松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

なぜ、こんな政権が続くのか 虚無が覆う無法国家の会期末

  


■安倍5年間で加速する転落はもう破滅まで止まらない


「半端ないって!」と、日本中がサッカーW杯日本代表のまさかの1勝に酔いしれる中、国会会期が7月22日まで大幅延長された。


 W杯決勝の7月16日まで国民が熱狂する裏で、安倍政権がデタラメ法案の強行採決ラッシュを画策している。数の力で押し切ろうとするのは、そろいもそろって国民に悪影響を及ぼす「悪法」ばかりだ。


 すでに衆院で採決を強行した「働き方改革」こと過労死法案。高年収の専門職の残業代をゼロにする「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)の創設を含んでいるが、これがもう、いいかげんの極み。高プロの年収要件について政権サイドは「1075万円以上」と喧伝してきたが、法案は「平均給与の3倍」と定めるのみ。対象者は「会社側と交渉力のある高度な専門職」に限るはずなのに、平均給与算出の際にはパート労働者の給与も含まれるというから、メチャクチャだ。


 パートを外した試算だと、平均給与の3倍は1200万円を超す。その上、高プロの適用条件となる年収の計算には、通勤手当なども含まれる。財界の要請を受け、なるべく多くの労働者に「残業代ゼロ」の網を広げようとする政権の意図はミエミエである。


 安倍は国会で高プロ創設について「労働者のニーズ」(5月23日=衆院厚生労働委)とヌカしたが、必要性を把握するための厚労省のヒアリング実施は法案要綱の作成後。調査対象者は、たった12人しかいなかった。安倍のウソと厚労省の手抜きだけでも、過労死法案は廃案にして出直すのがスジだ。


■すぐに国民は忘れるというヨコシマな思惑


 世論の7割が今国会での成立を望んでいないのに、安倍政権はカジノ法案の成立を全力で急いでいる。


 法案は全251条に及ぶにもかかわらず、衆院審議はわずか18時間で打ち切って、強行採決。200条超えの新規立法は1997年の介護保険法以来で、当時の委員会審議は50時間。安倍政権の拙速さは異常だ。


 カジノを成長戦略とする是非や、賭博を禁じる刑法との整合性も不透明。ギャンブル依存症対策を取りながら、カジノ業者に入場客への賭け金の貸し付けを認めるなど矛盾だらけ。これでは、客を借金漬けに追い込み、依存症を助長するだけだ。


 自民が出してきた公選法改正案だって、参院選の「1票の格差」とは名ばかりの現職の救済策に過ぎない。合区対象の「鳥取・島根」「徳島・高知」で候補になれない現職を、比例代表の定数を4増やし、名簿順位で優遇する狙いだ。議員1人当たりのコストは少なくとも年1億円はかかるのに、自民の都合だけで「比例4増」とは税金私物化と言うほかない。


「これだけ疑問の多い法案を与党は数の力に任せ、ロクに審議もせずに次々と強行採決するのでしょう。来年は統一地方選と参院選が控えています。多くの国民に理解されそうにない法案をサッサと片づければ、選挙の頃には国民も忘れているに違いない。安倍政権の強権姿勢には、そんな国民軽視のヨコシマな思惑がにじみます」(政治評論家・森田実氏)


 ご都合主義政権による国会の“アディショナルタイム”引き延ばしは即、“レッドカード”ものの反則行為である。


■不誠実首相のせいでマトモな審議が望めない


 第2次安倍政権の発足以降、通常国会の延長は2度目。2015年に安保関連法の成立を期すため、戦後最長となる95日間も延長した以来だ。


 昨年はモリカケ問題の真相解明のため、野党が憲法に基づき臨時国会開催を求めても、安倍は3カ月も無視。ようやく9月に召集すると、冒頭解散に踏み切り、露骨なモリカケ隠しで総選挙に突入した。


