松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

相次ぐ天災に後手後手 疫病神首相に防災を任せられるのか

        


 真夜中の北海道を襲った6日の震度7の大地震。震源に近い厚真町では山肌がえぐり取られたように土砂崩れが起き、きょうも安否不明者の捜索が続いた。全295万戸が停電し、道内全域が完全復旧するには1週間以上かかる見通しだ。


 札幌市内でも家屋が倒壊し、道路の陥没や液状化現象が発生。停電で信号は消え、地下鉄を含めた交通がマヒした。北海道の玄関口である新千歳空港は終日閉鎖。北海道電力の泊原発1~3号機が一時、外部電源を喪失するなど大混乱である。


 4日には25年ぶりに「非常に強い」勢力のまま台風21号が徳島県に上陸。関西を中心に猛烈な暴風雨となり、大阪など4府県で11人が死亡、海上にある関西空港が孤立したばかりだ。


 どうにも今夏は、例年以上に自然災害に見舞われている。実際、6月には小学生がブロック塀の下敷きになった「大阪北部地震」があったし、7月の「西日本豪雨」では15府県という広範囲で被害が出て、227人が犠牲になった。台風の上陸はすでに4個を数え、40度を超える猛暑で熱中症による死者も相次いだ。


 都市防災の専門家・土屋信行氏が日刊ゲンダイのインタビューで「日本はすでに亜熱帯化しており、『過去に起きていないことが起きている』と考えるべきです」と警鐘を鳴らしていたが、異常気象により、これまでの防災の概念が通用しなくなっているのは間違いない。


■現地にもう一人の総理派遣を


 それなのに、政府は毎度変わらぬ対応で、安倍首相が官邸から格好つけて大声をあげるだけ。総裁選対策の党員向けアピールもあるのだろう。6日は早朝、記者のぶら下がり取材に応じ、「人命第一で災害対応にあたっていく」と発言。午後の関係閣僚会議では「明朝までに100万世帯への電力供給再開をめざす」と指示を出した。閉鎖中の関西空港についても、「国内線をあす中に再開する」と宣言していたが、不眠不休で働く現場のことを理解した上で言っているのだろうか。とにかく、勇ましい発言を繰り出すことがリーダーシップだという勘違いなのである。


 災害に関する著書もあるジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。


「官邸では現地の状況は分からない。全権委任したもう一人の総理を現地に派遣して、ニーズを的確に把握することが重要です。それは阪神大震災で証明されています。当時の村山内閣は初動こそ遅れたものの、小里貞利氏を震災対策担当相に任命して現地に送り込み、現場で指揮を執らせた。一昨年の熊本地震で安倍首相は内閣府の副大臣を現地に派遣しましたが、単なる連絡要員だったので、官邸の指示を伝えるだけで、逆に現地の首長を怒らせてしまった。それではダメなのです」


■旧態依然のルールで「想定外」連発


 災害のたびに後手後手が露呈する。特に問題なのは脆弱なインフラだ。関西空港は1961年の第2室戸台風を想定して造られたが、今回、高波はそれを上回った。連絡橋が破壊され長期に使用できなくなったことも含め、運営会社は「想定外」を連発した。


 西日本豪雨でも22の河川で堤防が決壊。水位上昇による氾濫は163河川に上っている。平成になって最大の被害に、政府はここでも「想定外」を繰り返した。豪雨災害の現場を取材したジャーナリストの横田一氏はこう言う。


「ダムから急激に水が大量放流されたことで河川が氾濫し、被害が拡大しました。記録的な豪雨が予想されるという気象庁の異例の会見があったのですから、降雨がピークになる前に事前放流していれば、ここまでの被害にはならなかった。政府は甘い見通しのうえ、従来型のルールで旧態依然としたままなので、臨機応変な対応ができないのです。安倍政権の危機管理能力の乏しさがあらわになりました」


