松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

横浜生まれのナポリタン


食の研究所・渋川祐子


 ナポリタンは戦後まもなく、横浜にある1927(昭和2)年開業の「ホテルニューグランド」で誕生したと言われている。ホテルニューグランドは、ドリアやプリン・ア・ラ・モード発祥の地としても知られる洋食のメッカだ。


 終戦直後の1945(昭和20)年、来日したダグラス・マッカーサー元帥は厚木飛行場に降り立った足で、ホテルニューグランドに向かった。以後、ホテルは7年近くにわたりGHQに接収される。


 進駐軍は、そこへ軍用食として大量のスパゲティとケチャップを持ち込んでいた。茹でたスパゲティにケチャップを和えて食べる――そんな彼らの粗食を見かねた当時の総料理長・入江茂忠が、ケチャップの代わりに生のトマトとたまねぎ、にんにく、トマトペースト、オリーブオイルを使ったトマトソースを考案。ハムとマッシュルームを炒めてスパゲティに加え、先のトマトソースを和えて、パセリのみじん切りとパルメザンチーズをふりかけた一品を完成させたという。


 4代目総料理長・高橋清一による『横浜流』(東京新聞出版局)には、「ナポリタン」の名前の由来が記されている。


 <中世の頃、イタリアのナポリでスパゲッティは、トマトから作られたソースをパスタにかけ、路上の屋台で売られた貧しい人々の料理でした。当ホテルではそれをヒントに「スパゲッティーナポリタン」と呼ぶことにしました>


 だが、この誕生秘話を読んでかすかな違和感を覚えた。ナポリタンの痕跡を追って、古い料理本を調べていたところ、戦前にすでに「ナポリ風」という言葉が使われていたからである。


 イタリアのナポリは、もともとパスタに使われる硬質小麦の産地だ。アメリカ大陸からもたらされたトマトをソースとして和えるパスタ料理は、この地で17~18世紀頃には存在していた。それがフランスに伝わり、ナポリ風スパゲティ、つまり “Spaghetti Napolitaine”(スパゲッティ・ナポリテーヌ)と呼ばれるようになった。
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