松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

言葉遊びで相手が引っかかるのを待つ稚拙な外交手法の失敗

  


 安倍晋三首相は19日、北朝鮮による拉致被害者の家族らと会い「残念ながら日朝首脳会談については、まだメドが立っていないのは事実だ」と率直に認めた。
 それはそうだろう。安倍は1年前までは「対話のための対話は不要」で米国と足並みを揃え「最大限の(ということは軍事・経済両面で)圧力をかけ続ける」と勇ましく叫んでいたのに、トランプ米大統領にあっさりとハシゴを外されて焦り、急に「条件をつけずに対話したい」と言い出した。これでは先方も戸惑うばかりである。
 しかもこういうことは、表舞台と裏工作、実はもうひとつ裏に極秘ルートもあるといった二重、三重の仕掛けを周到に用意して立体的に進めなければならないが、安倍のやり方は、「最大限の圧力」という表現を「引き続き圧力をかけ続けることに変わりはない」と言い換え、それでも足りないと見るや「圧力」という言葉そのものを引っ込めるという、“言葉遊び”のようなことをしながら、小出しに餌をまいて相手が引っかかるのを待つ単純かつ素朴なもの。滞日体験の長い米国人記者に言わせると、「外洋でカツオの一本釣りをするようなダイナミックな場面で、釣り堀で金魚を釣るようなチマチマしたやり方をしてもうまくいかないでしょう。だから金正恩委員長も、さらに北方領土交渉で言えばプーチン大統領も、食いついてこない」ということになる。
「いや、方針転換するのはいいんです。世の中、動いているんですから」とその米国人記者がこう言う。
「ただしそれを分かりやすく国会にも国民にも説明して納得をしてもらわないといけないですね。だって安倍さんは昨年春までは、北のミサイル発射を『国難』と言って小学校の子どもたちに避難訓練までさせたのに、先日また何やら『飛翔体』が飛んでもダンマリで、『対話が大事だ』というのでは、金委員長のみならず我々もみなキョトンとしてしまいます」
 確かに、対ロ交渉でもまず「固有の領土」「ソ連軍による不法占拠」などの決まり文句を次々に引っ込めて、「北方4島」と呼ぶのもやめて「2島プラスアルファ」だとかの“言葉遊び”に走り、プーチンも我々もキョトンとさせられた。
これが「外交上手」が自慢のはずの安倍の失敗の本質である。
(日刊ゲンダイ・高野孟)
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