松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

平成と令和 それぞれの天皇の「憲法観」の違いに注目を


 新天皇の即位後朝見の儀の「おことば」には所信表明のような趣がある。ここに盛り込まれた内容が、いわば入り口のような役割を果たす。それだけにどのような方向の天皇を目指すのかが述べられているようにも思える。
「科学技術」「グローバリズム」に向き合う令和という時代は、人類史の上では価値観の変化が激しい時代になると予測される。それだけにどのような姿勢が求められるかは、この時代に生きる人々全体に問われることでもある。おことばはそうした変化に答える内容も持っているように解せられる。
 たとえば「自己の研鑽に励む」や「重責を思うと粛然たる思い」といった表現には、課せられた役割をしっかり果たしていこうとの強い自覚がうかがえる。自問自答をされていると言えるのかも知れない。
 さらに平成の天皇は、日本国憲法を具体的に守り、責務を果たすと約束をしたが、新天皇は「憲法にのっとり」という具合に述べて、日本国憲法とは明示していない。そのことをどう考えるべきかと、メディアをにぎわせた。確かに平成の天皇の「おことば」と比べると、わかりづらい点がある。
 私は、この朝見の儀のおことばが5月1日であることに注目すべきだと思う。3日は憲法記念日である。護憲派、改憲派のいずれにも利用されたくないとの判断から、「憲法」という語を用いたのかもしれない。同時にこの語には、もう一つの意味も考えられる。それは戦争体験の有無である。
 平成の天皇の「日本国憲法を守る」は、戦争体験と深く結びついている。12歳で終戦を迎えた平成の天皇は、戦争の記憶が鮮明である。その記憶は、軍事と結びついた旧憲法に対する現在の憲法という意味に解することができる。戦争を媒介にしての憲法観である。
 ところが新天皇にはそのような憲法観はない。たしかに世代的にも当然である。その差とも言えるだろう。この憲法観が今後、政治的に利用されることもありうる。注目しておくべき点かもしれない。令和という時代は時代そのものが、憲法観を問う時代になるのかも知れないからである。
(日刊ゲンダイ・保阪正康)
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