松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

年内が最後の売り時 アベノミクス壮絶な手仕舞いが始まる

        


 兜町が暗く沈んでいる。株価が下げ止まらないからだ。16日も2万1680円34銭と、123円28銭下落して引けた。


 10月2日に2万4448円の年初来高値をつけた時、「バブル崩壊後の最高値を更新した」「年末は2万5000円だ」と浮かれていたのが嘘のようだ。いまや2万5000円どころか、年末2万円割れの可能性さえある。


 ただでさえ弱気になっている株式市場に、衝撃を与えたのが、16日の日経新聞だ。
<年末高、格好の売り場か><移動平均線に弱気サイン>との見出しを掲げ、「日経平均のチャートを見ると長期的な上昇相場の終わりを示唆するサインがちらつく」と報じたのだ。日本経済の応援団である日経新聞が、「上昇相場の終わりを示唆するサイン」と伝えるのは、よほどのことだ。


 日経新聞の記事が注目しているのは、平均株価のチャートだ。長期の値動きを示す「52週移動平均」と、中期の値動きを示す「26週移動平均」に注目。2つの「移動平均」を並べ、「デッドクロス」が現実味を帯びてきたと解説している。一般的に「デッドクロス」は売りのサイン、「ゴールデンクロス」は買いのサインとされている。「26週平均」が「52週平均」を上から下に抜けるのが「デッドクロス」、逆に下から上に抜けるのが「ゴールデンクロス」だ。トランプ氏が米大統領選に勝利した直後の2016年12月に「ゴールデンクロス」が発生し、そこから「トランプラリー」が始まり、日本株も急騰した。


 ところが、正反対の「デッドクロス」の発生が現実味を帯びているというのだ。これは、日本経済にとっても深刻な事態なのではないか。


 すでに東京市場は、10月の月間下落率が9.1%に達するなど、下落局面に入っている。機を見るに敏な外国人投資家も、今年に入って日本株を1兆7000億円も売り越している。


 やはり、一刻も早く株式市場から逃げるのが正解なのか。日経新聞が指摘するように「年末が格好の売り場」なのだろうか。


 ヤバイのは、日本株は「割高」になっていることだ。株価が“割高”なのか“割安”なのかを示す「シラーPER」(株価収益率)は、30.68と極端に高くなっている。「シラーPER」は、25を超えると「割高」とされる。2000年のITバブルや08年のリーマン・ショックの時も、現在と同じく高い水準にあった。


これは、もうすぐ株高バブルがはじけるシグナルなのではないか。


 金融ジャーナリストの小林佳樹氏がこう言う。


「株式市場の地合いが悪くなっているのは確かでしょう。少しでも悪材料が出ると急落してしまう。先日は、米アップルの業績懸念から東京市場は全面安となり459円も下落してしまった。投資家が株価の先行きに自信を持てなくなっている証拠です。一時のイケイケムードは消えています」


 これまでは「外需株」が売られていたが、最近は「内需株」にまで売りが広がっている。夏以降、米中貿易戦争への懸念から自動車株などの「外需株」が売られ、資金が「内需株」に流入していたが、高値をつけた「内需株」に利益確定売りが相次いでいるのだ。


 日経新聞は<市場では「日経平均が一段安となり2万1000円を割る事態に備え、手じまい売りに動いている」>と、エコノミストのコメントも載せていた。


 とうとう、アベノミクスの手じまいが始まった、ということなのではないか。


*株を買う好材料が見当たらない


 いったい、株価はどうなるのか。年明け以降、暴落する恐れがある。


 この先、日本経済には好材料が見当たらないからだ。景気が悪化すれば、企業業績も悪化し、株価も急落していく。


 それでなくても、企業業績はピークを過ぎている。上場企業の2019年3月期の業績見通しは大幅にダウンしている。純利益の増益率は、前期の34%増からわずか1%増へと大きく縮小。電機や非鉄では業績の下方修正が目立っている。


 そのうえ世界経済も、「米中貿易戦争」「原油市場の混乱」「アメリカの金利上昇」とリスク要因が多い。すでに中国景気は減速の兆しがあり、好景気が続いているアメリカ経済も減速は避けられそうにない。


 IMFは10月、世界経済の見通しを2年ぶりに引き下げている。来年は世界的に景気が悪化する可能性が高いのだ。


 経済評論家の斎藤満氏が言う。


「株価は将来の期待を反映するものです。先行き、景気が良くなると期待が膨らめば株価が上がり、悲観的になれば株価は下がる。ところが、この先、日本経済には株を買う好材料が見当たらない。米中貿易戦争も、アメリカの対日要求も、来年が本番です。来年から本格的にスタートする“日米交渉”では、アメリカは日本に“為替条項”を突きつけてくる可能性がある。日本企業は“円安”の恩恵によって業績を伸ばしてきた。もし、為替条項を突きつけられ、“円高”が進んだら、一気に業績が悪化してもおかしくない。当然、株価も下落してしまうでしょう」


 株価下落のサインが、いくつも点灯し始めている。


 そもそも、日本の株高は、日本経済の実力を反映したものじゃない。日本銀行やGPIFが必死になって株価を買い支えてきた“官製相場”にほかならない。


 足元の株価2万1680円だってゲタを履かせたものだ。


 いまでは日銀のETF残高は22兆円に達している。その結果、東証1部上場企業約2100社のうち、少なくても710社は、公的マネーが「筆頭株主」となっている。 しかし、公的資金が株高を支えるのも、限界に近づいている。最近は、日銀内部からも「異次元緩和」の見直し論が噴出し始めている。


 それだけに来年、株価が下落し始めたら、日本株は奈落の底に向かう恐れがある。


「安倍首相は“経済の好循環が生まれた”などと、アベノミクスを自画自賛していますが、中身が伴わないハリボテなのが実態です。GDPも7~9月期はマイナス成長でした。国民所得もマイナスです。景気はまったく良くなっていない。たしかにアベノミクス後、株価は2倍になっていますが、たまたま海外の好景気と円安によって輸出が伸びたことと、官製相場によって人為的につり上げただけです。企業が新たな商品やサービスを生み出したわけではない。むしろ、日本企業は国際競争力を低下させている。もし来年、世界経済の悪化など逆風が吹いたら、日本企業は淘汰される恐れがあります」(筑波大名誉教授・小林弥六氏=経済学)


 この年末、外国人投資家は、まだ含み益のある日本株を一斉に売ってくる可能性がある。株高バブルが崩壊した時、いつも最後にババをつかまされ、泣きを見てきたのが、日本の個人投資家だ。また、悲劇が繰り返されるのではないか。


(日刊ゲンダイ)
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