松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

なぜだ? “安倍内閣支持率”上昇 その裏の虚飾とカラクリ

 


 各社の世論調査で内閣支持率が上昇している。森友・加計問題など安倍首相にまつわる疑惑は何ひとつ解明されず、国民世論も「納得できない」が多数を占めるのに、なぜ支持率が上がるのか。


 自民党内からは「支持率は下げ止まった」と安堵の声が上がり、秋の総裁選での安倍3選が既定路線のように語られ始めている。先月までは、モリカケに公文書改ざんで支持率下落が止まらず、危険水域を割り込んで「すわ退陣か」と言われていたのが嘘のようだ。


 日経新聞とテレビ東京による22~24日の世論調査では、内閣支持率がなんと10ポイントも上昇して52%だった。不支持率は前月の53%から42%に下がり、4カ月ぶりに支持率が不支持率を上回った。


 国会は32日間の延長が決まったが、この1カ月間で安倍が何をしたというのか。都合の悪い文書は認めず、しらばっくれ、嘘で上塗りし、疑惑から逃げ回っていただけではないか。前月から支持率が10ポイントも上がる理由がさっぱり分からない。


 日経の調査では、支持する理由は「国際感覚がある」が37%で最も多く、「安定感がある」(36%)、「指導力がある」(22%)が続いた。国際社会の激動にまったく対応できず蚊帳の外なのに「国際感覚がある」? これだけゴタゴタ続きの政権のどこに「安定感がある」のか? ますますもってワケが分からないのだ。


■蚊帳の外で飛び回る1匹の蚊


「国外逃亡の外遊で、何かやっているかのように見せているだけなのが安倍外交です。G7では存在感を示せず、日米首脳会談でもトランプ大統領から厳しい通商問題を突き付けられ、米朝会談でハシゴを外された。ロシアのプーチン大統領には領土問題で袖にされ、北朝鮮問題の関係6カ国の中でも唯一、金正恩と会えずに国際社会から置き去りにされています。5年半の安倍外交で国益に帰する成果は何もなく、訪問先でカネをばらまいているだけなのですが、外遊をメディアが華々しく伝えるおかげで、パフォーマンス外交を支持率回復につなげてきた経緯がある。同行取材したメディアは『何も成果がなかった』とは報道しませんからね。拉致問題だって、安倍政権の間は解決できないとメディアも分かっているはずですが、『私の政権で解決する』という首相の言葉を垂れ流して、国民に期待を持たせている。実際は拉致、拉致と口で言うだけで北朝鮮とまともに交渉もできず、蚊帳の外で飛び回っている1匹の蚊に過ぎません。本当に国際感覚があるのなら、米国依存一辺倒ではなく、北とも対等に渡り合えるはずです」(政治学者の五十嵐仁氏)


 政府は北朝鮮問題への対応を強化するため、外務省に新たに専門の部署を設ける方針を決めた。これまで韓国と北朝鮮を担当してきた北東アジア課を来月1日付で2つに分け、対北政策を専門的に扱う部署を設けるというのだが、何を今さらではないか。拉致問題担当大臣は何をやっていたのか? 安倍は政権発足当初から拉致問題を「最優先課題」と言いながら、何もしてこなかった。北の脅威をあおり、安保法制や防衛費拡大に利用してきただけだ。


 これほど罪作りな外交無策が「国際感覚がある」と評価されるなんて、ブラックジョークというものだ。安倍夫妻が仲良く手をつないで外遊に出かける映像を撮らせるだけで、国際感覚があると思わせることができるなら、こんなラクなことはない。


