松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

鼻白む“おもてなし”裏金で汚れた東京五輪の偽善と今後<前>


*以前からくすぶっていた疑惑にフタをした日本政府も共犯同然


 衝撃的なニュースが飛び込んできた。五輪の黒い疑惑に急展開だ。


 2020年東京五輪・パラリンピック招致をめぐる裏金問題で、フランス捜査当局が日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長を贈賄の容疑者とする予審手続きを開始。刑事訴追に向けた動きの本格化だ。11日、日本でも一斉に報じられ、大騒ぎになっている。


 竹田氏は「昨年12月、パリで仏当局の担当判事による聴取を受けたが、不正なことは何も行っていないことを説明した」とするコメントを発表。今後も調査には協力するという。


 裏金疑惑は以前からくすぶっていた。16年に世界反ドーピング機関(WADA)の第三者委員会が、国際陸連前会長で国際オリンピック委員会(IOC)委員だったラミン・ディアク氏の汚職調査をする中で、日本の裏金疑惑が浮上。


 仏当局がディアク氏の息子に関係する口座を洗ったところ、竹田氏が理事長を務めていた日本の招致委員会から180万ユーロ(約2億3000万円)の送金が見つかったのだ。


 当時、この問題は国会でも取り上げられ、JOCは調査チームを設置したが、16年9月に「違法性はない」と結論づけるお手盛り報告書を公表しただけで、日本では幕引きになってしまった。


「調査チームの報告書は、何の根拠もなく『不正はなかった』とお墨付きを与えるだけのシロモノでした。


 17年2月には、仏当局からの捜査共助要請を受けた東京地検特捜部が竹田氏らから任意で事情聴取しましたが、それも形ばかり。あの時、しっかり捜査して膿を出し切るべきだったのに、問題をウヤムヤにしてフタをしてしまった。その結果、五輪開催が1年半後に迫った今になって、仏当局による訴追の動きが本格化するという深刻な事態を招いた責任は重大です」(元特捜検事で弁護士の郷原信郎氏)


 仏当局は3年近くも調査を継続していたわけだ。これはJOCだけの問題ではない。国策五輪のため、不正に目をつぶってきた日本政府も共犯だ。


*国会答弁でスットボケていた竹田会長の厚顔


 ディアク氏の息子が関係するペーパーカンパニーに日本の招致委から約2億3000万円の送金があったのは、13年7月と10月。IOC総会で東京開催が決まったのが同年9月だ。


 このタイミングから、仏当局は開催地決定に権限を持つIOC委員を買収するための支払いだったという見方を16年5月に示し、招致委理事長として全容を知る立場にあった竹田氏は、すぐさま参考人として国会に呼ばれることになった。


「野党議員から不正疑惑について質問されましたが、シラを切り通していましたね」(元民主党議員)


 何を聞かれても、「第三者の調査チームで検証する」とノラリクラリ。「ペーパーカンパニーではないと確信していた」「息子との関係も知らなかった」とスットボケた。送金は「正当なコンサルタント契約の対価」と言い張ったのだ。


「リオ五輪の招致をめぐっても、ブラジルオリンピック委員会(BOC)の会長が17年に逮捕されましたが、その容疑は『開催都市を決める投票権を持つディアク氏の息子に関係する口座に約200万ドルを振り込んだ』というもの。金額も送金先も、竹田氏の疑惑とまったく同じ構図です。それでも、自分だけは逃げ切れると思っていたのでしょうか。仏当局が竹田氏の刑事訴追に向けた動きを本格化させたのは、当然の流れです」(郷原信郎氏=前出)


 五輪招致は安倍政権の国家プロジェクト。成功すれば、何をやっても許されるというおごりがあったのではないか。


*これはゴーン逮捕の意趣返しかという当然の疑問


 それにしても、なぜこのタイミングで捜査着手なのか。ささやかれるのは日産自動車の前会長カルロス・ゴーン逮捕の意趣返し――の可能性だ。


 仏検察が今回の東京五輪招致をめぐる裏金事件について、竹田氏に事情聴取を始めたのが先月10日。東京地検特捜部がゴーンを金融商品取引法(金商法)違反の疑いで再逮捕した日と重なる。そして、予審手続き着手が大々的に報じられたきのうは、特捜部がゴーンを会社法違反(特別背任)罪で追起訴した日である。


 偶然と言ってしまえばそれまでだが、そこに仏政府の日本政府に対する「ゴーンを起訴して犯罪者扱いするのであれば、竹田についても容赦しない」という特別なメッセージが込められているのではないか、と疑わずにはいられない。元検事で弁護士の落合洋司氏はこう言う。


「(裏金)事件は急に浮上してきた話ではなく、さすがにゴーン起訴の意趣返しということはないでしょう。しかし、仏検察が予審手続きが必要と判断したということは、(容疑に対する)疑いが強いということを意味します。予審判事は(捜査)権限も強い。今後、捜査がどう展開していくか注目です」


 意趣返しという意味では別の思惑もうかがえる。ゴーン事件をきっかけに、今や、容疑を認めるまで容疑者を「長期勾留」する日本の「人質司法」は世界中で問題視されるようになった。


 一方、裏金事件が表面化した16年5月以降、仏検察が竹田氏の身柄を拘束したことはない。それでも仏検察は地道な証拠集めを続け、その結果、嫌疑アリと判断したわけで、仏政府にすれば、「これが近代国家の罪刑法定主義であり、日本の刑事司法は中世の魔女狩りだ」と皮肉っている様子がうかがえるのだ。
(日刊ゲンダイ)
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