松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

右往左往の庶民 緊急宣言・解除は世にも陳腐な政治ショー

 


「日本は世界的にみても評価されていない」。元財務官僚でNY州弁護士の山口真由氏が18日の「モーニングショー」(テレビ朝日系)でこう断言していた日本の新型コロナウイルス対策。政府は21日にも、緊急事態宣言が続く北海道や東京、神奈川などの8都道府県の解除の可否について判断する方針だが、山口氏が指摘していた通り、政府の緊急事態宣言・解除は何から何までトンチンカン。世にも陳腐な政治ショーと言わざるを得ない。罪つくりなテレビ局の呼びかけで皆おとなしく我慢しているが、この“宣言”“解除”のおかしさは山のようにある。
 大体、緊急事態宣言とは従来の法体系に従っていたり、通常の行政対応では間に合わなかったりした場合に根拠や基準を示したうえで、緊急的に発令するものだ。
 それなのにピーク時にはさっさと出さず、解除はズルズル引き延ばしというのだから本末転倒だ。前新潟県知事で弁護士・医学博士の米山隆一氏がウェブサイトの「論座」(朝日新聞社)で解説していた通り、現在、公表されている新規感染者数はあくまで「報告日」で、感染症状が出た「発症日」ではない。米山氏によると、発症日ベースで見た場合、全国で流行のピークを迎えたのは4月1日で、東京都では3月30日にすでに頂点に達していたという。
 発症までの潜伏期間を考慮すれば全国的な感染ピークは3月下旬。そうであれば4月7日の最初の宣言自体が遅過ぎたとしか言いようがなく、さらに、その後の宣言地域の拡大や延長なんて愚の骨頂なのだ。


■欠陥法を逆手にとって対応を自治体に丸投げ
「解除」についても、政府は感染状況や医療提供体制などを踏まえて「総合的に判断する」とか言っていたが、要するに確たる根拠がないのだ。「10万人当たりの1週間の感染者が0・5人程度以下」を目安にする――というが、いまだに正確な感染者数が分からないのに目安も何もないだろう。
 結局、無意味にダラダラと引き延ばしているだけなのだ。
 ダラダラといえば、新型コロナの経済対策として政府が大々的に打ち出した、1人当たり一律10万円を支給する「特別定額給付金」も一体、どうなったのか。安倍首相は会見で「5月中の給付開始を目標」とか言い、宣言と同時に給付のはずが、解除後にもまだ金が来ない家庭がほとんどだ。
 そもそも、今回の宣言は、責任の所在が曖昧な新型インフルエンザ対策特別措置法をベースにしていることから、識者などからは「宣言は国、自粛・指示は知事、補償には歴然の差別がある」と問題視する声があった。財政的に余裕がある東京都は今回、自粛に応じた店舗などに協力金支給などの制度を整えたものの、財政が逼迫している他の自治体はそうはいかない。
 本来はそうした自治体間の差別、不平等をなくすのが国の役割なのに、安倍政権はそんな「欠陥法」を逆手に取り、宣言を発令しただけ。後の対応は自治体に丸投げして自己責任をあおっているかのような姿勢だから許せない。
 政治評論家の小林吉弥氏がこう言う。
「これまでは側近と呼ばれる取り巻きの言うことを聞いていれば政権運営できたのでしょうが、新型コロナ対策はそうはいかない。感染症対策、休業補償、経済対策に加え、終息後の対策と、中長期的にみて打つべき政策は多岐にわたります。しかし、側近政治に慣れてしまったためか、大局的な視点で政策を考えられないのでしょう。要するに戦略が何もない。だから、やることがチグハグで、その例が500億円近くかけても配布できない『アベノマスク』です。ほとんどドブに捨てたにも等しいマスクの予算を中小企業の家賃や大学生の学費などに充てたらどんなにいいことか。しかし、安倍政権にはそういう発想がない。もはや政治とは言えません」


