松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

改憲から桜潰しまで 新型肺炎“火事場ドロボー”の有象無象

          

「日本の対応は混沌として場当たり的だ」
「ロシアの専門家とも協議したが、日本の対応には大きな疑問がある」
 横浜港に停泊している大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で新型肺炎の感染者が増えている問題で、ロシア外務省のザハロワ情報局長が日本政府の“水際作戦”をこう批判していたが、もはや船上隔離という防疫手段は限界を迎えているといっていい。とりわけ衝撃なのは、新型コロナウイルスの感染が新たに判明した感染者の中に、クルーズ船内で乗員、乗客に対する検疫作業に当たっていた男性検疫官が含まれていたことだろう。
 厚労省によると、男性検疫官は3日夜~4日夜にクルーズ船内で作業し、乗客ら1人に接するごとに手や指を消毒していた。全身防護服を着てはいなかったものの、WHO(世界保健機関)の指針に基づき、マスクと手袋を着用していたという。検疫官という感染症の専門知識を持った職員ですら短時間の接触で感染する状況からみると、クルーズ船内で広がっている新型コロナウイルスの感染力は極めて強いと考えざるを得ない。
 外務省は12日、中国全土の在留邦人や旅行者に対して、日本への早期の一時帰国や中国への渡航延期を呼び掛け、政府もこれまで中国湖北省に限っていた入国拒否の対象地域を同浙江省の滞在者にも拡大したが、国内の感染拡大は時間の問題になってきた。


■日本はクルーズ船の検疫体制が確立していない
「感染症の流入を食い止めるため、より包括的かつ機動的な水際対策を講じることが不可欠だ」
 12日の対策本部会合で、安倍首相はこう強調していたが、すでに水際対策は“崩壊”した可能性が高いとみるべきだろう。ロシア外務省だけでなく、米NYタイムズ紙も<漂流しているダイヤモンド・プリンセス号は流行が発生し、数週間封鎖されている1100万人都市の中国・武漢のミニバージョンだ>と指摘している通り、今のように新型コロナウイルスの検体検査が遅々として進まず、連日、感染者が次々と確認される状況が繰り返されれば、日本では政府自体が感染者を増やしている“張本人”ではないのか、と世界各国で受け取られかねない。
 ダイヤモンド・プリンセス号の乗員、乗客は56カ国・地域に及び、外国籍が半数超を占めている。仮に外国人の中で重症者や死者が出た場合、なぜ、すぐに検体検査をしなかったのか――と日本政府の対応を非難し、損害賠償を求める動きが出ても不思議じゃない。
 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏はこう言う。
「イタリアでも約6000人が乗船したクルーズ船内で2人の中国人が新型肺炎の感染が疑われましたが、乗客は12時間の船上待機で下船になりました。クルーズ船の文化が根付いているイタリアでは、船内で感染症が起きた場合の検疫体制が確立しており、慣れているため短時間で対応できたのですが、日本はクルーズ船の検疫に不慣れ。それなのに『総理の決断で上陸させない』と船上隔離を決めてしまったのが間違いの始まり。
 新型肺炎は、医療知識の乏しい安倍首相が片手間で扱える問題ではない。思い付きで動くから混乱が長引く。船上隔離は船内の感染を拡大させることが海外の論文でも指摘されている。ダイヤモンド・プリンセス号も早く船上隔離をやめて乗員、乗客を解放し、病院や自宅などで経過を見るべきです」


■新型肺炎から国民の生命を守り、不安解消を図る考えはまるでない。
 要するに今回の水際対策は例によって安倍政権の「やっているフリ」なのだ。。
 大体、ダイヤモンド・プリンセス号が停泊している横浜港を管轄し、検疫について法的にも強い権限を与えられているのは横浜検疫所長だ。ところが、その横浜検疫所長は一切、公の場に姿を見せず、発言する場もなく、安倍や加藤厚労相ばかりが前面に出てきて「あれをやる」「これを決めた」と言っているからワケが分からない。恐らく国民に向けて「政治主導」や「やっている感」を演出するのに必死なのだろうが、明らかに現場の専門家を無視した越権行為だ。
 今の安倍政権の姿勢を見ていると、新型肺炎を冷静に分析し、本気で国民の生命を守るための対策を考えているというよりも、政権維持のために利用したり、問題を矮小化したりすることしか考えていないかのようだ。
 クルーズ船の感染者が確認された時の対応だって、加藤が会見で強調していたのは、クルーズ船の感染者と国内感染者を分けてカウントすることだった。夏の東京五輪を控え、国内感染者数が増えたら対外的に「都合が悪い」と考えたのかもしれないが、感染確認が上陸前か上陸後か、なんてどうでもいい話だ。人の命よりも自分たちのメンツが大事。そんな自己中心的で身勝手な政権に、新型コロナウイルスを抑えられるはずがない。
「ダイヤモンド・プリンセス号に乗船している外国人が、海外メディアに対して日本政府の対応を厳しく批判している様子が報じられています。東京五輪のイメージを最も損なっているのは他ならぬ日本政府自身なのです」(前出の上昌広氏)


■桜疑惑はアベ腐敗政治のすべての要素がある
「新型コロナウイルスの感染症対策などがある中で、こうした非生産的な、あるいは政策とは無縁のやりとりを長々と続ける気持ちは私は全くない」
 12日の衆院予算委。安倍は「桜を見る会」の前夜祭を巡る疑惑について取り上げた立憲民主党の黒岩議員に対してこう答弁。新型肺炎対策が後手後手になっているのは、桜疑惑を追及し続ける野党に原因があるかのような物言いだったが、冗談ではない。ウソとごまかしのペテン政権にマトモな政策が作れるはずがない。だからこそ、野党が「アベ腐敗政治」のすべての要素が盛り込まれた桜疑惑を問題視しているのに、新型肺炎を疑惑潰しに“悪用”しているから呆れてしまう。
 許し難いのは「火事場ドロボー」の動きだ。最たるものは「緊急事態条項」を新設するための憲法改正だ。伊吹元衆院議長が新型肺炎の拡大を「緊急事態の一つの例」として、「憲法改正の大きな一つの実験台」などとぶち上げたのが発端だが言語道断だろう。
 新型コロナウイルスによる肺炎感染の拡大が日本経済にとって「新たな景気へのリスク」と警戒感を示したIMF(国際通貨基金)が公表した年次審査報告書の提言だって、何やら日本政府の思惑を感じざるを得ない。というのも、このタイミングで<2030年までに消費税率を段階的に15%引き上げ>が明記されていたからだ。国内世論の反発を封じ込めるために外圧を利用するのは安倍政権の常套手段。IMFはこれまでも日本の消費増税について提言してきただけに、怪しい狙いが透けて見えるのだ。
 安倍は予算委で「正確な情報を発信し、国民の理解を促進していく」ともっともらしく答弁していたが、自民党内やネット上で散見される「中国叩き」の声をスルーしながら、よくぞ言えたものだ。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「安倍政権は憲法改正の口実に利用できるものであれば、何でも使おうとしている。新型コロナウイルス問題ではそういう姿勢が露骨に表れていると思います。国民の生命や財産を守る、不安解消を図る――など、まるで頭にないのでしょう。今のように新型肺炎が注目を集め、国民の危機感が高まるほど都合がいい。そんなふうに考えているように見えます」
 新型コロナウイルスの猛威拡大は、こうした邪な思惑を持った悪辣政権に対する天罰かもしれない。
(日刊ゲンダイ)
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