松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

また愚劣なニュースがテレビを占拠 安倍内閣は支持率微増

  


 世間がお盆休みの間は台風情報と猛暑、Uターンラッシュのニュースで埋め尽くされていたテレビだが、休み明けは「あおり運転男」だ。
 茨城県守谷市の常磐自動車道で男性会社員があおり運転を受け、殴られた事件で指名手配された宮崎文夫容疑者(43)が逮捕され、19日午前、移送先の同県警取手署に到着した。あおり運転で同乗していた交際相手の喜本奈津子容疑者(51)も犯人隠避容疑で逮捕。暴行時に携帯電話で撮影したことを認めているという。
 あおり運転は死傷にもつながる危険行為だ。そのうえ暴行なんて言語道断。彼らの行為は極めて悪質である。とはいえ、こんなチンピラは世の中にゴマンといる。あおり運転男の逮捕は、果たしてテレビが朝から晩まで大騒ぎするようなニュースなのか。仮にも報道機関を名乗るなら、国会や霞が関のチンピラどもや官邸の暴走男にもっと焦点を当てたらどうか。
 そうでなくても、出口なしの日韓報復合戦や世界経済の悪化、そんな中で10月の消費増税が景気に与えるダメージ、1年後に控えた東京五輪を無事に開催できるかという懸念、うやむやになった年金2000万円問題など、日本を取り巻く諸問題は国内外に山積している。
 思えば、7月の参院選直前からメディアは選挙報道そっちのけで吉本興業の闇営業問題やお家騒動に明け暮れ、それが一段落したと思ったら、小泉進次郎衆院議員のデキ婚をロイヤルウエディングのようにもてはやす祝福ムード一色に染まった。そして今度は、あおり運転男である。


■支持率アップに手を貸す大メディア
 そうこうしている間に、内閣支持率がジワリ上昇している。共同通信が17日から2日間にわたり実施した全国電話世論調査で、安倍内閣の支持率は先月調査の48.6%から1.7ポイント上昇して50.3%だった。回答者の半数以上がこの内閣を支持しているというのだ。NHKが今月2~4日に実施した世論調査でも、内閣支持率は4ポイント上昇した49%だった。
 当の安倍首相は、度重なる北のミサイル発射にもお構いなしで、ゴルフと美食の夏休みを満喫中。それで支持率が上がるのだから、笑いが止まらないだろう。
 元NHK政治部記者で評論家の川崎泰資氏が言う。
「支持率上昇に一役どころか、全面的にサポートしているのが昨今のメディア報道です。国民生活や日本の行く末に直結する大問題でも、政権に都合の悪いことは報じようとせず、芸人の騒動や一議員の結婚など、当たり障りのないことばかり報道して、政権延命に手を貸している。この傾向は間違いなく来年の東京五輪まで続く。主要メディアが五輪のスポンサーになっているからです。さらには選挙時に流れ込んでくる政府広報や与党の莫大な広告費もメディアを黙らせる一因になっています。その結果、新聞テレビは安倍政権の宣伝機関に成り下がってしまった。参院選で自民党が議席を減らしても、『勝った』と言い張る与党の言い分を垂れ流す始末です。北朝鮮がミサイルをブッ放しても、『わが国の安全保障に影響を与えるものではない』という安倍首相のコメントをそのまま報じている。メディアが政権に屈しているから、本当に重要な情報が国民に届かない。政権側も、何をやっても批判されないとタカをくくっているのです」