■新型コロナと一緒に安倍コロナも封じ込める時
 支離滅裂なのは政府だけじゃない。国民に外出自粛や接触8割減を呼び掛けてきた政府の専門家会議も同じだ。とりわけ国民に対して恐怖と混乱を植え付けたのが、厚労省のクラスター(感染集団)対策班の一員である西浦博・北海道大教授だろう。西浦教授は4月15日、外出自粛などの対策を全く取らなかった場合、重篤な患者が国内で約85万人に上り、このうち約半数の40万人程度が死亡する恐れがあるとした試算を公表した。
 地方の市や町の人口が丸ごと消滅するような死者の数に衝撃を覚えた国民は少なくなかったが、なぜか、5月14日の一部解除について専門家会議から反対の意見は出なかったというから首をかしげてしまう。一体、40万人死者と脅した専門家はなぜ、解除に同意したのか。政府に忖度したのか、あるいは世論に押し切られたとすれば、学者としての矜持もへったくれもないだろう。
 本来、緊急事態宣言を発令した政府がやることはさっさと病院用地を収用して病床を確保することではなかったのか。
 宣言によって都道府県知事は病院開設のための強制的な土地収用が可能になり、欧米のように感染者の急増に備えた仮設テントや臨時の医療施設の設置ができたはずだ。ところが、政府は宣言発令後も動かず、いまだに「全国で5万床の確保を目指す」としていた病床の整備も進んでいない。これを政府の怠慢と呼ばずに何というのか。
 詰まるところ、政府が宣言しようがしまいが、何も変わらない生活様式であり、国民は外出自粛や休業でつらい思いや負担を押し付けられているだけだ。具体的かつ納得できる「出口」が政府から示されないのだから、もはやこれ以上の我慢は限界。NTTドコモの調査によると、39県で宣言が解除された初の週末(16~17日)、39県の9割近くの地点で前週の人出を上回り、好天に恵まれた日曜日は首都圏でも人出が増えたというのも当然ではないか。


■無能、無責任が露呈した政権、首相は害
 こうした人出の増加傾向について、西村経済再生担当相は17日のNHK番組で、「気が緩めば大きな流行をまた起こしてしまう可能性がある」などと危機感を示していたが、解除しといて「気の緩みに警戒して」なんて、これぞ二枚舌というものだ。
 この週末は人出が増えただけではなく、あちこちの商店街で営業を再開する飲食店がみられた。自粛を強要するばかりで何ら手を差し伸べることをせず、平然と弱者切り捨てを行う冷酷無比の安倍政権に対し、もはや従う必要なし――と判断したのだろう。朝日新聞の世論調査によると、安倍の新型コロナに対する指導力について「発揮していない」(57%)が「発揮している」(30%)を2倍近く上回ったが、結局、この政権の言うことは誰も信用していないという事実の表れだ。
 新型コロナ対策について国が事実上、傍観している間に中小零細企業はどんどん追い込まれており、東京商工リサーチによると、新型コロナの影響による企業倒産は全国ですでに150件に上る。政府は売り上げが前年同月比で半減した法人に200万円、個人事業主に100万円が支給される「持続化給付金」をアピールしているものの、申し込みが殺到して給付は6月にずれ込む恐れがあるというから、まるで現場を理解していない。こんないい加減な宣言、解除に振り回される中小零細業者の惨憺たる思いは想像に難くない。
 政治評論家の森田実氏がこう言う。
「ドイツのメルケル首相は会見で国民に協力を呼び掛けただけでなく、休業補償などの支給についても迅速に動きました。ところが、安倍首相は口先ばかりで何もしない。給付金だって、『やります』とは言ったものの、実際の支給は果たして何カ月先になるのか分かりません。要するに、やっているフリだけで、国民生活について真剣に考えていないし、理解しようともしていない。本当に許しがたい話です。都道府県の知事の方がよっぽど新型コロナ対策のために奔走していますよ。もはや、無能、無責任が露呈した政権、首相は国民にとって害であり、不要と言っていい」
 新型コロナと一緒に安倍コロナも封じ込める時だ。
(日刊ゲンダイ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◉Mazzuola Editore ダイレクトセール・松尾出版直販(送料無料)

http://mazzola-editore.easy-myshop.jp

◉Amazon
https://www.amazon.co.jp/美声を科学する-松尾篤興/dp/4990812808/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1521368401&sr=8-1&keywords=美声を科学する