松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

オリンピック中止で辞職し「国政復帰」というシナリオ

  


 現在、都庁で小池知事の周囲をがっちり固めているのは、いわゆる財務局主計部出身の都庁官僚たちである。
 副知事、秘書担当部長、さらには引退同然の身から引き戻された特別秘書も全員が全員、主計部出身者だ。国でいえば財務省主計局のキャリア官僚ということになる。
 政策企画局、総務局、財務局のことを都庁では官房3局と呼ぶが、中でも財務局は一般会計予算7兆円を差配する都庁の大番頭だ。歴代副知事を見てみても、主計部長経験者、財務局長経験者が大半を占めている。
 そんな都政を熟知する彼らは小池知事の疑問・質問に即応し、解決策の道筋を示すことができる。加えて、打ち出の小槌よろしく、膨大な予算を右から左に動かすことも可能なのだ。小池知事にとってこれほど頼もしい側役人はいないだろう。だが、我が世の春を謳歌する主計部出身者らの前途に今、暗雲が立ち込めはじめた。
 休業要請と引き換えにいち早く協力金という名目の補助制度を打ち出せたのは、全国の自治体がうらやむ潤沢な財政状況を誇る東京都だからこそだ。過去に何度も財政危機に陥った都庁は、平成の30年間を通じて借金の返済と貯金の積み増しを地道に続けてきた。
 法人税の順調な推移も手伝って、財政調整基金は9千億円以上に積み上がった。
 しかし、新型コロナで状況は一変。同基金は1割以下に目減りし、第2波襲来時には手元の金で協力金を支払うこともままならない。法人税頼みの都財政は景気の影響をもろに受ける。1年後、2年後、税収が激減するのは必至だ。さらにオリンピックは開催されても中止になっても地獄が待っている。簡素化したからと言って、コストが純減するとは限らない。追加負担やコロナ対策による出費を加味すれば負担増は明らかだ。もし、中止となっても既に支出された費用は回収できず、経済への影響も小さくないだろう。
 今後、コロナ・減収・オリンピックの三重苦が都庁を襲う。残された手段は都債発行という借金頼みしかない。この難局を主計部経験者らはどう乗り切るのか、注視しなければならない。


■任期全うか国政進出か
 1期目の小池知事はラッキーだった。都庁の懐具合を心配しなくても良かったからだ。しかし、これからの4年間は違う。事業縮小とリストラの矢面に立たされる。パフォーマンス政治の第一人者としてはやりがいがないことこの上ない。そのせいもあって、小池知事の国政進出の噂は絶えない。3年前の「希望の党」騒動以降、しばらく鳴りを潜めていたが、新型コロナ対応をめぐる国との対立構造や、歴代2位の得票数を得た都知事選の結果によって再び噂に尾ひれがつき始めた。
 都庁OBとしては、とっとと国政に復帰していただいたほうが都庁にとっては慶賀に堪えないのだが、それでは厄災が日本中に拡散されるだけである。
 2期目4年間、都知事を勤め上げた場合、小池知事の年齢は70歳を超える。そんな時まで都知事の椅子に座り続ける小池百合子氏を想像するのは難しい。再選を果たした現在、小池知事は知事を辞して国政に打って出るもっともらしい理由を必死に模索しているのではないか。一番考えられるのは、延期された東京大会が結局開催できず、開催都市の長として責任を取って辞職するというシナリオだ。
 これなら大義名分が立つ。だが、状況を自らコントロールできない。安倍首相に先に衆院を解散されてしまえば元も子もなくなる。それゆえに、意図的にコロナを拡散させて解散できなくしているのではないか、などという不謹慎な憶測さえ飛び交っている。
 いずれにしても、小池百合子氏ともあろう人が2期目を全うするとは到底思えない。それは権力のための権力を追い求めてきた彼女の生き方に照らせば自然に導き出される結論である。
 小池百合子最終章の幕はもう上がっている。舞台は都庁、冬の時代へと照明は暗く落とされている。足元にはコロナ禍の底なし沼が口を開け、舞台後方にはうっすらと国会議事堂らしき建物のシルエットが見えている。(おわり)
(日刊ゲンダイ・澤章)
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