■デタラメすぎて政治に関心も期待も持てない悲劇


 なぜ、疑惑まみれのペテン首相が評価され、こうも高い支持率を得られるのか。26日の日経が「支持率の水準、質問方法で差」という記事で、そのカラクリを明かしていた。


 日経と同じ週末の23~24日に実施した毎日新聞の世論調査では、支持率が5ポイント増の36%だったが、不支持率は40%で、いまだ不支持率の方が高い。その要因のひとつが質問の仕方だというのだ。
<日経は内閣を支持するか、しないかの2択だが、毎日は「支持する」「支持しない」「関心がない」の3択で聞く>
<無関心層は2択を迫られると支持に回る人が多い可能性がある>
<日経は「いえない・わからない」と答えた人に「お気持ちに近いのは」と重ね聞きする。2回聞くので支持率、不支持率ともに1回のみ聞く調査より高めに出る>


 その結果、日経は支持52%、不支持42%で、「いえない・わからない」という回答は6%におさえられている。


 この分析は、ある意味で的を射ているのだろうが、完全とはいえない。22~24日の日経調査は全国の18歳以上の男女に携帯電話も含めた乱数番号(RDD方式)による電話で行われたが、回答率は47・2%だったという。半数以上が答えない調査で支持率50%なら、全体の母数からすれば支持率は25%未満だ。


「安倍政権における政治の私物化はすさまじく、このデタラメぶりを見た有権者の政治離れが加速しているのではないか。自民党政権のままでトップを代えたいと思っても、自分たちが直接、首相を選べるわけでもないし、政治に関心を持てなくなっている。どの調査でも『首相を信頼できない』という声が多いので、安倍内閣を積極的に支持しているわけではない。変化を好まない国民性もあるかもしれませんが、世論調査に答える層でも、政治に期待していないから、現状維持で仕方ないと考える人が増えているように感じます。アベノミクスは掛け声倒れで一向に給料は上がらず、自分たちが納めた税金がこれだけメチャクチャに使われていたら、普通なら国民も怒りますが、もはや諦めモードなのかもしれない。しかし、それでは権力の思うつぼです。麻生副総理が『新聞を読まなければ自民党支持』と言い放ったことからも分かるように、権力側が政治に関心を持たせないようにしてきた側面もあるのです」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)


■好き放題が「指導力」なのか


 安倍政権は、国民の多くが反対している「働き方改革法案」も「カジノ法案」も今国会で成立させる方針だ。もはや強行採決にも躊躇がない。


「国民の声を聞かずに好き勝手するのが『指導力』と評価され、数の力で少数野党をねじ伏せる圧倒的議席数が『安定感』と支持される。嘘と脅しの強権政治で、歯向かう者は許さずドーカツする安倍政治は、民主主義を破壊する独裁です。こんな手法が『指導力』などと美談にされるようでは、この国は終わっていると言うしかありません。本来なら総辞職ものの不祥事が重なっても、安倍サマ服従で3選を支持する自民党議員の劣化もひどい。メディアも報復を恐れて萎縮し、社会全体がファッショ化している日本は危機的状況です」(五十嵐仁氏=前出) 勝手に党の規定を変えて総裁任期を延長し、なりふり構わず3選に突き進む安倍の姿は、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領ら名だたる独裁者と変わらない。


 24日のトルコ大統領選では、独裁仲間のエルドアン大統領が、メディアを拘束して報道の自由を奪ったヤラセ選挙で再選を決めた。安倍はすぐさま「見事な大勝利を挙げられたことを心よりお喜び申し上げる」と祝意のメッセージを送ったが、EUは「報道を制限して行われた選挙を疑問視する共同声明」を発表した。いつの時代も、メディア統制が独裁の道具になるのだ。


 大メディアが安倍政治への批判を封印して、サッカーと紀州のドン・ファン一色の日本では、W杯が終わる頃には支持率70%になっていてもおかしくない。働き方改革はサラリーマン全般の生活と人生に直結する話なのに、多くの国民が自分には関係ないとばかりにサッカーW杯に夢中になっている不思議。まさに「パンとサーカス」の世界と言うほかない。国民は本当にそれでいいのか。
(日刊ゲンダイ)
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