松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

黒い星から来た歌手達 第10回 フルートは上達するが、歌はなぜ上達しない?


私が投稿しているブログに「フルートは上達するが、歌はなぜ上達しない?」というタイトルの投稿が眼につきましたので、早速眼を通してみました。
矢張りと言おうか、当然の事と言おうか、その原因は習得するメンバーの年齢層に結論を見出していました。器楽の受講者は若年層だが、歌の受講者は高齢者が多い、従って高齢者が多い歌の受講者は上達が遅いというのです。
またメソッドの違いにも言及しています。器楽の教則本はシステマティックで順序よくさらっていけば上達できるようになっているが、歌の場合、先生の趣味に合わせた楽曲をさらうので教則本というものは無いのが原因だと。
更に歌の先生には公的な資格が無く、教師自身の資質にも問題があるので、良い先生に巡り合う事が必須の条件だとも述べています。そして最後に「私は実に恵まれていると思ってます。私は毎年毎年着実にフルートも歌も上達しています。フルートは器楽だから上達は当然としても、歌が上達している事は、実に稀有なことなのだなあと、最近は思ってます」そして「キング先生時代は(今なら分かりますが)私も上達していませんでした。いやむしろ、最後の頃は入門時よりも確実に下手になっていました。笑っちゃうね。以前、妻と「あの時、あのままキング先生に習い続けていたら、今頃どうなっているだろうね」と話したことがありますが、その結論は「今頃は声を壊して歌を辞めているはず」となりました。うん、さもありなん」と結んでいます。
一見的を得た論理の展開の様に見えますが、ここには大きな落とし穴があるのを見落としてはなりません。先ず歌の受講者は年齢層の問題ではなく、自分自身の身体が楽器として成り立つような訓練を迫られると云う事です。往々にしてアマチュア演奏家は歌を習っているのだから、そのうち声も良くなるだろうと多寡を括っています。そこには自分の身体を立派な楽器に仕立て上げようと云う意欲は微塵も感じられません。歌を習うと云う事は自分の身体を立派な楽器に仕立て上げた上に歌の歌い方、つまり発声法と歌唱法の二足の草鞋を履くことが、教師と受講者の共通認識でなければ、全ては始まらないのです。
第二に教則本は歌にも沢山あります。コンコーネだけでも50、25、40、15番、サルバトーレ・マルケージ、マチルデ・マルケージ、パエールとロッシーニの声楽教本、パノフカ、ヴァッカイ声楽教本、トスティ50番などなど。ただこんな教則本からはじめたのではアマチュアは即座にこの教室を辞めるでしょう。私は歌を楽しみたいのであってプロになるつもりはないのです、と云うに違いありません。
更に公的は資格が無いのは歌の先生ばかりではありません、器楽の先生も作曲家も指揮者も演出家も公のライセンスは無いのです。
そしてあなたがフルートも歌も着実に上達しているのは結構な事ですが、以前教えを乞うていた先生を名指しで誹謗するのは如何なものでしょう。ネットと云うものは瞬く間に全世界を駆け巡る、ある意味言葉の凶器としての役割の一端を担う配慮が必要だと考えます。あなたが以前の先生から受けた指導法が全くとんでもないものだった、と実証できれば良いのでしょうが、営業妨害として訴えられたら反論に手子摺るでしょうね。
最後にもう一度述べますが、歌を習うには自分の身体を立派な楽器に仕立て上げた上に歌の歌い方、つまり発声法と歌唱法の二足の草鞋を履くことが、教師と受講者の共通認識でなければ、全ては始まらないのです。これはアマチュアもプロフェッショナルも何ら変わりのない世界共通の常識なのですよ。
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