松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

国際法遵守を韓国に迫る安倍政権も国際法を理解していない

       


 日韓関係が戦後最悪の時期を迎えている。韓国では、車やビール、服飾などの日本製品の売り上げが大幅ダウンとなった。韓国からの訪日客も激減し、九州、北海道、大阪などの主要な観光地では、ホテル、飲食店、交通機関が軒並み厳しい経営を迫られている。
 こうした状況にありながら、日本の国民の間には「韓国が悪いのだから懲らしめてやれ」という空気が広がっている。
 安倍首相は今年の8月6日、今の日韓関係について「最大の問題は国家間の約束を守るかどうかという信頼の問題」と指摘した上で、「引き続き国際法に基づきわが国の一貫した立場を主張し、韓国側に適切な対応を強く求めていく」と発言していた。
 1965年に締結した日韓請求権協定では、第1条で「日本が韓国に経済協力すること」を決め、第2条で「国及びその国民の請求権問題が、完全かつ最終的に解決されたこととなる」としている。つまり、安倍首相が言っている請求権協定の立場に誤りはない。
 しかし、安倍首相や日本政府が触れていない重要な国際法がある。世界人権宣言の内容を基礎に条約化された「国際人権規約」である。
 この規約は、人権諸条約の中で最も基本的かつ包括的なものとされ、日韓請求権協定の翌年である1966年に国連総会で採択され、76年に発効。日本は79年に批准した。ここには極めて重要な条項がある。
〈締約国は、次のことを約束する。この規約で認められる権利又は自由を侵害された者が、公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも、効果的な救済措置を受けることを確保する〉
 これを徴用工問題に当てはめると、「権利又は自由を侵害された者」は「徴用工」であり、「公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも」とは、「日韓請求権並びに経済協力協定で請求権がないとされた場合でも」となり、従って「効果的な救済措置を受けることを確保する」ことが求められる。
 この考え方は日本の裁判所も採用しており、中国人の強制連行問題について、広島高裁判決は2004年7月、「個人の損害賠償請求権は固有の権利であって、国家との条約を以て放棄させることはできない」との判断を示しているのである。
 日本の国民の多くは、問題の一側面しか知らされていない。「国際法を守れ」という言葉は、すなわち、安倍首相に対しても向けられるべきものである。
(日刊ゲンダイ・孫崎享)
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