「首相自ら『働き方』や『カジノ』を今国会の目玉に掲げた手前、何が何でも成立させたいのでしょうが、憲法は国会を『国権の最高機関』と定めています。決して政権の下請け機関ではないのです。政権の意のままに延長したり、召集しなかったりするのは議会制民主主義への冒涜であり、国会運営の空洞化を招くだけです」(九大名誉教授・斎藤文男氏=憲法、行政法)


 多くの憲法学者が国会の私物化に苦言を呈しても、安倍政権はお構いなし。この5年間で特定秘密保護法や安保関連法、共謀罪など違憲性が疑われる悪法の数々を最後は「数こそ力」で、採決を強行。国民の理解を得ることなどハナから放棄して、強引な政権運営を続けてきた。前出の斎藤文男氏はこう嘆く。


「日本国憲法は権力の抑制的な行使を言外に求めていますが、安倍首相は完全に無視。使える力は何でも使ってしまえという態度で、解散権まで恣意的に行使する。まるで自分こそが国権の最高機関であるかのような政治姿勢です。国会でも首相は嘘とゴマカシを繰り返し、野党の質問に真正面から答えない。常に論点をずらして、はぐらかす。首相が政治は数が勝負とタカをくくった態度では、国会を延長したところで、マトモな審議は望めません。安倍政権の5年半で、政治はここまで堕落したのかと、むなしさが募るばかりです」


 国民がW杯の熱狂から冷めた頃には、デタラメ法案の強行採決ラッシュで通常国会が幕を閉じるのは火を見るより明らか。無法国家の会期末には、ただただ、虚無感だけが漂うのである。


■「登場人物全員、嘘つき」の狂った光景


 そもそも会期が足りなくなったのは、安倍政権の自業自得。モリカケ問題を巡る不誠実な態度が要因だ。


 安倍は昨年2月に森友問題で「私や妻が関わっていたら総理を辞める」と豪語したが、その発言の意味を自らコロコロと変遷。両問題とも「ない」と言った文書は次々と出てくるし、官僚は安倍の答弁に合わせて国会で平然と嘘を吐き、記憶喪失となり、公文書まで改ざんした。


 安倍は昨年7月に国会で加計学園の獣医学部新設計画を「今年1月20日に初めて知った」と答弁したが、愛媛県は先月、15年2月25日に加計孝太郎理事長と面会し、獣医学部新設の構想の説明を受けたとする文書を国会に提出。この時は誰もが安倍は辞めて当然と思ったはずだが、なぜ今なお生き残っているのか。


 安倍は嘘の証拠を突きつけられても、「伝聞の伝聞」とムキになって否定し、関係者は他の記憶は曖昧なのに、決まって全員が「学園側と3回面会したが、首相に報告していない」(柳瀬唯夫元首相秘書官)、「首相が計画を知ったのは17年1月20日だと思う」(加計理事長)と、安倍に都合の良い記憶だけハッキリ覚えている。


 この不自然さは口裏合わせを疑うほかないが、「記録」VS「記憶」の堂々巡りは結局、首相との面会は“虚偽報告”で、「事務局長が勝手にやった」と部下に責任転嫁した「腹心の友」の加計理事長の“好アシスト”によって、疑獄の主犯の安倍は居直り、逃げ切るハラだ。前出の森田実氏はこう言った。


「安倍首相も加計理事長も、嘘を嘘で塗り固め、嘘の上塗りを重ねているようにしか思えません。国のトップや教育者として、あるまじき姿ですが、アベ政治の5年半で、この国全体から『道義』が失われているのが心配です。『嘘をついてはいけない』という基本的な倫理を軽んじるムードがはびこり、少なからぬ人々が保身のためなら嘘も平気な首相を許してしまう。こうした誤った風潮が延長国会を通じて、さらに蔓延すれば、この国の転落を加速させるだけです。後世の恥とならないためにも、野党は強気の態度で腐った政権を追い込むべきです」


 延長後も「登場人物全員、嘘つき」の異常な光景がまかり通れば、後世の歴史家は間違いなく、この国会を「歴史の分岐点」と評価するだろう。落ちるところまで落ち、破滅まで止まらなかった日本の分かれ目だった、と。
(日刊ゲンダイ)
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