松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

野党が一つになれば勝てる 期待される共産党の党名変更


 夏の参院選の前哨戦となった衆院2補選。与野党一騎打ちの沖縄3区では、玉城県知事の後継で野党統一候補の屋良朝博氏は、21日午後8時の開票と同時に当確マークがともり、自公候補を約1万7000票差で引き離す圧勝ぶりだった。
 大阪12区で共産党から無所属で出馬し、野党共闘を促したものの、立憲民主も国民民主も推薦を見送った宮本岳志氏の惨敗とは大違い。
 改めて野党が一塊になった「威力」と、ならなかった「無力」を思い知らされる選挙結果となった。
 立憲と国民民主が宮本を自主投票にとどめたのも、基本政策の異なる「実質的な共産候補」と捉えたから。相変わらずの「直接、組めば支持者が離れる」という屁理屈である。特に国民民主支援の旧同盟系の産別労組は共産への忌避感が根強い。いくら宮本が共産の看板を下ろし、「当選しても無所属を貫く」と本気度を示しても、アレルギーは拭えなかった。
「加えて立憲による国民民主議員の引き抜き、国民民主、自由両党の合併構想の行き詰まりと野党間はサヤ当て、仲たがいの話題ばかり。自ら共闘ムードに水を差す体たらくです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
 しかし沖縄補選は違った。立憲、国民民主両党に県選出の国会議員はおろか、県議もゼロという特殊事情があるとはいえ、共産も率先して共闘に協力した。沖縄国際大大学院教授の前泊博盛氏(日米安保論)が言う。
「政党色を出さない選挙戦術を取った屋良陣営に共産は配慮し、前面に出過ぎることはせず、組織固めのサポート役に回っていました。そのため、『オール沖縄』の枠組みは維持され、『辺野古ノー』で大同団結し、勝利に至ったのです」
 野党共闘の実現に向け、国政レベルでも共産は柔軟路線に転じている。
 2016年以降は天皇臨席の通常国会の開会式に出席。昨年の通常国会でも審議拒否はしないとの流儀を捨て、他の野党と足並みをそろえて18日間の審議拒否も敢行した。
 それでも立憲と国民民主は冷ややかで、共産とは一定の距離感を維持したがる。野党第1、第2党の子供じみた対応を見せつけられると、共産が気の毒にもなるが、共闘実現には3年後に結党100年を控える共産に大人の対応を期待するほかない。その切り札となるウルトラCこそ、共産の党名変更ではないか。
*斬新な展開も党名で拒否反応はもったいない
 共産党という名前には「暴力革命」のイメージがつきまとう。他の野党はもちろん、有権者にも時代錯誤の「共産主義社会実現」には拒否反応がついて回る。
 実は党内でも冷戦崩壊後から党名変更論がくすぶり続ける。17年12月に横浜市で開かれた「党を語る集い」では、壇上の志位和夫委員長に対し「党名を変えて欲しい」「旧ソ連や中国のようで近寄りがたい」といった率直な意見が相次いだ。
 とはいえ、涙ぐましい自己革新を続けているのも事実だ。ここ数年は支持者拡大に向け、ネットやSNSの活用に積極的だ。16年の参院選では「カクサン部」という特設サイトを設け、“ゆるキャラ”が分かりやすく政策を説明。今回の統一地方選でも、政権批判のWebアニメをツイッターやLINEで拡散させる戦術を仕掛けた。
 他党に先がけ、若者に人気のショート動画配信アプリ「TikTok」の公式アカウントも開設。これだけ斬新な展開をしながら、党名だけで有権者に負のイメージを与えるのは、もったいない。そもそも、今の党内に本気で共産主義革命を目指して活動している党員はどれだけいるのか。ほぼ皆無のはずだ。
 17年10月にネット番組で党名変更について問われた小池晃書記局長は、「もし、いい名前があって提案していただければ、全く考えないわけではない」と答えていた。この際、「労働党」でも「大衆党」でもナンでもいい。イデオロギー色を排した党名に変え、いつも野党勢力結集のネックになる「共産党」の存在そのものの希薄化を優先すべきではないのか。
