松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

犠牲は弱者 “景気暗転”むき出しになるアベノミクスの真実

 

 景気動向指数の1月の基調判断について内閣府が先週7日、これまでの「足踏み」から「下方への局面変化」に引き下げた。この表現の使用は、消費増税の影響を受けた2014年以来。景気の現状を示す「一致指数」は3カ月連続で減少し、5年7カ月ぶりの低水準とメタメタだ。
 さすがの大マスコミも一斉に「すでに景気後退入りか」と1面で報じたが、何を今さら騒いでいるのか。安倍政権と大マスコミはそろって「中国経済の急減速の影響」と強調するが、要因はそれだけではない。茂木経済再生相に至っては「1月は中国の春節の時期で、さまざまな生産活動が低くなり、中国向けの輸出が手控えられた」と説明したが、今年の春節は2月4日からだ。ミエミエのゴマカシは論外である。
 景気動向指数のうち、景気の先行きを示す「先行指数」は既に昨秋ごろから落ち込む傾向を表していた。それなのにボンクラ政権は昨年相次いだ自然災害による「一時的な景気の落ち込み」と放置し、何ら手を打ってこなかった。景気後退は当然の帰結だ。
 1月の景気動向指数をもってして、安倍首相が喧伝する「戦後最長の景気拡大」に、今さら疑念を挟む大マスコミには鼻白む。大体この政権下で6年以上にわたって世論調査を実施してきたが、「景気回復を実感している」との回答が一度でも5割を超えたことがあったか。常に8割近くが「実感できない」と答えているではないか。
 統計不正のアベノミクス偽装で、あらゆる基幹統計が信頼できなくなった今、景気の良し悪しは国民の実感に頼るほかない。今回の景気の後退局面は、とうとうアベノミクス偽装の化けの皮がはがれ落ち、いよいよ、ペテン政治のツケと副作用が剥き出しになる――そう捉えるべきだ。
 ハッキリ言ってアベノミクスの6年間はゴマカシの連続。この政権がひたすらやってきたことは、大企業優遇、格差拡大、庶民切り捨ての暴政の数々と、その悪事を隠蔽するための金融政策を駆使した国民騙しだ。


*壮大なマヤカシで空理空論を目くらまし
 安倍政権は弱肉強食の新自由主義にどっぷり漬かり、規制緩和の旗の下、国民の暮らしを海外に売り飛ばし、労働者を散々痛めつけてきた。
 昨年の種子法廃止と改正水道法では、国民の命の源である食と水を召し上げ、外国資本に献上する。TPPや日欧EPAの発効に邁進し、日本の農水産業を壊滅に追い込む。
 働き方改革に盛り込んだ高度プロフェッショナル制度で、労働者から残業代の概念を強奪。外国人労働者の門戸拡大の改正入管法により、日本の労働者は劣悪な環境に立つ外国人の安い労働力と競わされ、ますます賃下げ圧力が加わる。
 こうして人件費を抑制したい大企業を喜ばせた上、政権発足時に37%だった国の法人実効税率を段階的に20%台まで引き下げる優遇ぶりだ。ジャーナリストの斎藤貴男氏は、こう指摘する。
「この売国政権下の新自由主義とは権力者と資本家のための『自由』であり、その見返りに庶民の『自由』が奪われてしまう。史上最悪のイデオロギーなのです。安倍政権は規制緩和の名の下に新たな利権の確保を正当化し、弱者の声は全く聞き入れない。沖縄県民投票の結果への冷淡な対応が象徴的です。ここまで国民生活が虐げられれば、景気回復の実感がわかなくて当然。アベノミクスで日本経済が改善したなどという言説は大嘘で、政権発足以来、景気が向上していないのは国民の肌感覚の通りです。ところが、この政権は日銀のETF購入、年金基金、ゆうちょマネーなどを株式市場に大量投入。公的資金による株買い支えの“偽装株高”で、経済政策のデタラメや矛盾から国民の目をそらし、あまつさえ統計データまでデッチ上げ、アベノミクスの自画自賛を繰り返した。安倍首相は国会で『私が国家です』と答弁しましたが、まさにその発言通り。『こうありたい』と望むまま、隠蔽と偽装を重ねた印象操作で、景気の実態をゴマカし続けてきたのです」


