松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

黒い星から来た歌手達 第30回 高齢者運転免許返上に思う

このところ高齢者による車の事故に世論が集まっています。やれボケによる運転操作の誤りだとか、老齢化による突発的な持病の発作だとか、あらゆる面から老人の運転に対する批判の目が厳しくなっているのは事実です。
かく言う私も今や83歳で、先日高齢者講習を受けました。以前は筆記試験に引き続き実地の講習も行われたのですが、今回は認知機能検査の結果を受けた後、実地講習は後日予約する事になっています。まあ言ってみればそれだけ高齢者の運転に関する世間の目が厳しくなったのではないかと思われます。
確かに老齢化による身体反応や判断力の衰えを防げないにしても、運転技術と老齢化による因果関係に関するはっきりしたデーターを示さぬ限り、やたら高齢者運転免許返上を錦の御旗に掲げるのは如何なものかと思うのです。人は誰もが衰え、やがては死に至るのは生まれ落ちた時からの宿命とは云え、人それぞれの個人差や技能の種類にもよって一律に行くものでもありますまい。
例えばスポーツ選手の様なアスリートと画家や文士などの現役寿命は自ずと異なるものでしょうし、それに個人差が加われば、運転技術など自分の職業との関係の有無でも随分年齢的な開きが生じるのではないかと思います。それに現在問題になっているブレーキとアクセルの踏み間違いなどの問題は、運転技術の問題として位置付けなければならぬ事であり、運転に関する個人の技量や交通規則の認識などにも及ぶ話で、一括りにして論ずるものではなく、これらを高齢者運転免許返上のスケープゴートの如く報じるマスコミの思慮の無さにも問題があるのではないでしょうか。
確かに以前に比べ高齢者の認知度の判定は厳しくなっているのが現実で、以前は筆記試験と実技試験を続けて受験できたものが、筆記試験の結果を見て、後日実技試験のコースを振り分けられる様になったのを見ると、運転免許に関する医学的判断を優先した結果が伺えます。
とは言え医学的判断と言うほど、強く具体的に医学が関与しているとは思いませんが、認知度の検査を見ても、あの程度の問題ができなければ認知どころか人としての生活に支障を来すことは間違いない事で、更なる医学的に具体的な関与を求めるのが、今後の高齢者運転免許講習のあり方ではないでしょうか。
今回も認知力のテストである16枚の絵を見て、何問か後に絵の記憶を答える例題では、ノーヒントの場合、16問中12問を回答、回答率75%。ヒントを貰って答えた場合、16問中15問、回答率93.75%。更に試験後三日経って記憶を呼び起こしたのが、16問中15問、回答率93.75%でありました。つまりこの程度の検査で老齢化の認知力を判断するには余りにも大雑把すぎるのではないかと思う次第です。
先日92歳で運転を止められたエリザベス女王の記事を掲載しましたが、夫君フィリップ殿下は97歳で免許返納、エリザベス女王は公道での運転を止めたとはいえ、敷地内の運転に関しては特にコメントは出されていないようです。
四輪で走る自動車は二輪のバイクや自転車とは違い、転倒の危険もありませんし、生身のバイクや自転車よりも、はるかに車の方が人間を保護する構造になっているのも確かです。また昔と違って現在の車の運転技術は著しく安全で容易なものに進化しています。
アクセルとブレーキの踏み間違いの問題にしても、突発性の持病や精神障害によるものでなければ、操作と言う程の問題ではなく、歩くか立ち止まるかよりも易しい話ではありませんか。
私も9月で84歳の免許更新を受けますが、合格し事故、違反の問題がなければ87歳までのゴールドライセンスは取得できますし、今後関西方面へ出かける機会が増えるであろう事を考えれば、心してこの運転免許の恩恵を受けなければなりますまい。
私が命をかけて精進してきたオペラ出演から引退したのが16年前の68歳。今にして思えば適切な判断だったと考えています。自分の足元を冷静に見据える事がどれくらい難しい事かは十分承知の上で取り組むのが人間の人間たる所以でしょう。
さてオペラよりも長命だった運転免許の記録、それに私の命その物の記録、一体いつまで続くものやら。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「美声を科学する」販売店
◉Mazzuola Editore ダイレクトセール・松尾出版直販(送料無料)
http://mazzola-editore.easy-myshop.jp
◉Amazon
https://www.amazon.co.jp/美声を科学する-松尾篤興/dp/4990812808/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1521368401&sr=8-1&keywords=美声を科学する