松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

深刻なのは安倍総理のフェイクニュースを垂れ流すメディア

 


 安倍総理は4月13日に開かれた自民党役員会で、新型コロナウイルスへの対策について、「休業に対して補償を行っている国は世界に例がなく、わが国の支援は世界で最も手厚い」と語った。これは108兆円の経済対策について語ったものだが、この中の30万円の給付についても批判が相次いだことは既に説明する必要もないだろう。その4日後には1人10万円の給付を追加している。
 そもそも、「休業に対して補償を行っている国は世界に例がなく」というのは、事実なのか? ドイツのベルリンでオーボエ奏者として活動している渡辺克也氏に話を聞いたところ、「政府が補償を手厚くしてくれるので、安心して自宅にこもっています」と話した。ドイツの感染者数は日本の比ではない。渡辺さんの演奏は全てキャンセルとなっている。
 渡辺さんは30年前にドイツに渡り、オーケストラに15年間所属。現在はソリストで、税制上はフリーランスだ。ベルリン州に申し込んで2日後には5000ユーロが振り込まれたという。更に、オーケストラの組合から500ユーロ、著作権協会から250ユーロの寄付があったという。合計額は日本円にして、約70万円となる。「経済的な危機感はありません。あとは感染を避けるだけです」と話す言葉には余裕さえ感じた。
 その手続きについて尋ねると、「住所、マイナンバー、『不正はしません』『税務処理時に申告します』といった誓約7項目にチェックを入れるだけの、15分もかからない簡単なインターネットでの申し込み」だったという。ただ、すんなりとはいかず、「3月27日正午から申し込みが始まりましたが、サイトにつながらず待つこと30分。つながったら『あなたの前に2万人待っている人がいる』との表示が表れ、のけぞりました。順番が来たのは翌日夜でした」という程度の混乱はあったという。しかし、この程度は日本では「混乱」とは言えないだろう。
 渡辺さんは音楽家だが、別にこれは音楽家だけに対する補償ではない。JETROの資料によれば、これは個人事業主全般をカバーするものだ。1人事業者だと5000ユーロだが、複数だと増額されている。つまり、「休業に対して補償を行っている国は世界に例がなく」は事実ではない。加えて、「わが国の支援は世界で最も手厚い」も極めて怪しい。
 安倍総理は各国の補償についても把握しているはずで、これはファクトチェックの判定でいえば、事実でないと知りながら事実ではない情報を流すフェイクニュースだ。
 緊急事態宣言が出されているこの時、国のリーダーが最もやってはいけないことがフェイクニュースの拡散であることは言うまでもない。それにしても深刻なのは、総理のフェイクニュースをそのまま垂れ流すメディアだ。アメリカではトランプ大統領が記者会見で事実ではない情報を流すことが問題になり、CNNは会見の途中でも事実と異なる発言については「事実ではない」と指摘するようにしている。NHKも総理の発言を繰り返すだけの記者解説などやめて、CNNを見習ってほしい。
(日刊ゲンダイ・立岩陽一郎)
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