 事実、冷戦崩壊後の欧州では、共産党が党名を改め、現実路線に転じて「国民政党」へと脱皮したケースも多々ある。代表例がイタリアの「左翼民主党」だ。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)が指摘する。 
「91年に旧共産党主流派から党名を変え、社会民主主義路線に衣替え。96年には10以上の政党が結集した中道左派連合『オリーブの木』を主導し、全選挙区での候補一本化のほか、比例選でも一部の小政党が比例名簿を統一する戦術を駆使。最大勢力でありながら、首相候補を出さず、他党に選挙区の一部を譲るなど妥協の連続で政権奪取に成功したのです。自由党の小沢代表も野党結集を巡り、しばしば『オリーブの木』に言及していますが、確かに既存政党を残すなら、ベストの選択肢と言えます。その場合、どの党もプライドやメンツをかなぐり捨て、共闘のネックは全て取り除き、合意した政策の一点突破で闘うしかない。共産党も党名変更などで、文字通り名を捨て実を取るくらいの覚悟が必要なのは言うまでもありません」
■1強にあぐらをかいた国政私物化を許すな
 逆に言えば、共産党が100年近く守り続けた党名を捨てなくてはいけないほど、日本の政治状況は危険領域に達しているということだ。アベノミクスは頓挫し、北方領土交渉はつまずき、拉致問題は1ミリも動かず、米国には盲目隷従。経済も外交も完全に行き詰まっているのに、安倍政権は1強体制にあぐらをかいて平然と居直り。国政の私物化はエスカレートするばかりだ。
 驚いたのは、安倍と省庁幹部の面談記録がゼロだったとの毎日新聞のスクープ記事だ。17年12月にモリカケ問題を受け公文書ガイドラインの改定後から約1年間。安倍と省庁幹部らの面談した際の議事録や説明資料などを官邸に情報公開請求すると、全て「不存在」と回答されたという。
 官邸側は保存期間を国立公文書館の審査を経ずいつでも廃棄できる1年未満に設定し、面談後に廃棄していると説明。1年未満なら面談当日でも廃棄可能になる。面談した省庁サイドから都合の悪い記録が出てきても、安倍が「記憶にない」「官邸には記録もない」などと言い逃れできる仕組みというわけだ。
「モリカケ問題に安倍・麻生道路と国政の私物化が疑われる政権だから、なおさら記録保存が重要なのに、廃棄とは論外です。官邸側も身の潔白を証明するためにも自ら記録を残した方がいい。恐らく今の政権は選挙に勝てば何でもみそぎが済むと思っている。この一点だけでも野党は強くなければなりません」(五野井郁夫氏=前出)
 腐敗、堕落の極みと化した安倍ファシズムの進行を目の前にして、もう共産党も他の野党もとやかく言っている場合じゃない。前出の前泊博盛氏はこう言った。
「沖縄補選で明らかなように、野党が『アンチ安倍』でまとまって民意の共感を得られれば、勝ち目はある。安倍政権の民主主義冒涜や対米追従など争点はいくらでもある。脱原発や消費減税を掲げてもいい。自民党政権が永久に続けば、次の首相が誰になっても同じです。この国を変えるには野党勢力の総結集しかない。沖縄でできたことが本土でやれないはずはないのです」
 前出の五十嵐仁氏もこう言うのだ。
「野党党首がクビをそろえて並ぶだけでは、共闘とは言いません。持てる組織と力をフル回転させ、相乗効果を発揮しなければ安倍1強は打破できないのです。共産党も他の野党もエゴを抑え、共闘の大義名分を掲げるしかない。自民党を焦らせ、ダブル選に二の足を踏ませるくらいの本気度を示すべきです」
 野党は四の五の言わずに一緒になれば勝てるのだ。それだけに共産党の党名変更は絶大な効果を生むはずである。
(日刊ゲンダイ)
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