閣府が発表した1~3月期のGDP(国内総生産)改定値では、個人消費や企業の設備投資といった内需関連は軒並み低調だった。激化する米中貿易戦争が長引けば、日本経済の牽引役だった輸出企業はメタメタ。英国の離脱問題に揺れ動くEU(欧州連合)経済だって今後、どうなるか分からない。とてもじゃないが、消費増税に踏み切る環境にないのは明らかで、ここで増税を強行すれば国民は今以上に生活防衛に走り、消費は劇的に冷え込むだろう。経済ジャーナリストの荻原博子氏がこう言う。
「実質賃金は下がり、物価は上昇する中で、仮に増税に踏み切れば間違いなく国民のサイフは固く締まる。税率10%というのは、例えば商品価格5万円なら、消費税額は5000円。計算しやすい分、消費者は『じゃあ買うのをやめよう』となるでしょう。政府が考える以上に10%の税負担のインパクトは大きいのです。日本経済は間違いなくガタガタになります」


■国内有数の名だたる識者の背筋が凍る指摘
〈今年の10月、もしも本当に10%への消費増税を断行してしまったら、もう間違いなく日本は「安倍令和恐慌」とでも言うべき、とてつもない不況に陥ってしまうことになる〉
 なぜか新聞は黙殺したままだが、元内閣官房参与の藤井聡・京大大学院教授は増税反対を強く訴える有識者のひとりだ。先月21日には、岩田規久男・前日銀副総裁と一緒に増税反対の集会を都内で開催。約40人の学者らの意見をまとめた文書を安倍首相や二階幹事長宛てに提出した。日刊ゲンダイデジタル版でも藤井教授は〈有識者40人が予言する「安倍令和恐慌」のリアルな危機〉と題して識者の意見を紹介しているのだが、どれも傾聴に値する貴重な意見ばかりだ。
〈景気後退局面に入った現状での消費税増税は、深刻な消費不況を引き起こし、企業倒産の増加、失業率の上昇をもたらす可能性が高い〉(伊藤周平・鹿児島大学教授)
〈インフレ率が低い以上、消費税は増税ではなく、減税や廃止にすべき〉(池戸万作・経済政策アナリスト)
〈世界経済が明らかに変調をきたしている今、さらなる増税を行えば、我が国の経済活動や国民生活に取り返しのつかないダメージを与えかねない〉(島倉原・株式会社クレディセゾン主任研究員)
〈米中貿易戦争、イギリスの合意なき離脱、日米貿易摩擦が日本経済に及ぼす悪影響に、消費税増税の悪影響が上乗せされてしまい、日本経済の復活を目指す現在までのアベノミクスの成果を帳消しにしてしまうことは、ほぼ確実〉(浅田統一郎・中央大学経済学部教授)
 国内有数の名だたる識者の“直訴”だけに背筋が凍る。指摘通りなら、増税すれば〈全世代型社会保障の構築〉どころか、社会保障も景気も壊滅状況に陥るだろう。経済評論家の斎藤満氏がこう言う。
「景気が後退局面に入ったことを政府自身が認めながら、それでも増税強行を掲げて選挙するというのだから正気の沙汰とは思えませんが、問題は今の政府与党が増税分のカネを何に使うか分からない、信用できないということ。年金などの社会保障に使わず、武器を大量に買ったり、海外にバラまいたりするかもしれないし、政権中枢に近しい仲間内で山分けして終わり、かもしれません。景気が低迷する中での増税は論外ですが、増税しても国民生活の向上や、将来の安心につながらないという『信用できない政府』の姿勢に問題があり、それが日本経済の破滅に拍車を掛けることになると思います」
 野党の予算委要求を拒否しながら、公邸にお笑い芸人を呼び込んでバカ笑い。こんな政権だからこそ、なおさら増税させてはダメなのだ。
(日刊ゲンダイ)
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