■投票率は50%割れで内閣支持率50%超の奇怪な国
 このところ北が乱発している新型ミサイルは短距離・中距離タイプで日本を射程に捉える。「わが国に影響がない」どころか、米国本土に届く可能性がある大陸間弾道ミサイル(ICBM)より、日本にとってはよほど脅威だ。まさか安倍が言う「わが国」とは米国のことではあるまいが、日本の上空を越えていくICBM発射のたびにJアラートを響かせ、国難と言って解散総選挙にまで打って出たこととの整合性をメディアは批判しようともしない。それで国民も安倍の適当なゴマカシをうのみにし、「そんなものか」と受け入れてしまう。
 お盆期間中には、耳を疑うようなニュースも飛び込んできた。16日付の人事で、森友学園問題をめぐる決裁文書改ざんの“実行犯”だった財務省官房参事官の中村稔氏を外務省に出向、駐英公使に充てると発表されたのだ。安倍昭恵夫人付の秘書だった経産官僚を在イタリア大使館の1等書記官に栄転させて口封じしたのと同じで、森友問題に蓋をする政権の意向が色濃く見える。9日に大阪地検特捜部が再び中村氏らを不起訴処分とし、捜査終結を宣言した直後に人事を発令だから、ほんとフザケている。
「こんな形で幕引きなんて国民をバカにしているとしか思えませんが、今回の人事も、中村氏らが不起訴処分になった件も、メディアはアリバイ的に小さく報じただけで、あらためて検証したりキャンペーンを張る論戦は見られません。メディアに批判的な視点がなければ、読者や視聴者が問題意識を持つことは難しい。無党派層というより、政治への無関心層が増える一方です。それが現政権の安定に寄与している。9月になればラグビーW杯や内閣改造での小泉進次郎氏の処遇などにメディアは沸き立ち、原発事故の汚染水がダダ漏れになっている深刻な事態など、本来なら1面トップで扱われるべきネタはますます隅に追いやられてしまう。そこに、外に敵をつくって求心力を高める政権の手法がハマり、支持率は高め安定が続くのでしょう」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)


■政治に対する関心を失わせる報道
 森友問題だけでなく、北方領土問題の方針変換、北のミサイルへの不誠実な対応など、安倍が国民にきっちり説明すべき事柄は山ほどある。
 政府は年金の給付見通しを示す5年に1度の財政検証の公表を参院選後に遅らせたが、年金制度はこの先どうなるのか。最近の株価急落で、株式市場に突っ込んだ年金資金も心配だ。株安は日銀のバランスシートもむしばむ。危ういアベノミクスの総括も必要だろう。
 しかし、野党が求める予算委員会は4月以来、一度も開かれていない。与党側が、予算委出席を嫌がる安倍の意をくんで突っぱねているからだ。そうやって難題から逃げ回って支持率アップなら、政権側はなおさらやりたい放題になる。
「国会を開かず、外遊で記念撮影をして“やってる感”を演出しているのが一番いいのでしょう。やるべきことをしない方がポイントを稼げるのだから、こんな楽なことはない。本来はメディアが『国会を開け』『説明責任を果たせ』と批判の声を上げて詰め寄るべきなのです。民主主義が機能するには、メディアが重要な役割を果たす。米国のメディアはトランプ政権と戦っているのに、この国は大本営発表を続けるばかりです。今の日本はとても民主主義国家とは言えません」(川崎泰資氏=前出)
 安倍1強が続く現状を分析するのに、「野党に魅力がない」「支持したい政党がない」というのが常套句になっている。野党がだらしないのは事実だが、野党のせいばかりでもない。
 権力におもねる大メディアの報道姿勢にも問題がある。
 象徴的なのは、共同通信の8月の世論調査では、れいわ新選組の政党支持率が4.3%に倍増し、野党では立憲民主党に次ぐ高支持率をマークしたことだ。参院選でれいわは各地で熱狂的な支持を集めるなど台風の目になっていたが、大メディアは黙殺。選挙後にこぞって「れいわ旋風」を報じ、そこで初めて、れいわの主張を知った有権者もいた。テレビが選挙期間中から報じていたら、消費税に対する関心や批判が高まり、50%を切った歴史的低投票率も、もっと上がったかもしれない。
 投票率が50%を下回り、内閣支持率は50%を超える。なぜ、こんなイビツな国になったのか。くだらないチンピラばかりがテレビを席巻。アホらしいし、情けないが、ここに安倍政権持続のカラクリがある。
(日刊ゲンダイ)
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