松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

ローラ辺野古発言の波紋 安倍政治に口をつぐむ異様な国


<土砂投入が始まって、SNSでは停止を求める署名が広がりました。タレントのローラさんが署名を呼びかけていましたが、偉いですよね。日本では「袋だたき」に遭うのが怖くて口をつぐむ人も多い>


 9日の朝日新聞社会面に載った音楽家・坂本龍一氏の言葉だ。辺野古への土砂投入など、沖縄をテーマにしたインタビューで、国家の暴力に異を唱えることについて、坂本氏はこう続ける。


<米国では、国民の半分近くはトランプ大統領支持ですから、バッシングは日本の比ではない。それでも芸能人やスポーツ選手が政治的な発言をすることが当たり前です。立場を表明しない人はかえって愚かだと相手にされません>


<世界ではいま、「声がデカい人の意向が通る」という政治が横行しています。真実を追求しようとするメディアには「ウソつき」と繰り返すなど、一方的な対応が目立ちます。反対する者とまともに議論しようとしない日本政府の姿勢は、トランプ大統領のマネをしているんでしょう。たがが外れていますよね>


 そして、「そのことに多くの国民が気づいていないことが一番大きな問題」だと指摘する。


 批判の声に耳を傾けず、力で押し切る政府の姿勢に疑問を感じないどころか、メディアや一般市民までもが権力者を守る側に回って、批判の声を弾圧しにかかる。摩訶不思議な現象が、この国の日常になっているからだ。


■政権批判の発言だけが叩かれる


 ローラが署名を呼びかけたのは、昨年12月14日から土砂投入が始まった名護市辺野古沿岸の新基地建設について、2月24日の県民投票まで工事を停止するようホワイトハウスに求める請願サイト。8日時点で20万筆を超えたが、ローラが自身のインスタグラムで「みんなで沖縄をまもろう」「美しい沖縄の埋め立てを止めることができるかもしれないの」などと訴えたところ、バッシングの嵐に見舞われた。「芸能人は政治的発言を控えろ」というのである。有名人が政治的な発言をするのが当たり前の米国とは対極的だ


「辺野古工事反対の請願署名には、世界的ロックバンド『クイーン』のブライアン・メイ氏もツイッター協力を呼びかけましたが、ローラさんに対して脅迫めいたことを言っていた人たちも、彼には『政治的発言をするな』と噛みつかない。イビツなダブルスタンダードの上に成り立ったバッシングであり、日本の有名人が現政権に批判的な言動をすると、“政治的”と問題視される。安倍政権をヨイショするタレントの発言だって政治的なのに、そちらは決して攻撃されないのです。ローラさんの『きれいな海を守りたい』という気持ちは政権批判とは別物ですが、現政権が進めることに異を唱えた途端にやり玉に挙げられる。本来なら、そういう言論弾圧には毅然と対峙し、自由な発言を守るべきメディアが腰砕けだから、どうしようもありません」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学) 


 政権にとって不都合な“政治的発言”をすると、「芸能活動に影響が出ないといいが……」と心配するフリをするが、それ自体が同調圧力となって発言者を追い込んでいく。中立や公平を持ち出して、テレビ番組にも呼ばなくなる。それが大メディアのやり方だ。


 中立・公平というのなら、政権に好意的な意見も批判的な意見もあっていい。大体、日本の美しい海を埋め立て、日本国民の税金を使って米国様のために、必要かどうかも分からない基地を建設するなんて、愛国者ほど黙っていられないはずだ。それなのに「辺野古反対」すら言えないなんて、一体この国はどうなっているのか。


■政府のフェイク垂れ流しに協力するメディアの罪


「およそ民主主義国家とは思えない異様な言論状況の元凶が、政権の意向を忖度する大メディアです。安倍首相がデタラメ答弁を繰り返す国会審議はマトモに報じないのに、辺野古湾への土砂投入は生中継して基地新設を既成事実化したい政府をアシストする。政府がおかしなことをすれば糾弾するのが当たり前なのに、大メディアが共犯者になって政権を守っている。とりわけひどいのがNHKで、国民から税金のように受信料を徴収しておいて、政府の言い分をそのまま垂れ流す広報機関になり下がっています。多くの国民はNHKが嘘を流すはずがないと信じているから、コロッとだまされてしまう。そこが問題です。この国のメディアが真実を伝える役割を放棄したために、嘘にまみれた安倍政権が6年も続き、やりたい放題を続けているのです」(政治評論家・本澤二郎氏)


 6日のNHK「日曜討論」は、まさに御用メディアの本領発揮だった。辺野古の埋め立てによって海域の希少サンゴや絶滅危惧種が死滅する恐れについて、「サンゴについては(他の場所に)移している。絶滅危惧種は(砂を)さらって別の浜に移していく」という安倍の発言をそのまま流したのだ。しかし、これは事実ではない。


 地元紙「琉球新報」によれば、埋め立て海域全体で必要な約7万4000群体の移植は行われておらず、移植されたのは別の区域の9群体だけ。砂をさらって生物を移す作業もしていないという。


 ここまで堂々と国民に嘘を言う首相もどうかと思うが、NHKもそろそろ公共放送の看板を下ろして“政権放送”と認めてはどうか。くだんの「日曜討論」の安倍放言は事前収録だった。ファクトチェックする時間はあったはずなのだ。嘘だと気付かなかったのか、分かっていてフェイクニュースに加担したのか。


■当たり前の批判が「勇敢」とされる異常


 安倍のサンゴ発言については、8日の官房長官会見でも「事実誤認なら改めて見解を出すつもりはあるか」と質問が出たが、菅官房長官の回答は「報道によれば、の質問に政府として答えることはない。報道に問い合わせをして欲しい」という信じられないものだった。


「いまだ収束のメドも見えない福島第1原発事故の汚染水について、安倍首相が『アンダーコントロール』と言い切ったことを思い出します。その場しのぎの嘘をメディアが批判しないから、言ったもん勝ちのフェイクがまかり通ってしまう。批判すれば政権支持者から袋叩きにされるから、誰もが口をつぐんでしまう。恐ろしいのは、国民が安倍政権の嘘や暴力政治に慣れ、マヒしていることです。何を言っても暖簾に腕押しで嘘をまき散らし、首相が外遊三昧の政権が、どんな横暴を働いても唯々諾々と従い、批判する人を叩く風潮が横行している。こうやって、民主主義は切り崩されていくのです。メディアも言論活動を放棄してしまったこの国は、もはや“民主主義のフリ”をしているだけ。厚顔無恥に権力を振りかざし、正論が通用しないトップに対し、心ある国民はどう対処すべきか、真剣に考えなければなりません」(五野井郁夫氏=前出) 


 忖度メディアに守られたペテン首相は、きょうもヌクヌク外遊三昧だ。9日に政府専用機で英蘭歴訪に向かい、オランダに到着。出発前に安倍は「6月に大阪で開かれるG20の成功に向けた協力を確認したい」とか言っていたが、オランダはG20参加国ではない。物見遊山で血税を浪費されてはたまらないのだが、批判の声は上がらない。誰も文句を言おうとしない。


 これでは、嘘とゴマカシ答弁でアリバイ的に日程を消化し、強行採決が当たり前という国会軽視が常態化するのは当然という気がしてくる。民意をナメているから、国会を愚弄し、辺野古への土砂投入も問題なし、サンゴ移植の嘘も問題なし。そんな暴力政治への批判をつぶやくのは一国民として当たり前の感覚なのに、それが“勇敢”なんて言われてしまうことが、この国の異様さを物語っている。
(日刊ゲンダイ)
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