松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

景気指標次々悪化 “改憲政治ショー”にかまけている場合か

 


「諸悪の根源」である張本人が寝言を言っているとしか思えない。おととい(1日)、東京都内で行われた自衛隊記念日の会合で「公的機関の信頼度調査では、日本で最も信頼されているのは自衛隊だ。残念ながら、一番信頼されていないのは国会議員だ」とあいさつした安倍首相。読売新聞によると、安倍は〈自嘲気味に語って、笑いを誘った〉らしいが、国会議員が信頼されていないということは、政治が信頼されていないのと同じ。普通の感覚であれば、一番信頼されていない国会議員のトップに立つ首相として恥ずべき話なのに、あろうことか笑いを誘った、というから開いた口がふさがらない。
「私か妻が関わっていたら総理も国会議員も辞める」「加計学園の獣医学部計画を知ったのは2017年1月20日」と大ウソをついたモリカケ問題をはじめ、「福島第1原発はアンダーコントロール」「2年で2%のインフレでデフレを脱却」「アベノミクスは景気回復と財政再建の二兎を追う」「裁量労働の方が労働時間が短いというデータもある」……など、これまで、国民に対してありとあらゆるウソをつき続けてきたのは他ならぬ安倍本人ではないか。
 さらに安倍の場合、ウソに加えて態度も最悪だ。選挙演説で聴衆を指さして「あんな人たち」と呼び、悪いのは国民だと言わんばかり。自分の言動を少しも省みようとせず、国会では異論を唱える野党議員にヤジを飛ばしたり、無視するそぶりを見せたり。国会議員というよりも、人間として全く信頼できない。
■「幅広い合意」と「国民議論」で改憲はウソ
 そんな男が臨時国会の所信表明演説で「国民とともに新しい国づくりに挑戦する」とか言って口にしたのが憲法改正だ。
「国の理想を語るものは憲法です。憲法審査会において、政党が具体的な改正案を示すことで、国民の皆さまの理解を深める努力を重ねていく。そうした中から、与党、野党といった政治的立場を超え、できるだけ幅広い合意が得られると確信しています」
「そのあるべき姿を最終的に決めるのは、国民の皆さまです。制定から70年以上を経た今、国民の皆さまと共に議論を深め、私たち国会議員の責任を、共に、果たしていこうではありませんか」
 国民に最も信頼されていない男が「責任を果たす」とはよくぞ言ったものだが、相変わらず口先だけだろう。
 衆参両院の代表質問で、野党から改憲発言は憲法99条の「憲法尊重擁護義務」に違反する、と追及されると、「99条は憲法改正について検討し、主張することを禁止する趣旨のものではない」と感情ムキ出しで反論。とてもじゃないが、与野党間で「幅広い合意」をする姿勢には見えなかったからだ。
 日経新聞の世論調査で「改憲反対」が4割近くに達しているのに改憲に前のめりになっているのも、「国民の皆さまと共に議論」を深めるつもりがない表れ。誰が何と言おうとオレがやりたいからやる――というワガママなガキと同じ。モリカケでも問題視されたが、これぞ究極の「政治の私物化」だ。政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「安倍政権があおってきた朝鮮半島危機は収束しつつあり、改憲の意味も薄れている。にもかかわらず、こだわるのは、財閥に押されて突っ走った戦前の軍部のように、経団連などの大企業が後押ししているからではないか。つまり、米国と同様、政権を操り、儲けたい日本の軍産複合体の存在があり、金儲けのためなら、世論など関係ないと考えているのでしょう」
■世論無視で改憲に突き進む姿はインパール作戦の旧日本軍と一緒
 国民が望んでもいない不要不急の改憲にこだわる安倍の姿勢はマトモじゃないが、もはや、それしか政権の求心力を維持する手段がないからだろう。連立を組む公明党はもちろん、自民党内でも足並みはそろっていない。具体的な改憲案を国会に提出するのは不可能だ。それでも「ヤル、ヤル」と言い続けているのは、そうしないとネトウヨらの支持が得られなくなるからだ。
 各メディアの調査で支持率は5割を切って下落傾向にあるから、「改憲ヤ~メタ」と言った途端、退陣しかない。来年11月の歴代内閣最長となる首相在任記録も夢のまた夢。年内すら持たないかもしれない。
 だが、こんな身勝手な理屈で“改憲政治ショー”を見せられる国民はたまったもんじゃない。内政も外交も眼前には深刻な危機が目の前に迫っているからだ。
 最近はめっきり口にしなくなった「アベノミクスの成果」。これまでは株高を強調していたが、米国の株価下落で伝播した世界同時株安によって急降下。10月の日経平均株価は月間で2199円58銭(9.1%)安となり、下落幅はリーマン・ショック直後(2008年10月)以来、10年ぶりの大きさとなった。
 きのうは、米中貿易戦争の激化が回避されるとの観測が広がり、前日比556円01銭高となったが、結局、日本株は世界マネーの動向次第。「アベノミクスの成果」でも何でもないことがバレたワケで、IMF(国際通貨基金)は米中貿易戦争が長引けば世界景気は19年以降、最大0.8ポイント下振れすると警告しているから、日本株もこの先、どうなるか分からない。
■公約違反しても「新しいお約束」と開き直る愚
 株安の“震源地”となった米国との関係も暗転している。何と言っても注目は来年1月にも始まる新たな通商交渉だ。
 日本は農産品などの関税については、TPPなど過去の貿易協定を「最大限」としている。だが、パーデュー農務長官は日欧EPA以上の関税引き下げを目指すと明言していて、日本が大幅譲歩を迫られるのは間違いない。さらにムニューシン財務長官は通貨安誘導を禁じる「為替条項」をねじ込む気マンマン。導入されれば日銀の異次元緩和はオシマイ。あっという間に「円高、株安」が進んで外需に頼ってきた輸出企業もフラフラになるだろう。内需も不透明だ。日銀は18年度の経済成長率見通しを1・5%から1・4%に引き下げたが、来年10月は消費増税があるから、タダでさえ落ち込むとみられている景気がますます冷え込むのは避けられない。
「未来を担う子どもたち、子育て世代に、大胆に投資していく」。安倍は所信表明演説でこうも言っていたが、13年にブチ上げた公約の「待機児童ゼロ」は一体どうなったのか。「インフレ目標2%」と同じで実現せず、達成時期がズルズルと先延ばしされている。一事が万事、この調子で、野党に「公約違反」と突っ込まれると、シレッとして「新しいお約束」と開き直る始末だ。これをペテンと言わずに何と言うのか。「改憲」なんて論外だろう。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。
「安倍さんは立党以来の党是である改憲を言い続けないと、自身の存在価値がなくなると考えているのでしょうが、世論そっちのけで突き進む姿は(無謀な作戦で多くの犠牲者を出した)インパール作戦を指揮した旧日本軍のよう。このままだと国民生活はメチャクチャになりますよ」
 国民を戦争の惨禍に引きずり込んだ旧日本軍の幹部は戦後、責任逃れに終始したが、ウソつきの安倍もまた同じ。早く辞めさせないと、この国、国民はオダブツだ。
(日刊ゲンダイ)
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