松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

国民の約7割は貯蓄額が2000万円以下という厳しい現実


「国民の老後が極めて厳しいことになる」。金融庁審議会のワーキンググループ(WG)がパンドラの箱を開けた。
 WGの報告書によると、高齢夫婦で無職世帯の平均的な姿は、実収入が月21万円弱で支出は約26万円。つまり、赤字は約5万円となり、これを金融資産で補填する場合、20年で約1300万円、30年で約2000万円の取り崩しが必要になる、という。
 この結論の基礎部分は、これまでも指摘されてきたが、麻生大臣が受け取りを拒否したことで、国民の関心が一気に高まった。
 安倍首相は激怒して「金融庁は大バカ者」と声を荒らげたといい、さらに「あたかも一律に老後の生活費が月5万円赤字になるとしたことは、国民に誤解と大きな不安を与えるもの。高齢者の実態はさまざまで、平均での乱暴な議論は不適切であった」と釈明した。
 しかし、「平均」でなく「個別」で見れば事態はますます深刻な状況になる。
 PGF生命(プルデンシャルジブラルタファイナンシャル生命保険)が発表した「2019年の還暦人に関する調査」によると、現段階の貯蓄金額(配偶者がいる場合は夫婦2人分)は次の通りだ。
「100万円未満」が4人に1人(24.7%)で、「100万~300万円未満」は11.3%、「300万~500万円未満」は6.3%、「500万~1000万円未満」は11.1%。「1000万~1500万円未満」は10.4%、「1500万~2000万円未満」は3.5%。
 つまり、約7割の層は2000万円以下の貯蓄しかないのだ。
 安倍首相は平均値の議論は乱暴としているが、貯蓄金額が「100万円未満」「100万~300万円未満」「300万~500万円未満」の国民は生活水準を落とす以外にどういう展望が描けるというのだろうか。
 安倍首相は「金融庁は大バカ者」と断じたらしいが、報告書を書いたのは審議会WG委員である。座長は神田秀樹・学習院大学大学院教授で、委員はそろって東大大学院教授の加藤貴仁、神作裕之、福田慎一の3氏、黒沼悦郎・早大教授、駒村康平・慶大教授など著名な顔ぶれである。
 社会が学者に求めるのは、政権に隷属することではない。自己の学識を示し、日本を正しい方向に導くことだ。学者が誇りを失い、学畜になれば日本社会はますます危うい方向に進むことになる。
(日刊ゲンダイ・孫崎享)
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