松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

亡国官僚が跋扈 コロナで浮き彫りになった無能官邸の崩壊

 


 新型コロナウイルス対策をめぐり、政府が休業要請の全面解除に舵を切った直後、感染者が急増だ。14日、東京都で47人の感染が判明。1日当たりの新規感染者が40人以上となるのは先月5日以来だ。全国の新規感染者は75人に上った。
 そうした中、NHK「日曜討論」は出色だった。テーマは「社会経済活動 新たな段階へ」で、コロナ担当の西村経済再生相、双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦氏、日本総合研究所主任研究員の小方尚子氏らが出演。吉崎氏は故・野村克也監督が江戸時代の剣術の達人である松浦静山の著書から引き、よく口にしていた「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」を引き合いに西村にこう迫った。
「みんな納得していないんですよ。今の日本は不思議な勝ちですよ。1000人(弱)しか死んでいないのは奇跡的な成功だと思うけど、日本政府がスマートに見えたことはほとんどない」
「野村監督の真意は不思議の勝ちに満足してはいけないということ。なぜか、(安倍首相は)〈日本モデルを示した〉と言っているけど、今までの対応に対する事後検証をやってほしい。原子力災害の時に国会事故調をつくったように、第三者のオピニオンを聞きたい」
 西村は“勝ち”の要因を縷々説明したものの、「ご指摘のように第三者の目で見ていただきたい。もう少し事態が落ち着いてきたところでさまざまな記録を残して検証していただきたいと思います」と引き取るしかなかった。
 ようやく西村がコロナ対応の検証を言い出したが、官邸で“おしゃべり大臣”と呼ばれている男だ。話半分に聞いていた方がいいかもしれない。というのも、コロナ対策は安倍首相が公文書管理を徹底する「歴史的緊急事態」に指定したのに、政府を挙げて議事録作成を徹底拒否しているからだ。指定後、「政策の決定または了解を行う会議」は日時、場所、出席者、発言内容を記した議事録作成が義務付けられるにもかかわらず、だ。首相や全閣僚が出席する「対策本部」は発言者を特定した議事概要を公表するのみ。
 首相と関係閣僚、省庁幹部が協議する「連絡会議」は発言詳細を記録せず非公開。感染症専門家が議論する「専門家会議」も発言者を特定しない議事概要の公表にとどまり、医療、法律、経済の専門家が集まる「基本的対処方針等諮問委員会」は発言者を特定した記録の作成で取り繕おうとしている。国民に知られたらマズいことが山積みなのか。安倍政権の場当たり対応で国中が混乱に陥ったのに、政策決定過程を正確に検証できない可能性が大なのである。


■安倍政権に巣食い、肥え太る経産省
 260億円も投じて非難ゴウゴウのアベノマスク、相変わらずハードルが高いPCR検査、安倍が薬事承認に前のめりの新型インフルエンザ治療薬アビガン、小中高の一斉休校、コロナ禍で収入が減った事業者を支援する持続化給付金。何から何までデタラメの極みだ。
 エープリルフールに安倍が全戸2枚配布を発表したアベノマスクは、経産省出身の官邸官僚の「全国民にマスクを配れば不安はパッと消えますから」という進言で始まった。
 メーカーが求める国内検品を拒み、質より量を求めた結果、不良品が続出。回収が遅配に輪をかけ、15日配布完了の見通しだという。4月6日に「1日2万件」と豪語したPCR検査体制は5月中旬に整ったものの、実施は数千件で推移。いまだ累計33万件超だ。世界と比べて圧倒的に少ない検査件数について、政府・与党は「日本はSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)を経験していないから」と口をそろえていたが、自公政権下の2010年の段階で体制不備は問題視されていた。09年に猛威を振るった新型インフルエンザを受け、厚労省は翌年まとめた報告書に「保健所の体制強化」「PCR強化」を反省点として挙げ、「死亡率が低い水準にとどまったことに満足することなく、今後の対策に役立てていくことが重要だ」と書いていた。うっちゃらかして言い訳を並べていたのである。
 コロナ対応の首相会見7回のうち、安倍が5回も言及したアビガンは、富士フイルムホールディングスの子会社が開発。トップの古森重隆会長はアベ応援団のひとりだ。アベ側近の今井尚哉首相補佐官ら経産省出身者が音頭を取って経産省内に「アビガンチーム」をつくり、第1次補正予算に「アビガン・人工呼吸器等生産のための設備整備事業」として87・7億円を計上する用意周到さである。
 そして、国の事業に群がる電通や人材派遣大手のパソナなどが共同設立したトンネル法人を通じ、持続化給付金でボロ儲けしている疑惑だ。事務事業を769億円で受託した一般社団法人サービスデザイン推進協議会(サ推協)は20億円を中抜きして749億円で電通に再委託。電通は「管理・運営費」として104億円を抜き、5つの子会社に645億円で再々委託。子会社はさらに外注し、パソナに171億円、ITサービスのトランスコスモスに30億円、大日本印刷に102億円で再々々委託していた。「8次請け」まで委託費が流れたともいわれている。持続化給付金担当の中小企業庁の前田泰宏長官は17年の米国視察の際、現地で借り上げたアパートを「前田ハウス」と称し、連日パーティーを開催。誰がつけたか品性を疑うネーミングだが、そこには当時電通マンだったサ推協の平川健司業務執行理事も参加していた。2人の関係は09年以来だと国会で追及されている。


