松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

ムスリム女性議員の殺害を呼び掛けるようなヘイト投稿をしてもトランプのツイッターはなぜ止められないのか


<イスラム教徒の新人女性議員の映像とテロ映像を組み合わせて投稿>


ドナルド・トランプ米大統領が、民主党のイルハン・オマル下院議員のスピーチ映像と2001年の9.11同時多発テロの映像を組み合わせた動画をツイッターに投稿したことで、オマルのもとに殺害予告が多数舞い込んでいる。
オマルは昨年の中間選挙で、ムスリム女性初の連邦議員に選出されたばかり。反ユダヤ主義的な投稿で謝罪を迫られたこともあるが、9.11テロと関連付けるようなメッセージはイスラム教徒のオマルにとって危険極まりない。女性主導の人権団体「ウイメンズ・マーチ」はツイッターに対し、トランプのアカウントを凍結することを求めた。
トランプが問題のツイートをしたのは4月12日。カリフォルニア州で先月開かれた米イスラム関係評議会(CAIR)のパーティーでオマルがスピーチする映像を引用した動画を投稿。オマルが「CAIRは9.11テロの後に創設された。なぜなら『誰かが何かをした』ことを認識したからだ」と語る様子に、ワールドトレードセンターと国防総省に飛行機が突っ込む映像が組み合わされ、「われわれはけっして忘れない!」と書いてある。
オマルの言葉は文脈から切り離されて引用されたもので、実際には「2級市民という不快な状況の中で私たちはあまりにも長く暮らしてきた。正直なところ、私はそんな状況にうんざりしている。この国のあらゆるイスラム教徒もうんざりしているはずだ。......CAIRは9・11テロの後に創設された。なぜなら『誰かが何かをした』ことを、そして私たちすべてが言論や集会の自由へのアクセスを失い始めていることを認識したからだ」
アカウント停止求める署名に1万人が賛同
CAIRの設立は実際には1994年だが、活動が活発になったのは同時多発テロ以降のことだ。
ウイメンズ・マーチはツイッターに「トランプはヘイトスピーチをばらまき、オマルに対する本物の暴力を教唆するプロパガンダ動画をシェアしている。われわれは(ツイッターCEO)ジャック・ドーシーに対し、トランプのツイッターの利用を停止するよう求めている。真面目な話だ。」と投稿し、「トランプのフェイスブックとツイッターのアカウント停止」を求める署名への参加を呼びかけた。
この署名はフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOとツイッターのドーシーに対し「トランプのヘイト動画を削除するとともにアカウントを恒久的に停止する」ことを求めるもので、これまでに1万人を超える賛同者が集まっている。署名サイトの説明文にはこう書かれている。「トランプはオマル下院議員のアメリカに対する忠誠心を疑うようなプロパガンダ動画をシェアし、同議員に対して卑劣で無責任な攻撃を行った。これは危険で前例もないことだ。米大統領が黒人イスラム教徒の現職議員(オマルのこと)に対する暴力を教唆してその命を危険にさらす中、オマル議員は数え切れないほどの殺害の脅迫を受けている」
ナンシー・ペロシ下院議長やアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員、バーニー・サンダース上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員ら一部の有力民主党議員は、トランプの動画を強く批判している。
「連邦議会議員は大統領のあからさまな攻撃に反応する義務がある。オマルの生命は危険にさらされている。議員の1人が明らかな標的として危険にさらされていることに対して同僚議員が沈黙するなら、それは共犯に等しい」とオカシオコルテスはツイッターで述べた。「私たちは声を上げなければならない」 
ペロシも4月14日、声明を出し、トランプに「危険な」投稿を削除するよう求めるとともに、オマルの身の安全を図るために警護を強化したことを明らかにした。「オマル議員と家族、スタッフを守るために議会警察が安全評価を行っている。議会警察は議員が直面する脅威に対応するだろう」とペロシは述べた。
「大統領の言葉は非常に大きな重みを持つ。そして大統領の扇動的なヘイト発言は本物の危険を作り出す。トランプ大統領は自らの無作法かつ危険な動画を取り下げなければならない」
利用規約と「公人発言」のはざま
トランプは4月13日、この動画を自らのツイッターの一番上に固定し、14日にはリツイートしたものの、夕方には固定を外した。だが問題の動画の削除はしていない。
4月14日、オマルは自身のツイッターで、トランプのツイートが出てから「殺すという脅迫のツイートが増えている。多くは大統領が流した動画に呼応したものだ」
もし一般人がこんな脅迫を煽るツイートをすれば、ツイッターはすぐさまそのユーザーのアカウントを凍結するだろう。では、トランプのツイッターはなぜ生きているのか。
トランプのツイートがツイッターの利用規約に違反しているとの批判は以前からあるが、ツイッターはこれまで、トランプのアカウントに対して何の対応も取ってこなかった。
昨年1月の公式ブログで、同社はトランプを名指しはしなかったものの、世界のリーダーに一般ユーザーと同じ基準を当てはめない理由についてこう説明した。
「世界のリーダーをツイッターからブロックしたり、議論の的となっているツイートを削除したりすることは、人々が見て議論することがすべき重要な情報を隠すことになるだろう。それは当該のリーダーを黙らせることにはならず、彼らの発言や行動を巡る必要な議論を明らかに妨げてしまうだろう」
昨年8月のバズフィードとのインタビューで、ドーシーは公式ブログとほぼ同じ主張を繰り返す一方で、一般市民への攻撃は許容しないとの見方を示した。
指導者攻撃は民主政治のために放免し、一般人攻撃は許さないという二重基準は、慎重に考えて作られたものなのか。本当は、世界が注目するトランプというドル箱を失いたくないだけではないのか、もっと詳しい基準の説明が待たれる。
(Newsweek 翻訳:村井裕美)
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