松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

誰が見ても違反じゃないか 動かない捜査当局の腐敗堕落


 公金を使った買収という見方も出ている「桜を見る会」について、説明から逃げ回っている安倍首相が15日夕方、突然、官邸で記者団の質問に応じた。それだけ焦っているという証左でもある。来年の開催中止で「臭いものにフタ」を決め込んでみても、国民の疑念は膨らむ一方だからだ。
 税金で催される観桜会に地元関係者を850人も招待して飲み食いさせた接待疑惑。その「前夜祭」と称する夕食会でも後援会関係者に高級ホテルで格安に飲食させ便宜を図った買収疑惑。さらには、この夕食会が政治資金収支報告書に記載されていないことも問題だ。
 公選法と政治資金規正法のダブル違反が疑われている。
 安倍は夕食会について、「いわば後援会の皆さんが集まればですね、それは広い意味での後援会活動なんだろう」と認めたが、「会場の入り口の受付にて安倍事務所職員が5000円を集金をし、ホテル名義の領収書をその場で手交し、集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払いがなされた、ということであります」「そこで入ったお金をそのままホテルに渡していれば、収支は発生していないわけでありますから、政治資金規正法上の違反にはまったく当たらないということであります」と弁明。5000円という安すぎる価格の“差額補填疑惑”に関しては、「ホテル側が設定した価格」とホテルに責任を丸投げで、自身に違法性はないと強調した。
 それが事実なら、最初からそう説明すればいいのに8日の参院予算委で疑惑を追及されて以降、観桜会をめぐる政府の説明は二転三転してきた。


■ホテルも巻き込んで隠蔽工作
 政治資金に詳しい神戸学院大教授の上脇博之氏がこう言う。
「今回の説明で納得する国民はいないでしょう。後援会の活動であれば当然、政治資金収支報告書に記載する必要がある。ホテル名義の領収書を用意してもらったのは、報告書に記載しないための偽装工作にも見えます。領収書に『飲食代』『会場利用費』などのただし書きがないのも不自然です。それに、食事代が1人5000円だったとしても、数百万円とされる宴会場の貸し切り料金は誰が支払ったのか。会場費の不記載に問われる可能性があります。さらに言えば、仮に首相の説明通り、通常は1万円以上する食事代をホテル側から5000円にすると持ちかけたとすれば、半額以上の割引は社会通念上許される範囲を超えており、現物供与の寄付行為にあたるでしょう。本来は政党への寄付しかできない一企業が首相個人や政治団体に献金したことになり、違法です。名門ホテルの看板に傷がつきかねません」


■天下りや出世のために悪事を見逃す法務・検察
 何があっても「私から働きかけたことはない」と現場の“実動部隊”のせいにするのは安倍の常套手段だが、老舗ホテルの威信まで巻き込んで、どう落とし前をつけるつもりなのか。
「こんなの誰がどう見たって公選法違反ですよ。夕食会の差額は官房機密費で補填したのか、政党交付金から拠出したのか知りませんが、政府主催の観桜会を私物化し、大掛かりな選挙事前運動に悪用していたのです。同じ公選法違反の疑惑で菅原前経産相や河井前法相が閣僚をクビになったのだから、安倍首相もクビにならなければおかしい。公金を使った買収なんて前代未聞です。捜査当局は、こんな明白な違法行為が白昼堂々と行われているのに、見逃す気なのでしょうか」(政治評論家・本澤二郎氏)
 疑惑の花見は「不適切でも違法ではない」「夕食会のカネは一時的に預かっただけだから収支にあたらない」――。安倍の発言は、福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた関西電力幹部の言い訳とそっくりだ。
 その関電疑惑でも、捜査当局はまったく動く気配がない。背景には、関電が検察幹部の天下り先になっているという醜悪な事情がある。金品受領問題を解明する第三者委員会の委員長に就任したのも、元検事総長の但木敬一弁護士という茶番劇である。
 発売中の「月刊日本」11月号で、元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士が関電と関西検察OBの「深い関係」を解説している。
<関電の社外監査役を長年務めていたのは、「関西検察のドン」と称された土肥孝治元検事総長です。その後任として社外監査役に就いたのも、元大阪高検検事長の佐々木茂夫弁護士です>
<関電の調査委員会で委員長を務めていた小林敬弁護士も、元大阪地検検事正です>
<こうした事情を踏まえれば、大阪検察の幹部たちが自らの退官後の処遇を考え、関電への捜査を躊躇しているとしても不思議ではありません。巨額の金の動きを伴う重大事案が表面化しているのに全く動こうとしない検察を見れば、そのような疑いを持たれても仕方ないでしょう>
 その上で、こんなことがまかり通れば関電だけでなく検察への不信感も高まり、モラルの根本が崩壊してしまうと警鐘を鳴らしている。


■数で制圧した国会内は嘘で乗り切れる
「大阪地検の堕落は目に余りますが、観桜会の疑惑に切り込まない東京地検も、また石看板にペンキをかけられる事態になりかねません。第2次安倍政権で官邸の力が強くなり、法務・検察官僚も官邸を忖度するようになった。人事を握られ、出世のためには悪事に目をつむるのです。モリカケ問題でも首相夫妻の疑惑には触れようとせず、悪事を働いた役人も無罪放免にした。大臣室でワイロを受け取った甘利元経済再生相や加計学園から闇献金を受けていた下村元文科相もおとがめなしで、マトモな立件はひとつもありません。首相と親しければレイプ疑惑まで見逃されてしまう。法の下の平等がすっかり歪められています。国民が大量議席を与えた結果、安倍官邸の権限が増大して、司法も意のままに操れると、やりたい放題がまかり通っている。それがおごりにつながり、悪人天国になってしまいました」(本澤二郎氏=前出)
 森友学園の籠池前理事長のように、安倍政権に批判的な言動をすると即座に身柄を拘束されるのに、お仲間は何をやっても罪に問われず、忖度官僚が出世する。善悪ではなく、安倍との関係性で物事が決まっていく。その延長に花見疑獄もある。
 野党は国会での説明を求めているが、安倍は「国会のことは国会がお決めになる。その上で、政府としては、国会から求められれば、説明責任を果たすのは当然のことだろうと思っています」と繰り返すばかり。官邸のぶら下がりで一方的に言いたいことを言うだけだ。
 モリカケ疑惑でも、証人喚問などは「国会でお決めになること」と言い続けて逃げ切ったが、いま問われているのは「政府」ではなく安倍個人の問題だ。支援者への便宜供与や夕食会の疑惑を払拭したければ、安倍自身が説明するしかない。
 菅原、河井の辞任については、国会で任命責任を追及された時は「政治資金に関わることなどについて、あるいは公選法に関わることについては、これは大臣の職にある者、あるいはそうじゃない者、与党野党にかかわらず、そういった指摘があれば、その指摘に対して説明責任を果たしていかなければならない」とか何とか言って、個人に責任をかぶせていたが、いざ自分に降りかかってくると、政府の責任にスリ替えてしまう。このご都合主義には呆れるほかない。
 与党が数の力を握る国会では予算委の集中審議にもなかなか応じようとしないし、役人も資料を隠蔽してしまう。嘘つき首相のはぐらかし答弁で時間切れにされるのがオチで、国会内での真実究明は難しいのが実情だ。
 となれば司直の手に委ねるしかないように思うが、肝心の捜査当局が腐敗しきったこの国では、もはや正義のメスなど望むべくもない。
(日刊ゲンダイ)
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