■無能な空洞首相を存分に利用
 電通が一般社団法人を通じ、経産省が関わる事業の事務委託や再委託を受けたのは19年度までの3年間で42件、総額403億円。サ推協からは6件、計62億円を請け負っていた。総事業費の2割に上る3095億円もの事務委託費が問題になった「Go To キャンペーン」の周辺でも同じ顔ぶれが蠢く。省エネに関する国の補助金交付事業を手掛けるため、電通がトランスコスモスなどと11年に設立した一般社団法人環境共創イニシアチブも公募前に経産省と事前協議。定款作成者名が経産省の内部部局なのもサ推協と同じパターンで、政権主流の経産省と電通の関係はズブズブとしか形容のしようがない。
 こうなったのは、思い付きの首相を忖度するか、前田ハウスと名付けて粋がっているような勘違い官僚が跋扈している結果だ。
 安倍のルーツや生い立ちをたどるルポルタージュ「安倍三代」などの著書があるジャーナリストの青木理氏は言う。
「安倍首相は一言で表すと〈空っぽ〉なんです。政治的にやりたいことは過去も、おそらく今もない。少なくとも学生時代に政治に関心を持った様子はなく、父親の安倍晋太郎元外相の後を長男が継ごうとしなかったので、次男にお鉢が回り、何となく政治の世界に入った。その一方で、敬愛する母方の祖父・岸信介元首相に対する思い入れは非常に深い。岸は商工省で革新派官僚として頭角を現し、先の大戦中に商工大臣を務めた時期もあった。岸に対する評価が不当に貶められたと考えている安倍首相は、その反発で祖父が成し遂げられなかった憲法改正にこだわってみせ、同様に祖父と関係の深い経産省に肩入れしているようにみえます。第1次政権ブン投げ辞任後に励まし続けたという今井尚哉首相補佐官との特別な信頼関係も作用し、経産省にとっては非常にくみしやすい存在なのではないか」
 浅薄な首相と亡国官僚。コロナ禍が浮き彫りにした無能官邸、無残な崩壊である。空洞首相に媚びへつらい、その無能ぶりを経産省は存分に利用してきたのだろう。立教大大学院特任教授の金子勝氏(財政学)はこう言う。
「いまや経産省は不要な官庁です。歴史的使命はとっくに終わった。『通産省の奇跡』ともてはやされた時代は高度成長期で企業の投資意欲が高く、通産省は調整に入ることで過剰投資による経営破綻を防ぐ役割を担っていた。その過程で産業分野ごとに業界団体と結びついて寄生する天下り体質が出来上がり、既得権益を必死で守るようになったのです。3・11以降、分散型エネルギーへの転換が世界の潮流なのに、原発事業に固執するのもそう。技術開発を妨害するため、日本は世界的な産業構造の変化に追いつけなくなっている。その一方で、出先機関が少ないのをいいことに企業に巣食い、不要なカネをバラまいて肥え太っている。解体しないと日本経済はどんどん悪くなる」
 対処法はただ一つ、安倍退陣以外に道はない。
(日刊ゲンダイ)
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