松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

都合のいい数字だけ列挙し現実を見ない「アベノチャット」

  


 自民党の経済通のベテラン議員に先の安倍晋三首相の施政方針演説の感想を聞くと、「アベノチャット、絶好調だね」と笑う。それ、何ですか?
「安倍話法というか、安倍流おしゃべり技法だ。第1に、アベノチャットでは常に、何を言うかよりも何を言わないかが大事だ。国民の皆さんがいちばん聞きたいことは、言わない。第2に、じゃあ何を言うかといえば、自分の理解可能な分野だけ取り上げて、都合のいいエピソードや数字の断片だけを並べていくので、文脈の流れとか論理の組み立てというものがない。前に進まずに、ひたすら横に流れて行ってしまうしゃべり方なので、いくら聞いても何の印象も残らない」とのこと。
 確かに、数字もいろいろ挙げて、説得力がありそうに見せてはいる。
「先日の演説で一例を挙げれば」と、同議員が説明する。安倍が「日本経済はこの7年間で13%成長し」と言ったので、え、そうなのかなと思って資料に当たった。円建ての名目GDPで見れば、円安効果もあってだいたいそのくらいだが、ドル建てで見れば12年の6兆2018億ドルから18年の4兆9564億ドルに縮んでいる。世界の名目GDP総計の中でのシェアを見ても、12年に8・3%だったのが18年には戦後最低の5・7%にまで落ちた。さらに1人当たり名目GDPでは、12年には世界第11位だったのに18年には20位にまで下がった。
 中国との対比では、10年に中国にGDPで肩を並べられ、わずかに追い越されて世界第3位に下がったのだが、それから8年後の18年には中国のGDPは13兆8949億ドルで、日本の2・8倍の経済規模である。
 前出ベテラン議員は手帳を開いていくつかの数字を示しつつ、こう言う。
「成長について語るのなら、このようにいろいろな側面から見て、全体としては日本は衰弱に向かいつつあるのではないかという危機感を共有し、それへの対応戦略を語るのでなければならない。日経新聞が1997年元日に『2020年からの警鐘』という連載を始め、その中で、20年には日本のGDPシェアが9・6%にまで落ちるとの予測を紹介し、『日本(の世界の中での存在感)が消える』と表現した。実際に20年を迎えたら、そのリアルな数字は5・7%だから、もう“消えている”わけだ。なのに、見栄えのいい数字だけ拾って、うまくいっているフリをするだけ。世も末ですよ」と。
(日刊ゲンダイ・高野孟)
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