松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

サウジと日本…2人のパニくるヘボ政策責任者に要注意

      

浜矩子同志社大学教授
1952年、東京生まれ。一橋大経済学部卒業後、三菱総研に入社し英国駐在員事務所長、主席研究員を経て、2002年から現職。「2015年日本経済景気大失速の年になる!」(東洋経済新報社、共著)、「国民なき経済成長」(角川新書)など著書多数。       

       


 大きな一つの事象に人々の関心が集中すると、本来なら見落としてはいけないニュースがこぼれ落ちやすい。パンデミックが宣言された新型コロナウイルス禍の今、サウジアラビアが仕掛けた「石油戦争」がその一つ。サウジの大増産によって原油価格は大暴落、「久々の「オイルショック」が到来した感があります。
 1973年のオイルショックは、原油価格を牛耳っていた国際石油資本に対するアラブ産油国の逆襲でした。その後、世界は、こと原油に関する限り、OPEC(石油輸出国機構)のリーダーであるサウジに振り回されてきたのです。
 しかしながら、今やOPECの市場支配力も低下し、このところは、大産油国となったロシアに生産調整への協力をお願いして、原油価格の下支えを図るようになっていました。ところが、ロシアは生産調整にメリットなしと考え始め、ついに協力拒否に転じました。OPECに協力するよりも、自国の石油収入を増やす方向にかじを切り替えたのです。これにサウジが激怒して、「だったら叩きのめしてやる」と一転して大増産に打って出たのです。市場をサウジ原油であふれ返らせ、価格をロシア産原油が太刀打ちできないところまで引き下げて、ロシアを市場から追い出してしまおうという作戦です。目標達成のそのためには、サウジは在庫大放出さえいとわない構え。


■人類の危機においても「我がため、我がため」
 産油国間の力関係がこうも変化しているのかと改めて再認識させられました。それもさりながら、新型コロナ禍で全人類の危機だという時に、どさくさに紛れて石油戦争を繰り広げるとは何事かとつくづく思います。
 あまりに品位がない。サウジがそれだけ追い込まれていることの証左でしょうね。焦って、なりふり構わず状態になっています。そんなサウジを“お友だち”だと思っているトランプ米大統領も愚かですね。サウジは、ロシアのついでに、シェールオイル関連の米企業にも打撃を与えてやろうと思っているようですから。
 原油の価格決定力を失いかけ、パニックに陥るあまり、物事を深く考えずにドラスチックな行動に出る――。このサウジの動き方、チーム・アホノミクスの大将にそっくりです。コロナ対策が後手に回っていると非難されたら、専門家の意見を聞かずにいきなり小中高校を一斉休校にしてしまうとか、緊急事態宣言をやりたいがために、新型インフルエンザ等特別措置法の改正に前のめりになるとか。
 サウジのムハンマド皇太子とチーム・アホノミクスの大将は似たもの同士。政策決定権を持っている人たちは、この人類の危機において今こそ「世のため、人のため」を噛みしめなくてはいけないのに、この2人には「我がため、我がため」しかない。2人のパニくるヘボ政策責任者の行動には、今後も注意が必要です。
(日刊ゲンダイ)
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