 自民党の石破元幹事長が総裁選出馬にあたって「防災省」設置の必要性を訴えているが、それくらいしなければ、今の異常気象や天災には対応できないだろう。


 組織もこのままでいいのか。国交省の外局の気象庁は、予測して警報を発表することはできても、住民避難を指示する権限はない。内閣府に入れるなどして、もっと総合的に首相が責任を持つ体制に変えるべきだ。


 気象庁の対策予算は昨年度の11億円が今年度は9億円に減らされ、治水事業費もこの20年で半減したが、早急に見直すべきだ。防災のために政府がやるべきことは山ほどあるのである。


■自然災害も国民の生命と財産を奪う「有事」


 それでも、安倍政権は「世界の真ん中で輝く国造り」を目指し、東京五輪と軍拡を優先して血道を上げているのだから、どうしようもない。


 五輪のために建設費が高騰し、被災地の復旧が遅れる状況は継続。建設会社がカネ回りのいい五輪関連や首都圏再開発の仕事を受けるからだ。


 2017年版の防災白書によれば、17年度の政府の防災関係予算(当初)は2兆8264億円。一方で軍事費は、その倍の金額のうえ、来年度予算の概算要求では5兆2986億円と7年連続で過去最高を更新した。


 北朝鮮の脅威をあおり、中国の軍拡に対抗し、トランプ米国に要求されるがまま巨額兵器を爆買いしているのが安倍政権だ。防災は後回し、なのである。こうした姿勢に、前出の鈴木哲夫氏も憤る。


「『有事』と言うと戦争を思い浮かべるでしょうが、天災も有事です。自然という敵が攻めてきて、国民の生命や財産が奪われるのですから。敵が他国ならば防衛体制を整えて備えるのに、どうして自然という敵には備えないのか。『自然災害は何が起こるか分からない』『100年に1度という災害に莫大な予算と時間と労力をかけるのは非効率だ』という考え方だからであり、『想定外』という言い訳が通用する。しかし、国民の生命と財産が奪われることには変わりありません。第2次安倍政権では昨年までに、広島豪雨災害や熊本地震なども起きている。そのたびに国民の生命と財産が奪われているのに、教訓は生かされず、同じことを繰り返している。天災だから仕方ない、じゃない。人災ですよ」


■総裁選のため慌てて防災を公約化のペテン


 そしてあり得ないのは、この地震国で原発再稼働が進む光景だ。6日の北海道地震でもそうだったが、地震発生のたびに、原発周辺の住民は戦慄し、「原発は大丈夫か」と大騒ぎになる。福島原発の事故はいまだ収束していないのに、7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」では、2030年までに電源構成に占める原発の比率を「20~22%」とするという数値目標が新たに設けられた。政府はこの先もずっと原発を維持するつもりなのだ。


 福島県民から故郷を奪い、あれだけ苦しめたのに、被災者は忘れ去られ、置き去り。それでも、原発を続けるこの国は狂っているとしか言いようがない。


 ここへきて巨大災害が続くのは、安倍が疫病神だからじゃないのか。モリカケ問題で国政を私物化し、国会審議から逃げて、災害がこれだけ多発しても閉会中審査さえ開かず、補正予算を組まない。総裁選告示前日のきのうになって、「豪雨や猛暑対策を今後3年間で集中的に実施する」という公約を盛り込むことにしたらしいが、国政選挙と同じで、その時だけ、口先だけで、本気じゃない。総裁3選は改憲でレガシーづくりが目的。国民生活のことなど安倍の眼中にはない。政治評論家の森田実氏がこう言う。


「関西空港が水浸しになり、その翌日には北海道で大地震。これを受けていろんな人と話していると、みな口を揃えて『安倍政権の体たらくに、天が怒っている。天から喝を食らっている』と言います。『こんな時に憲法改正と言っている場合じゃない』とも。改憲なんて返上して、今こそ、防災第一に社会を立て直していくと、方向転換すべきなのですが……」


 安倍に防災など任せられない。身びいきのペテン政権がさらに3年も続いたら、日本は沈没する。国民はそれでいいのか。
(日刊ゲンダイ)
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