松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

背筋が凍る動機と金満 河井案里1億5000万円は政権の致命傷

  


「違法性はない」と居直るほど、これは政権の致命傷となるに違いない。河井案里参院議員が昨年7月の参院選にあたり、自民党本部から計1億5000万円を受け取っていたことを認めた。
 具体的には昨年4~6月、案里と夫の克行前法相がそれぞれ代表を務める政党支部に7500万円ずつ振り込まれた。党本部から支部への資金交付に上限はないとはいえ、たった3カ月で1億5000万円もの大盤振る舞い。超破格の優遇ぶりには、身内の自民党内からも「聞いたことがない異常な額」「どうやって使い切るのか」と驚きの声が上がっている。
 同じ広島選挙区で6選を目指し落選した自民党の溝手顕正元防災担当相への支給は1500万円。実に10倍もの格差は、安倍首相と菅官房長官の肩入れがあればこそ。そもそも、定数2の広島選挙区で楽々当選を重ねてきた溝手に、同じく自民公認の新顔として案里を刺客に立てたのは、安倍・菅コンビの差し金だ。
 特に安倍は溝手に恨み骨髄だった。2007年の参院選惨敗で安倍が首相続投に拘泥した際、溝手は「首相本人の責任はある。(続投を)本人が言うのは勝手だが、決まっていない」と批判。野党時代の12年2月にも、消費増税関連法案への賛成と引き換えに衆院選を迫る「話し合い解散」を主張した安倍を、「もう過去の人」とコキ下ろした。
 こうした恨みを片時も忘れないのが、安倍の異常な執念深さだ。溝手は参院議長の芽もあったのに、安倍は反対し潰しただけでなく、「仇敵」を抹殺するかのごとく案里陣営に「異常な愛情」を注ぎ、とうとう政界から追い出したのである。
「そこまでやるか」と言うしかない恐るべき正体を、安倍はまざまざと見せつけている。


■カネの出は違法のデパート
 むろん、菅も黒い思惑含み。溝手は岸田派の重鎮で、ポスト安倍を狙う岸田政調会長を追い落とすため、案里陣営をモーレツに支援。選挙中は時の首相と官房長官がそろって選挙区に入った。
 巨額のマネーを手にした河井夫婦は当然、カネに糸目をかけずに金満選挙を展開した。中心市街地に選挙事務所を構え、1回当たり1500万~2000万円ほどかかるチラシのポスティングを短期間で頻繁に大量投下。菅が地元入りすれば駅から数百メートルにわたって看板を立てるなど溝手陣営との物量はケタ違いで、地元では「なんであんなに資金が潤沢なんだ」と不思議がられていた。
 政権ツートップの猛プッシュにより、晴れて河井夫婦はそろって国会議員となったが、とかく身の程知らずの“悪銭”を握ると古来から不正に浪費しがちだ。
 ご多分に漏れず案里陣営の公選法違反の疑いは、広島地検に家宅捜索を受けたウグイス嬢への違法報酬容疑にとどまらない。
 陣営の一員だった男性会社員に約86万円を支払った疑惑や、チラシを配ったり候補者とともに練り歩く選挙運動員にも報酬を払った疑惑もある。電話かけやビラ配りに報酬を支払うのは、金額の多寡にかかわらず公選法違反だ。案里陣営の金満選挙は“疑惑のデパート”。いくら案里がカネの「入り」について「違法性はない」と突っぱねても、カネの「出」は違法まみれである。


■頭から尻尾まで回った「選挙はカネ」の毒
 この「違法選挙」が横行する土台をつくった責任は、間違いなく巨額資金を差し出した安倍・菅コンビにある。
 今週発売の「週刊文春」によると、少なくとも4人の安倍事務所の秘書が広島に入って案里の選挙を手伝うなど、違法選挙はカネも人も安倍丸抱え。仇敵を蹴散らした論功行賞なのか、参院選後の内閣改造で克行は念願の初入閣を果たした。
 ここまで河井夫婦をかわいがるのは、単なる安倍の身内びいき。
 克行は12年の総裁選で故鳩山邦夫氏を説得し、邦夫氏主宰の「きさらぎ会」をまとめ、いち早く安倍支持を打ち出した。その恩義から安倍は克行を首相補佐官や総裁外交特別補佐として重用してきた。
 自分にスリ寄る「味方」には札束をドーンと積み上げ寵愛する一方、逆らう「敵」は徹底的に干す。あからさまに敵味方を区別する安倍の幼稚な性格には、改めて唖然だ。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言った。
「忘れていけないのは、党本部から河井夫婦の支部に流れた選挙資金の原資は政党交付金、つまり国民の税金ということです。トップの好き嫌いにより、特定の候補者に異常な額の税金を集中投下し、同僚とはいえ、嫌いな対立候補との間に10倍もの差をつける。こんな野蛮な選挙は、どこぞの独裁国と同じ。巨額の税金を投入した背景には安倍自民党の『カネの力で選挙は勝てる』という風潮が透けて見えます。しかも、何でもアリの違法選挙を奨励する形で実際に勝利したわけですから、既にカネの力で国政選挙は歪められてしまっている。今回の問題は民主主義の根幹を揺るがす由々しき事態です」
 かつて自身を批判した議員を潰すため、巨額の札束をバラまき、公選法違反がバレる恥さらし。まるで発展途上国の選挙のようではないか。


■坂上忍まで、「この夫婦無理」
 来るところまできた安倍・菅コンビの腐敗堕落には、さすがに有権者も開いた口がふさがらない。情けないのは今の自民党だ。
 23日のBS日テレ「深層NEWS」で下村博文選対委員長は「想像を超えている。相場の10倍で、本当に驚いている」と発言。巨額資金を動かす権限について「幹事長の判断、あるいは総裁の判断」と語ったものの、「二階さんか、安倍さんということか」と具体名を聞かれた途端、「いやあ、まあ、それは特定できません」と口をつぐんだ。
 党トップによる露骨なえこひいきが浮上しても皆、指をくわえて黙っているだけ。公然と批判する議員は今のところ誰ひとり現れやしない。
「カネの力で選挙に勝つ風潮がはびこればこそ、党総裁である安倍首相に誰も文句を言えない。もはや安倍首相に媚び、カネをもらうことしか考えられないのでしょう。安倍1強と言われる政治状況も、カネの力で買ったとしか思えません」(五野井郁夫氏=前出)
 しかし河井夫婦の問題は政権の傷口を深めるだけ。きのうのフジテレビ系「バイキング」でMCの坂上忍は「僕、この夫婦無理」と嫌悪感をあらわにしたが、メディアもこの夫婦には容赦しない。嫌われ夫婦への安倍の異常な肩入れが浮き彫りになるほど、確実に政権の致命傷となっていく。
「それでも今の腐敗堕落した自民党に世間の常識は通じません。政治の公正・公平をないがしろにし、一部のお友達だけ優遇するアベ政治の毒が、てっぺんから末端にまで回っている。自浄能力など期待するだけ無駄で、そっくり取り換えることでしか政治を救う道はありません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
 いくら自民党議員でも嫌われ夫婦と心中なんてごめんだろう。裏でコソコソ「あり得ない」などとブーたれる前に、安倍に堂々と反旗を翻す気概を示す議員が1人くらいは現れないものか。
(日刊ゲンダイ)
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