*庶民の生活実態に目もくれず大威張り
 安倍は二言目には「雇用の改善」を口にして、「アベノミクスの実績」と胸を張るが、これも国民を言いくるめるための方便に過ぎない。現実に増えたのは低賃金の非正規雇用ばかり。雇用者数は13年1月の5179万人から今年1月は5628万人へと449万人増加したが、うち非正規の増加数は327万人。増えた雇用の実に72・8%を占めた。そのため、雇用者に占める非正規の割合は38・3%と過去最高水準に達している。
 安倍の自慢のタネの雇用増加について、経済評論家の斎藤満氏は「安倍政権下で、所得の格差と配分の不公平を測る『ジニ係数』も上昇傾向にあり、世帯主の所得に頼れず、主婦や高齢者が生活防衛のため、非正規で働きに出ているとみるのが妥当です」と分析し、こう続けた。
「つまり富裕層や大企業を豊かにしても、富は国民全体にしたたり落ちてこない。アベノミクスのトリクルダウン理論なんて嘘っぱちで、現実には、この6年で『1%対99%』の格差社会を拡大させたのです。ところが、安倍首相は庶民の生活実態に目もくれず、『国民総所得は増えている』と大威張り。官僚たちも右へ倣えで実体経済を良く見せようと、毎月勤労統計を密かにカサ上げ。エンゲル係数の計算式を勝手に変えて上昇傾向にフタをし、家計調査も消費水準を高めるため、意図的にサンプルを変更した疑いもある。こうしたインチキで覆い隠してきたアベノミクスの失敗を糊塗しきれず、露呈してきたのが現在の景気後退局面なのです」
 しょせん、アベノミクスなんて空理空論。刹那的な壮大なマヤカシで、国民をペテンにかけてきたのが真実である。


*「一将功成りて万骨枯る」に納得するのか
 人口減少で放っておいてもマーケットが縮小する中、6年以上に及ぶ暴政で庶民生活はズタズタに引き裂かれた。
 その結果、実質GDPに占める純粋な家計消費の比率は4割台まで落ち込み、消費の改善を望めるはずもない。日本経済に景気後退をはねのけるパワーは残されていないのだ。
 前出の斎藤貴男氏は「壮大なマヤカシが通じなくなれば、アベノミクスの真実が剥き出しとなって経済弱者に襲い掛かることになる」と警告。前出の斎藤満氏も「景気後退期に真っ先に切り捨てられ、アベノミクスのツケと副作用をモロに被るのは、生活苦で働きに出ている非正規の人々です。正規雇用者も賃上げは望めず、いずれ年金受給開始年齢も引き上げられる。99%の庶民には『死ぬまで働け』の地獄が待ち受けています」と予測する。政治評論家の森田実氏はこう言った。
「世界経済全体が景気後退期に差し掛かった恐れすらある中、安倍政権は異次元緩和で金融政策を既に使い切り、財政的余裕もない。来るべき危機に、もはや打つべき手段を失わせてしまったのです。その罪は幾重にも重い。しかも異次元緩和で景気は上向くどころか、ジャブジャブに供給したはずの資金は融資を怠る大銀行の金庫に眠っているか、あるいは大企業の内部留保に消えただけ。庶民の手元には回らず、経済の悪循環を生み落とした。結局、安倍政権は国民の暮らしを度外視し、『今だけ金だけ自分とお友達だけ』の刹那主義に毒されています。このままだと、安倍首相が歴史的な長期政権を築き上げただけで、庶民は泣きを見るという『一将功成りて万骨枯る』の状況に日本は陥ってしまいます。今こそ国民は目を覚ますべきです」
 今の日本に左右の違いで小競り合いを演じている余裕はない。
 騙されてきた99%の庶民は、大嘘つき首相の舌を抜くまで一致団結すべきだ。
(日刊ゲンダイ)
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