Matsuo Atsuokiのブログ

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法、歌唱法。

国分博文著「アクート歌唱法の原理と実践」を読み解く 005

http://www.voglio.org/acuto.htm


前回でも述べましたが、従来の胸声の概念から離れないとアクートを習得できないと国分氏は繰り返し述べています。つまりアクートは男性の実声から生まれるものではないという考え方に基づかねばならない、という事でしょう。


アクートは地声の操作からは生まれません。胸声の延長では無いという認識から始めることが大切です。
アクートの原理は単純です!ジラーレしてキューゾした声帯の間を鋭く(アクート)息をパッサッジョ(通過)させる「声帯を鳴らす」技術です。「声で歌う」のではなく、「鋭く息を通過させ声帯を鳴らす」のです。ジラーレした裏声がなぜ力強いアクートに変わるのか!?先ず、ここから始めるのが一番の早道です。
 アクートは胸声の発声方法とは全く異なったプロセスで発せられる「音声」だという事実です、つまり、アクートは声では無いと言う事です!(アクート歌唱法の原理と実践より)


従来の様な男性の実声ではないとすれば、まず考えられるのがファルセットでしょう。しかしファルセットでは鋭い響きもビブラートも生まれません。
勿論テノールなど声帯の比較的短い歌手はやり方次第でいわゆるアペルトのまま胸声で高音域をカバーする事もできます。しかしこれではバリトン、バスのアクートの説明はつきません。



そこで第2回目にお話しした喚声点の表をもう一度見てみましょう。女性は胸声から喚声点を越えると自ずとファルセット、または頭声に移行しました。これは男性に比べると声帯の長さが2/3にも満たないことによる属性であろうと考えられます。そしてこの女声の裏声は声帯の使い方により、ファルセット(裏声)にも頭声にもなることが証明されています。
翻って男性の高音域に目を向けてみましょう。男性も声帯の短いテノールなどは実声のまま高音域をカバーすることもできますが、女声のような頭声を使うためにはパッサッジョを越えれば自ずと高音域へ移行できないのは男性の声帯の長さによる属性と考えることができましょう。しかし声帯靭帯を使えばファルセットは歌うことができますので、女声の頭声に準じて声唇(声帯筋)を使った新しい頭声が生まれるのではないかと考えたのが、アクートの起源ではなかったのでしょうか。
私も現在アクート唱法習得中ですので、この仮説以上、具体的に申し上げるわけにはいきませんが、論理的に考えても、アクートが女声の頭声のように、男声に於ける新しい形の頭声、つまり管楽器のハイノートのような力強い倍音によって成り立つものだという仮説を立てるのが最も整合性のあるロジックの立て方だと考えます。


アクートの原理は単純です!
ジラーレしてキューゾした声帯の間を鋭く(アクート)息をパッサッジョ(通過)させる「声帯を鳴らす」技術です。「声で歌う」のではなく、「鋭く息を通過させ声帯を鳴らす」のです。ジラーレした裏声がなぜ力強いアクートに変わるのか!?先ず、ここから始めるのが一番の早道です。
 アクートの原理は単純です、しかし残念ながら技術だけでは習得できないのがアクートです。何故ならアクートは歌い手の「琴線」の鼓動の延長だからです。歌手自身が「琴線」に触れずしてアクートどころか歌唱すらあり得ない!目は口ほどにものを言う、否、声は目ほどに透けて見えるものです。アクートなど聴かずとも「最初の一声」で如何程か透けて見える歌の怖さ!
声でどうにか、技術でどうにか、成るものでは有りません。その時「感じているか」で決まります。
 歌い手の「オーラ」と共にアクートの技術は研ぎ澄まされて行く様です。非常に感覚的ではありますが、声と歌のベクトルが同じ方向を向いているうちは、アクートは困難です。すなわち、声色の操作からはアクートは生まれないと言うことです。喉から声を外す術を知って初めてアクートは可能となります。(アクート歌唱法の原理と実践より)


19世紀半ば、ベルカントから派生したアクート唱法はたちまち全世界を席巻し、それ以降、テノールの高音域は勿論のこと男性歌手全体の高音域のあり方に革命を巻き起こし、今や男性の発声法の中枢を占めるに至りました。
翻って我が国のオペラ界の現状をみると、未だに男性歌手の大部分が実声のまま、高音域を歌い続けているのが現状と言えましょう。世界に於いてテノール歌手は勿論の事、男声の発声法はおしなべてアクートを習得するのが、スタンダードとされているにも関わらず、なぜ日本だけが世界に準ずることができないのか、それはひとえに日本の声楽界に於ける人材の不足に言及する必要があるのです。日本でアクートをこなせる歌手が少ないのは、アクートを教えられる声楽教師がほとんど居ないと言っても過言ではない現実があるからに他なりません。
この現実は男性歌手ばかりか、女性歌手の育成にも少なからず影響を及ぼしているのを危惧するのは私ばかりではありません。真の意味のベルカントやアクートを理解してこそ、現在欧米で行なわれている声楽教育の真髄が見渡せるのではないでしょうか。


五回にわたりアクート歌唱法の原理と実践を読み解いて参りましたが、現在82歳になる私の今後の目標となるアクート唱法の習得のためのメモとして、また現在の日本オペラ界の更なる発展のための礎として、皆様のご理解とご賛同を得られますよう、切に願う次第でございます。
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