松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

鼻白む“おもてなし”裏金で汚れた東京五輪の偽善と今後<後>

       


*列挙すればキリがない 呪われた東京五輪をやる意味


 ケチのつき始めは13年9月7日。ブエノスアイレスで行われたIOC総会の五輪招致最終プレゼンで、安倍首相が放った大嘘だった。世界が懸念した福島原発事故の汚染水について、「アンダーコントロール」と言ってのけてから5年4カ月。今なお汚染水はダダ漏れ、大量にたまったタンクの処分方法は足踏みしたまま。福島原発の「アウト・オブ・コントロール」(制御不能)は続いている。


「立候補ファイル」にある「2020年東京大会の理想的な日程」なる項目も、真っ赤な嘘。〈この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候〉と記したが、開催期間の7月24日から8月9日に東京が昨年、命の危険すらある酷暑に襲われたのは記憶に新しい。


 新国立競技場の「ザハ案」の白紙撤回、旧エンブレムの盗作問題、聖火台の仕様や設置場所は今も決まっていない。列挙すればキリがないほど呪われた五輪は竹田氏の裏金事件がトドメだ。


「招致委のトップの汚職が立証されれば、明確な五輪憲章違反。憲章を厳格に適用すれば、東京五輪は返上となり、その損害の責任をIOCが負う義務はなく、この国が一切をかぶるのです。いくら大金を投じても、これだけリスクの高い五輪は過去にない。金で買った五輪を強行すれば、この国に蔓延する金権主義と、官民挙げてのモラルハザードを許すことになる。競技場の残骸と精神の荒廃という巨大な負の遺産を抱えるだけです」(思想家で神戸女学院大名誉教授の内田樹氏)


 汚れた五輪の開催に意義はない。裏金事件が立証されたら手遅れだ。損害が小さなうちに返上すべきだ。


*金で買った東京五輪の“主犯”は国威高揚目論む安倍首相


 世界に嘘をつき、金にモノを言わせて強引に招致した黒い五輪を国威高揚と政権維持の大舞台に仕立て上げようとしている主犯が、安倍だ。


 前回のリオ五輪の閉会式では、スーパーマリオに扮して大ハシャギ。「1964年の東京五輪の夢よ、もう一度」とばかりに、20年を「新しい時代の幕開け」と勝手に位置づけ、高度経済成長が再現するかのような夢想を国民に植えつけ続けている。


 20年に改憲を目指すのも、国中が「ニッポン」「ニッポン」と浮かれて、思考停止に陥っているスキに、祖父の代からの悲願を達成しようという薄汚い魂胆が垣間見える。


 会計検査院によると、現時点の事業項目を積み上げただけで、五輪関連経費は2兆8100億円。国威高揚を目論む安倍のために金で買った五輪に、虎の子の血税を3兆円も費すのだ。前出の内田樹氏はこう言った。


「『平和の祭典』という理想は消え去り、大枚はたいて国威高揚のビジネスチャンスを買ったのが、安倍政権下の東京五輪です。ところが、裏金事件によって世界の満天下に大恥をさらし、日本の国威を著しく下げるとは愚かの極み。招致委のトップの関与が疑われている以上、裏金事件は組織ぐるみ、国家ぐるみの犯罪の可能性が高い。安倍首相にも責任の一端はあるのに、日本経済『起死回生の一発逆転』の夢にとらわれ、東京五輪という無謀な大博打に突き進むのでしょう。少子高齢社会に突入した日本の経済はいわば後退戦局面で、『起死回生の突撃』のような無謀な作戦を言い立てる指導者に従うのは自殺行為。それでも、五輪批判の言質がメディアから出てこない今の日本は危機的状況です」


 国民が力を合わせ、五輪が成功すればバラ色の未来が待っているかのような安倍の言動にダマされてはいけない。国民もいい加減、五輪の夢から覚めた方がいい。


事件の今後の展開はどうなるのか


 東京五輪は仏当局に“生殺与奪権”を握られたも同然。事件の今後の展開はどうなるのか。


 仏の予審手続きは、裁判所の予審判事が証拠収集や尋問などにあたる。今回の事件の担当は数多くの大型汚職事件を手掛けた敏腕判事。国内で最も有名な大物とされ、仏当局が捜査に本腰を入れている証拠だ。


 捜査期間は定められておらず、証拠が出そろった時点で竹田氏の起訴・不起訴を判断する。


 予審判事の権限は絶大で、場合によっては竹田氏に仏裁判所への出頭を命じたり、身柄を拘束することも可能だ。


「具体的には、日本の外務省を通じて司法当局に捜査を嘱託する流れになるでしょう。ただし、竹田氏はJOC会長であり、IOC委員とはいえ、日本では『みなし公務員』にもあたらない。つまり、日本では贈賄に該当しないのです。犯罪人の引き渡しには、双方の国で共通に犯罪と認められるものに限る『双方可罰の原則』がある。フランスの予審判事から竹田氏の引き渡しを求められても、日本政府は拒否するはずです」(落合洋司氏=前出)


 最大の焦点は、仏の予審判事がいつ、竹田氏の起訴・不起訴を判断するかだ。捜査期間がどのくらいの長さになるのか分からない以上、来年7月の東京五輪の開会式直前や直後に起訴される可能性もあり得る。


 それでも汚れた東京五輪の開催を強行すれば、この国は国際社会から非難の集中砲火を浴びるだけだ。やはり、嘘と金で汚れて真っ黒な東京五輪は、潔く返上するしかない。
(日刊ゲンダイ)
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