松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

統計学的手法を用いない世論調査はゴミと同じだ

  


 先日、ネット上のニュースを見て驚いた。〈「東京でマラソンを見たい」札幌案に6割が反対〉(「テレ朝ニュース」10月19日)という記事。内容はこうだ。
〈来年の東京オリンピックの「マラソン」と「競歩」を札幌市で開催する案が浮上したことを受け、東京都には18日までの2日間で223件の意見が寄せられました。このうち「東京でマラソンを見たい」など約6割の129件が反対意見でした。一方、「選手の健康と安全を考慮すべき」など賛成意見も26件あったということです〉
 羊頭狗肉である。これはわざわざ都庁に電話したヤツのうち6割が反対だったというだけの話。「6割」と見出しに数字を打つのは意味がないだけではなく社会を間違った方向に導きかねない。電話が1本しかなくそれが反対意見だったら「10割が反対」と報じるのか。このような数字の悪用は少なくない。
 なお、朝日新聞社の全国世論調査(電話・19、20日実施)によれば札幌案「反対」は36%、東京都に限定しても40%だ。
 当たり前の話だが、統計学的な手法を用いていないものは世論調査ではない。標本は無作為抽出(ランダム・サンプリング)でなければゴミと同じ。


■雑な政権批判では足をすくわれるだけ
 同時期の産経新聞社とFNNの合同世論調査(19、20日実施)では安倍内閣の支持率は51・1%だったが、これに対しネット調査の数字を持ち出し、大手メディアはおかしいと言い出す人々がいた。その調査では「安倍政権を支持しない」は94・8%、「支持する」は3・3%、「どちらでもない」は2・0%になっていた。彼らは「真実はこちらの数字だ」「選挙結果と一致しないのは不正選挙のせい」「最初から結果ありきの大手メディアの不正統計にはガッカリ」と騒ぎ立てたが、ガッカリはこちらのセリフだ。
 SNSなどでアンケートを取れば同じような傾向の連中が答えるので偏った数字が出る。それ以前にネットでは無作為抽出ができないので数字の信用性はゼロに等しい。必然的に現実との整合性は取れなくなるが、最終的に彼らは陰謀論に逃げ込む。こうした雑な批判では足をすくわれるだけだ。
 安倍政権とその周辺メディアが垂れ流すプロパガンダに対抗できるのはデマの拡散ではなく、唯一、地道な論理の積み重ねである。
(日刊ゲンダイ・適菜収)
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