Matsuo Atsuokiのブログ

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法、歌唱法。

バーバラ・ボニー公開レッスンの問題点


BB's lesson \"Musetta aria\"


バーバラ・ボニーはいきなりムゼッタの役作りのための、或る種勝手な思い込みによるムゼッタ役を作り上げようとするが、それは立ち稽古の前に演出家が自分の演出プランとして説明すべき話であって、この曲を歌うためにはもっと他の事を受講者に絵解きしてやらなければならない。
それはこのアリアがなぜワルツか、という基本的な問題を解説しなければならない。プッチーニがこの曲のリズムをワルツに設定したのには訳がある。それはワルツという曲は恋人と踊る曲だからなのだ。決してアルチンドロのためでもなければ周りの人達のためでもない。だからこのアリアがワルツであるだけでムゼッタの役作りは既に決められていると言っても良かろう。不要な自分の勝手な思い込みを披露してはならぬ。


まずこの受講者の一声を聞いただけで、Quandoの一声だが声に多少トレモロがかかっているのを見破らなければならないだろう。恐らく初めの音E5をレガートに歌うためのブレスのあり方に発声法上基本的なメソッドが身についていないのではないかと判断する。
E5といえばソプラノにとってはパッサッジョ寸前の音域、つまり不安定にならざるを得ない音域でありいきなり[u]の母音で歌いださなければならない。要するにブレスの力で押し出し気味に暗い[u]の母音を歌おうとすれば誰だって喉にストレスを生じ、トレモロがかかってしまうだろう。
バーバラ・ボニーはこの一番大事な基本をスルーしてsweetの発語でのボーカリーゼを指示した。とんでもない事である。Quandoの[u]の母音は口を横に開いては決して歌えない。パバロッティのマスタークラスの公開レッスンで「人知れぬ涙」を歌ったTonio di Paolo君の[u]の母音の指導がとても参考になる。



Pavarotti masterclass


[u]の母音は舌先を硬口蓋へ盛り上げ、口元を細めるべきであり、決して日本語の[ウ]の発音の様に上下の歯を食いしばって発音すべきではない、口腔を狭くすることによっても[u]は発音できるが、それでは美しい響きにならないのは口腔の容積が少なすぎるからである。

  ネトレプコの【u】

ついでに申し述べれば、[e]の発音の指導法もおかしい。前にも述べたが[e]は[a]の発音から舌が前方へせり出し、顎はほんの僅か狭まるに過ぎず、彼女のような口と顎の落とし方では如何なる母音も正しく発音できないだろう。

    ネトレプコの【e】

  ネトレプコの【a】

彼女は何かといえば頬骨周りの筋肉を持ち上げて明るい声を要求するが、これでは口腔内の容積は増えず、明るい声は出ても豊かな声の響きが得られるわけがないのは子供にも分かる論理である。
ましてや[a]の発音を矯正するために舌を前に垂らして発音させていたが、これは私が芸大に入学した頃、四谷文子門下で盛んに指導していた[a]の発声法でむしろ懐かしい気さえ覚えてしまった。
こう並べてくると受講者にとって害はあっても何一つためにならぬ指導を続け、受講者が歌い終わると両手を広げて観客の拍手を強要する、これはもう公開レッスンでもなんでもない。単なるバーバラ・ボニーのためのワンマンショーでしかない。NHKも、もう少しはマシな指導者を招聘すべきだ。
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