松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

「多国間主義の衰退」を警告した教皇の言葉をかみしめる


 来日したローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は長崎での演説の中で、「私たちは多国間主義の衰退を目の当たりにしている」と述べた。
 教皇は、核兵器の廃絶に一致結束、努力を続けることを訴え、そのためには相互不信の流れを断ち切って、軍備管理の国際的な枠組みが崩壊するのを防がなければならないと強調。その文脈で多国間主義の衰退に警告を発したのである。
 さりげない一言だったので、聞き逃した方も多かったかもしれないが、新聞では読売だけが25日付朝刊の1面トップで「ローマ教皇、核廃絶訴え/『多国間主義の衰退』懸念」と大見出しを立てた。めったにこの新聞を褒めたことのない私だが、今回は「あっぱれ」マークを進呈しておこう。
 実際、多国間主義の衰退は時代のキーワードである。直接には、トランプ米大統領の下で米国と旧ソ連との間で結ばれていた中距離核戦力(INF)全廃条約が破棄され、冷戦時代に逆戻りするのかという事態が現出したり、欧州勢が苦心してつくり上げたイランの核開発放棄のための枠組みを米国がブチ壊して、あわや戦争かという危機を招いたりしていることを指している。
 しかし、こうした米国の独善は今に始まったことではない。ブッシュ父は、冷戦を終わらせたのは偉かったが、「冷戦という名の第3次世界大戦に勝利した米国は“唯一超大国”になった」と誤認した。それを受けてブッシュ・ジュニアは「単独行動主義」を掲げ、アフガンとイラクの2つの戦争を引き起こし、結果的にISという厄介なテロ集団をつくり出してしまった。
 冷戦が終わったということは、東西それぞれの陣営に盟主がいて互いに覇権を争うという時代が終わったということで、それ以後は誰が誰に命令することもなく、問題に応じて関係国が集まって全員がフラットな立場で話し合って解決を図る。それが多国間主義であるけれども、米国のとくに共和党政権はそのことを根本的に理解できず、依然として盟主のように振る舞おうとする。
 日本は、本当はそういう米国の時代錯誤をいさめるべき立場にあるというのに、安倍政権は冷戦時代と同様に米国を盟主とあがめ立て、言いなりになって、いらない兵器まで爆買いさせられているありさま。安倍晋三首相こそ、教皇の言葉をかみしめるべきである。
(日刊ゲンダイ・高野孟)
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