松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

統計不正の安倍首相「ムキになって否定」はモリカケと同じ

  


「経済指標を良くしようという行為とは、全く、関わりがない」「まるで私たちがですね、統計をいじってアベノミクスを良くしようとしている、そんなことできるはずないじゃないですか。そんなことできるはずがないんですよ」     
 厚労省の「毎月勤労統計」を巡る不正問題で、野党側の追及に対して安倍首相が度々、感情をムキ出しにして否定する場面が目立っている。昨年のモリカケ疑惑を巡る国会質疑でも繰り返された光景だが、落ち着いて論理的に答弁できないのは、それだけ野党側の追及が的を射ている証左だろう。
 安倍が言うとおり、政権側に何ら後ろめたいことがなく、あくまで厚労省による不適切な統計処理に過ぎない――と考えているのであれば、再発防止のためにも野党と協力して徹底的に真相究明に取り組むべきだ。統計は国家の基幹に関わる重要な指針なのだ。
 ところが、与党側にそんな姿勢は見られない。キーマンといわれた厚労省の大西康之前政策統括官や、特別監察委の樋口美雄委員長ら関係者の参考人招致を当初、ことごとく拒否し、4日から始まった参院予算委では欠席する参考人が続出した。詳細を知る立場にいたとみられる官僚が予算委で「記憶にない」とはぐらかし答弁を連発しても知らん顔で、野党側が求めている前年と同じ事業所を比べた場合の実質賃金の伸び率のデータの公表についても、「可能かどうかということも含めて、今、検討している」(安倍)などとノラリクラリ。
 揚げ句、特別監察委がまとめた統計不正の2回目の報告書の結論は「嘘をついているが隠蔽じゃない」である。全く支離滅裂で、誰がどう見ても問題を隠すための強引な幕引きとしか思えない。


■統計不正は「過失」ではなく「故意」で行われた
「私や妻が関与したのなら、総理大臣も国会議員もやめる」「加計氏とは相談や依頼があったことは一切ない」。モリカケ疑惑でも、安倍が大袈裟に反論する一方、参考人招致された官僚がオトボケ答弁を繰り返していたが、今回も全く同じ図式。安倍政権の「十八番」というべき隠蔽パターンの手口だ。統計不正を〈経済クーデター〉と断じる元参院議員の平野貞夫氏はこう言う。
「良識ある国民は今国会でモリカケ疑惑のような答弁を続けている安倍首相や官僚の姿を見て、おそらく『何かを隠そうとしているな』と分かるでしょう。それは言うまでもなく、アベノミクスに都合の良い数字を捏造しようと官邸が関与した疑いです。野党が指摘しているアベノミクス偽装ですよ。安倍政権の統計不正は『過失』ではなく、明らかな『故意』。統計制度は憲法と同じか、それ以上の国家の根幹であって、時の権力が恣意的にねじ曲げて悪用することは絶対に許されない」
 この政権の悪しき特徴は、国民生活への影響を考えず、詳しい説明もないまま、それまでの仕組みや制度を突然、好き勝手に変えることだ。そして、それを追及されても「知らぬ存ぜぬ」と言い放ち、資料やデータは改ざん、捏造、廃棄だ。まさにデタラメの極みだが、モリカケ疑惑と同様、統計不正でも今後、政権の嘘をひっくり返す新たな証拠が出てくる可能性は高いのではないか。


■あらゆる統計の不正が常態化したこの国の政治は末期症状
〈最近見られたエンゲル係数の上昇の動きは剥落し、世帯の可処分所得がピークとなった1990年代後半以降、ほぼ横ばいで推移していることがお分かりいただけると思います〉
 総務省統計局が公式HPに掲載している〈明治から続く統計指標:エンゲル係数〉のグラフを巡っても「偽装統計」疑惑がささやかれている。
 エンゲル係数は「消費支出総額に占める食費支出の割合」で、生活水準を表す指数だ。富裕層も低所得者層も食べなければ生きていけない。当然、カツカツの生活費で暮らす低所得者層ほど支出に占める食費の割合は上昇する。つまり、数値が高いほど生活水準は低いと見るのが一般的だ。
 エンゲル係数は06年から12年までは23%台で安定していたが、12年12月の第2次安倍政権発足以降、急上昇。16年は25・8%になった。そこで昨年1月の参院予算委で、民進党(当時)の小川敏夫議員がアベノミクスによって「国民生活は苦しくなった」と指摘。答弁した安倍は「物価変動、食生活や生活スタイルの変化が……」などとゴニョゴニョ言っていたのだが、そうしたらナント! 総務省は密かに「修正エンゲル係数」なる新たなグラフを作成。計算式を「実質可処分所得に占める実質食料支出の割合」に変更し、上昇傾向だったエンゲル係数を打ち消してしまったのだ。経済評論家の斎藤満氏がこう言う。
「『修正エンゲル係数』は『エンゲル係数』という言葉を使っていますが全く別の概念であり、アベノミクスの失敗を隠蔽するために作られた偽装係数と言っていいと思います」


■統計委で審議されずに見直された統計がゴロゴロ
 斎藤氏によると、偽装データはまだある。総務省の「家計調査」だ。
「18年の世帯構成で、世帯主が60歳以上の世帯割合が52・3%と、前年の53・4%から1ポイント以上も減りました。さらに『無職世帯』の割合が18年は33・8%と前年の34・6%から減少。代わって『勤労者世帯』が52・9%と前年の49・6%から大幅に増加したのです。無職世帯の消費額は勤労者世帯に比べて2割程度少なくなるため、勤労者世帯の比率が高まるほど平均消費水準が高まる。つまり、個人消費などの消費水準を高めるために意図的なサンプル変化が行われた疑いがあるのです」
 いやはや、一体、果たして正しい政府統計はあるのか。極め付きは「GDPカサ上げ」疑惑だ。立憲民主の小川淳也議員によると、安倍が政権に返り咲いた直後の13年以降、全56件の基幹統計のうち、53件の統計の取り方が見直された。うちGDP関連は38件で、10件は統計委で審議されずに見直されたという。
 安倍が「GDP600兆円の達成」を掲げたのが15年9月。その後、「国際基準」を理由にGDP算出に新たに「研究開発費」などが組み入れられた結果、15年度のGDPは、旧基準よりも31兆円も増加。内訳は「国際基準」要因が24兆円、防衛装備品などの「その他」が7・5兆円だが、過去のGDP数値を見ると「その他」は主に押し下げの要素が強かったのに、安倍政権では真逆。小川議員が国会で「その他」の大幅増の不自然さを指摘したのも当然だ。
 GDPカサ上げ疑惑を以前から指摘してきた弁護士の明石順平氏は近著「データが語る日本財政の未来」(集英社インターナショナル新書)で、GDPの算出方法の変更で、アベノミクスの失敗を示す6つのデータのうち、4つが消えた、と指摘している。明石順平氏がこう言う。
「アベノミクスはデータで見ると壮絶に失敗していると言える。私は(それを糊塗するため)GDP関連の数値は明らかに政権の意向が強く働いていると考えています」
 こんなにも統計不正が常態化している先進国はないだろう。この国の政治は末期的状態だ。(日刊ゲンダイ)
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