Matsuo Atsuokiのブログ

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法、歌唱法。

Bariton Acutoの神様 Piero Cappuccilli 特集 02

 


先日「アクート歌唱法の原理と実践」を読み解く、でアクートについて多くのページをさきましたが、この特集では実際に演奏されるアクートの声がいかなる響きを持つものか、そしてそれらを実際耳にすることによってアクートの声のイメージを明確にすることでアクートに対する理解を深めてみたいと思います。
先ずはイタリアの代表的なバリトンだったピエロ・カップチッリのレオンカヴァッロ作曲「道化師」のプロローグを聞いてみましょう。
ピエロ・カップチッリといえばCavaliere baritonoであり、主にヴェルディ作品などを手がけたバリトンのスペッシャリストとして第一人者でした。アリアの最後As5、G5の最高音は広がりを見せ、さすがヴェルディ歌いの第一人者としての風格が感じられます。



Piero Cappuccilli. \"Prologo\" + Bis. I Pagliacci. R. Leoncavallo


ディートリッヒ・フィッシャー=ディスカウ。ドイツリートの第一人者であり、かのエリザベート・シュヴァルツコップに最も神に近い男、と言わしめた話は有名ですが、バリトンとはいえ、世間ではヘルデンテノールという評判が立つほど高音域の美しい響きの広い音域を持った歌手でした。従って最後の最高音は鋭く細めの声でクリアーしています。
この二人の聴き比べの種を明かせば、カップチッリはアクートで高音域を歌い、ディスカウはアペルトでここをクリアーしたのです。



Dietrich Fischer-Dieskau; "Si può? Signore!"; Pagliacci; Ruggero Leoncavallo


二人の違いはどうして生まれたのでしょう。
カップチッリはヴェルディ「椿姫」のプロヴァンスの海に見られるようなパッサッジョ付近の高音域の連続をレガートに処理するためには、どうしてもアクートの必要に迫られたでしょうし、ヴェルディ作品に見られるドラマチックな劇に相応しい強い声の響きと広がりにはアクートでの表現が必要だと考えたに違いありません。
一方ディスカウはもともとリートゼンガーですし、ヘルデンテノールと呼ばれた美しい響きの広い音域を持ったバリトンとして、アクート唱法の技術を必要とはしなかったでしょう。現にシューマンの歌曲「詩人の恋」第7曲Ich grolle nichtではA5をアペルトで楽にクリアーしています。
要するにイタリアとドイツに於ける二人の立場の違いが、それぞれの歌唱技術の違いを際立たせたのであって、イタリアオペラの作品を例題に取って、その技法の優劣を評価するには至らないのではないでしょうか。
ピエロ・カップチッリはアクート唱法。ディートリッヒ・フィッシャー=ディスカウはアペルト唱法。それぞれの立場でそれぞれの国の文化に貢献した立役者です。
日本に生まれた私達は現在に至るまでアペルト唱法で育った来ました。しかし海外の声楽教育を見ると女性はベルカント、男性はアクートを学ぶのがスタンダードとなっているようです。男性と女性の声帯の構造、属性を考えるとこの様な声楽教育になるのが論理的にも整合性があると思われますが、残念なことには日本にアクートで歌える男性オペラ歌手をほとんど見かけることはできませんし、ましてやアクートを教える声楽教師など皆無に近い状態ではないでしょうか。
確かにアクート唱法を身につけるのは難しい。でも習得できればファルセットの音域まで強い響きで歌えるようになるのであれば、こんな夢のような歌唱法はまたとありますまい。
ディスカウのような音域の広い声帯の持ち主にアクートは不要でしょうが、我々凡人はアクート唱法を身につける事を望んでいるのです。それにしてもアクートを教える声楽教師はどこにいるのでしょう。


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