松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

日朝会談は無理筋 安倍首相「無条件」の致命的ピント外れ

  


「条件を付けずに金正恩朝鮮労働党委員長と向き合う」――。日朝首脳会談実現に向け、勇ましく語った安倍首相。これまで強調してきた「拉致問題進展」の前提条件をひとまず取り下げ、歩み寄ったつもりだろうが、まるで見当外れだ。「条件なし」で北朝鮮が交渉に応じるわけがない。
 8日の東京新聞によると、北朝鮮関係筋は、日本が2006年から実施する北朝鮮国籍保有者の入国禁止措置を含む独自制裁の解除を求めた。「人的往来を制裁に加えてはならない」と強調した上で、「無条件とはいうが、拉致問題をどのように扱うつもりなのか」とクギを刺してきたという。
「北朝鮮国民は、人的往来の制限で在日の家族から医療品や生活費を受け取る機会を奪われ、困窮している。金政権への不満を抑える上で、入国禁止の制裁解除には一定の効果がある。とはいえ、今月7日、韓国が計画している北朝鮮への食糧支援について、トランプ米大統領が支持を表明しました。もはや正恩氏にとって、日本からの些細な支援だけでは、恩恵が薄い状況といえます。むしろ、拉致問題の解決一辺倒でかたくなな安倍首相と会うメリットは低いと考えているとみられます」(外交関係者)
 そもそも、安倍首相が「条件なし」にすれば、正恩と会談できると考えていること自体がピント外れだ。北朝鮮が以前から求めているのは、戦後賠償や経済制裁の解除などである。


■小泉政権は「1兆円規模」経済支援を持ちかけた
 02年9月には、小泉純一郎首相が訪朝し、金正日総書記との首脳会談が実現。過去の侵略戦争、植民地支配の清算などの包括的解決を目指すことを示した「日朝平壌宣言」に署名した。事前協議では、戦後賠償として日本側が100億ドル(約1兆円)規模の経済協力資金を提供する「密約」を持ちかけたと一部で報じられている。
 今も状況は似たようなものだ。独自制裁の解除はもちろん、少なくとも「日朝平壌宣言」の誠実な履行など日本側から「新たな条件」を打ち出さない限り、正恩が会談を求める安倍首相に振り向いてくれるわけがないのだ。
「小さなロケットマン」と正恩を罵倒していたトランプ大統領だって、昨年の米朝首脳会談直前に「早期の完全な非核化」について「ゆっくり時間をかけてやればいい」と譲歩し、「私はこれ以上『最大限の圧力』という言葉を使わない」と制裁緩和に含みを持たせていたほど。「条件なし」で正恩が交渉のテーブルに着くと思っているのだとしたら見当違いも甚だしい。
「ただ単に『条件を付けない』というだけでは北朝鮮が会談に応じることはないでしょう。日本側から北側の最大要求である『戦後賠償』を持ちかけなければ、交渉のテーブルに着かせることすら困難です。安倍首相は『過去の清算についても話し合う』と言及しましたが、どこまで本気なのか。選挙目当てで期待感を演出するだけのパフォーマンスに終わるのなら、交渉が頓挫するのは間違いない。これまで北の脅威をあおることで国内世論を喚起し、政権浮揚に結び付けてきた安倍首相が、本気で『過去の清算』に取り組むことができるのか。まだ先は不透明です」(元外交官の天木直人氏)
 本気で安倍首相が拉致問題の解決に向け正恩と直接向き合うつもりなら、“拉致の安倍”のイメージをかなぐり捨てる覚悟が必要だ。いつもの“やってる感”の演出だけでは、日朝首脳会談実現は到底、無理筋である。
(日刊ゲンダイ)
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