松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

「いつまでモリカケ」論 新聞読み比べで分かった“それでもモリカケする”理由


 いつまでモリカケやってんだ? という言葉を最近よく聞く。新聞でのこの読み比べが面白かったのである。


「いつまでモリカケ」言い出したのは?
 まず私の記憶だと「いつまでモリカケ」が最初に印象深かったのが4月2日に産経新聞に掲載されたコラムだ。


「【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】いつまで『森友』なのか 憲法改正や安全保障問題の矮小化は国民への背信だ」


 冒頭を引用してみよう。
《国際情勢が激変する中で、日本の政治家、政党はいつまで森友問題なのか。財務省の文書改竄(かいざん)は確かに重要だが、国家としての日本の在り方を問う憲法改正や安全保障問題を政局絡みで矮小化することは国民への背信である。》


 櫻井よしこ氏は2か月前から「いつまでモリカケやってんだ」と主張していたことがわかる。


 このころ「蚊帳の外」という言葉もよく聞いた。日本だけ取り残された論である。櫻井氏はこの論に対しても、


《わが国の安倍晋三首相だけが取り残されたとの指摘があるが、皮相な見方であろう。北朝鮮が平和攻勢に転じたのは日本の攻めの姿勢ゆえだ。》
 と「蚊帳の外」も否定していた。


読売新聞も「もう終わりにしよう」
 いつまでモリカケやってんだ系の究極社説はこれ。


「衆参予算委 繰り返しの論議に辟易する」(読売新聞 5月29日)


 このときの状況は、安倍首相と加計学園の加計孝太郎理事長との面会が2015年2月にあったという愛媛の新文書が出て話題のとき。


 社説は、真相を究明するとして論議を重ねたが堂々巡りに陥っているとし、


《明確な根拠も示さず、疑惑をあげつらう野党と、粗い対応で混乱を招いた安倍首相の双方に責任があろう。》


《客観的な事実に基づかない野党の質疑にも問題がある。》


《同じ議論の繰り返しには辟易してしまう。》


 読売師匠は最後に、


《与野党には、意義のある論戦を展開することが求められる。》


 議論すべきテーマはほかにある、と結んだ。まさに「いつまでモリカケ」である。


 これらの「もう終わりにしよう」という言説に対し、自民党のベテラン議員から反論が放たれた。


村上誠一郎の「リアルなお叱り」


 毎日新聞は「『いつまでモリカケ』論は正しいか」とワイド特集を組み(5月31日 東京夕刊)、自民党の村上誠一郎元行政改革担当相の言葉を載せた。


《『たかがモリカケでいつまで騒ぐんだ』論をどう思うかって? 話にならないね。今起きていることは民主主義の危機なんだ》


《『政治家や役人は国民にウソをついてはならない』という民主国家の大原則をも壊しかねないのに、野党やメディアに責任転嫁。本末転倒だ》


《『もっと大切な議論を』と言うが、その議論を、信を失いつつある現政権に任せられるか。『たかがモリカケ』でこの有り様なのに、安全保障や外交でまともな議論が期待できるか》



 モリカケ問題が本当に小さな問題だとしたら、そんなことで詰められているリーダーが果たしてトランプ米大統領や北朝鮮の金正恩氏と対等に渡り合えるのか?


 小さな問題でのこの立ち居振る舞いのマズさは、大きな問題での大チョンボ予告編ではないのか? 村上氏の言葉を聞いているとたしかにそうも思えた。リアルなお叱りであった。


福田康夫元首相が説く「記録を残すとは何か」
 モリカケは外交にもつながる、という論は福田康夫元首相も続いた。


「元首相が驚く『記録は民主主義の原点 改ざんするなんて』」と題したインタビュー。朝日新聞の一面と社会面に大きく掲載された(6月9日)。


「記録を残す」とはどういうことか。元首相は語る。


《正しい情報なくして正しい民主主義は行われない。記録というのは民主主義の原点で、日々刻々と生産され続けるのです。》


 さらに、


《外交にだって影響します。尖閣諸島や竹島などの領土をめぐる対立をみても記録の重要性がわかるでしょう。「日本の国立公文書館にいけば、正確な記録がある」と世界が考えるようになり、誠実に事実を積み重ねてきた国ということになれば、日本は信用される国になります。》


 逆に言えば、平気で記録を改ざんする国は大事な領土問題でも外国から信頼されなくなる。それは恐ろしい事態だ。やはりモリカケは「小さな問題」ではないのである。


いつまでもモリカケやらざるを得ない理由
 福田元首相は、


《国会では政府が事実を小出しにし、また新たな事実が発覚する、ということが繰り返されている。これではいつまで経っても終わりませんよ。いつまでも果てない議論の責任は追及する野党の側にあるのではありません。原因をつくった政府が責任を持って解決することを目指さなければならない。》
 とも述べている。


 野党の追及について「明確な根拠も示さず」「客観的な事実に基づかない」と書いた社説を先ほど紹介したが、そもそも文書が改ざんされたり隠蔽されていては追及できるものも追及できないであろう。そして新事実があとからあとから出てくる。


 この調子で行くと「いつまでモリカケやってんだ」どころか「いつまでもモリカケやらざるを得ない」にも思える。自民党のベテラン議員や元首相の言葉を読んでそう思った。


 神は細部に宿るのである。
(文春オンライン)
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