松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

「数だけ」「金だけ」はN党だけか 国会議員の卑しい品性

 


 参院選が終わってまだ10日なのに、永田町で次から次へ、唖然とすることが起きている。
 比例区で1議席を獲得した「NHKから国民を守る党(N国)」に、日本維新の会を除名になった丸山穂高衆院議員が入党すると表明した。丸山といえば「戦争をしないと北方領土を取り返せない」と発言し、辞職を求める糾弾決議を受けた問題議員だ。ところが、N国の立花孝志代表は丸山について、「犯罪をしたわけでもない。糾弾決議を出されても辞めない丸山議員の考えや精神力を高く評価している」と言うのだから絶句である。
 N国は受信料を払った人だけがNHKを視聴できるようにする「スクランブル化」が唯一の主張だが、政見放送ではNHKアナ同士の不倫報道に言及して「路上カーセックス」と連呼。あまりの異様さが逆に話題になり、ユーチューブで300万回以上再生された。
 要は、炎上商法で集票したトンデモ政党と戦争肯定のトンデモ議員が一緒になるということ。“ゲテモノ政治”極まれりである。
 これだけでも驚きなのだが、30日に第1次安倍内閣で大臣経験まである渡辺喜美元行革担当相が参院でN国と統一会派を組むと記者会見したから、頭がクラクラする。
 渡辺は2009年に自民党を離党した後、「みんなの党」を結党。第三極の改革政党としてそれなりの存在感を示したものの、自身の8億円金銭スキャンダルで党は崩壊。14年の衆院選で落選した。16年の参院選におおさか維新の会から比例で出馬し当選。政界復帰を果たしたものの、17年の都議選で小池百合子都知事と連携したことで維新を除名になり、今は無所属のはぐれガラスだ。
 渡辺は立花と統一会派を組みながら、「NHK改革については深く考えたことはない」とシレッと言ってのけ、そのくせ会派名は「みんなの党」で、「やり残したことがたくさんあるので、みんなの党を復活させたい」と言う厚かましさ。政策そっちのけの数合わせを臆面もなくさらけ出すのである。
「主義主張が違うのに一緒になるのは、目先の利害が一致しただけ。ご本人(渡辺)は夢を追いかけているのでしょうが、政治は互助会活動ではありませんよ。安倍政権が進める改憲にいっちょ噛みして、自民党に近づきたいんじゃないですか」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
 それは、比例区で3議席しか取れず、改選議席を減らした国民民主党も同様だ。選挙直後から、あり得ない行動に出ている。参院幹部が“改憲勢力”の日本維新の会に統一会派を打診したと日経新聞に報じられた一件だ。
 国民民主関係者によれば、党の役員会で増子輝彦幹事長代行が「参院で野党第1会派を取りにいく」と発言、維新との統一会派を主張したという。
 ネット番組で「私、生まれ変わりました。我々も改憲議論は進める」と発言して物議を醸した玉木雄一郎代表もそうだが、国民民主は選挙で野党の一員として「改憲勢力」と対峙しておいて、選挙が終われば“ゆ党”に変心、政権にすり寄るのか。同根である立憲民主党への対抗心や党の存在感が希薄化する焦りむき出しの妄動。その裏には、当選すればこっちのもの、有権者なんて関係ない、というホンネがあるのだろう。
政治評論家の森田実氏が言う。
「政治をやる人間は一定の礼節と品格を持っていなければ務まりません。渡辺氏は長く政治に関わりながら、それを失ってしまった。恥ずべき行動です。国民民主党にしても、安倍政権が改憲勢力の3分の2議席を得られなかったのは有権者が改憲を望んでいないという審判なのに、玉木代表の発言はクレージー。理想や信念、誇りを持っていないのなら、政治家を辞めた方がいい」


*法律にふれなきゃ、政治倫理なんてクソ食らえ
 N国が国会で人数集めにこだわるのは、すでにクリアしている「国政選挙で得票率2%以上」という政党要件とは別に、「国会議員5人以上」という政党要件も満たすことによって「NHKの日曜討論に出たい」からだという。あの真面目な政治討論番組で「NHKをぶっ壊す」と発言すればインパクト絶大だろうが、もうひとつは「金」目当てとみられている。
 政党として認められたN国は政党交付金を受け取れる。試算では5900万円(2019年分)だが、所属議員が増えれば交付金も増える。その額は議員1人当たり年間2000万円。会派には所属議員1人当たり年間780万円(月65万円)の立法事務費も支給される。立花は「議員1人当たりの分は所属議員に渡す」と言っているから、政党とか統一会派とはいえ、個人商店で好き勝手やれるわけだ。29日の段階で「すでに12人に声を掛けた」というから、今後もカネに目がくらんでN国へ転ぶ議員が出てきてもおかしくない。
 ちなみにN国はここまで躍進するにあたって、地方選にジャンジャン候補者を擁立、現在27人の地方議員が所属している。本紙の連載<NHKから国民を守る党の内幕>でフリーランスライターの畠山理仁氏が明かしたところによれば、立花は自身も務めていた地方議員職について「そりゃあもう、おいしい仕事ですよ!」とアッケラカンと語っていた。そうやって集めた議員のひとりは、「朝霞市議より柏市議の方が歳費が高い」と任期途中で辞任したという。
 要は、法律に触れなきゃ何をやってもいい。政治倫理なんてクソ食らえ、ってことだ。前出の角谷浩一氏は、「もはや国会議員は猿でもできることが分かった。こんなの政治じゃない」とバッサリだったが、本当にその通りで、暗澹たる気持ちになる。


*民主主義の深刻な危機
 もっとも、国会議員なんてしょせん、そういう人種ばかりなのかもしれない。今年2月1日付の本紙インタビューで、1998~2004年に参院議員を1期務めた俳優の中村敦夫氏がこう話していた。
<政治が頑張らなければダメなんだけど、そう思って政界に飛び込んでみたらとんでもない世界だったのは事実です。みんな就職のために議員になるんだな。票になるなら何党でも構わない、次に当選できるのであればどこでもいい。そんな議員が9割ですよ。与党も野党も>
 国会に緊張感をもたらしたいと「れいわ新選組」を立ち上げた山本太郎代表も中村氏と同様に国会議員のさもしい本性を見たようで、本紙のインタビューに<国会の中はものすごくシンプルで、カネがあるか、票があるか、自分が次も議員でいられるか、が一番重要なんです>と語っていた。
 国会議員は選良なんかじゃない。国民のための政治など眼中にない。「今だけ」「当選だけ」「金だけ」「数だけ」の卑しい品性。エセ民主主義が完全露呈した野蛮国家の政治の貧困をここまで見せつけられると、もはや諦めるしかないのかと思えてくる。聖学院大教授の石川裕一郎氏(憲法)がこう言う。
「投票後にこうした訳の分からない動きがあると、有権者は今後、何を基準に投票すればいいのか、何も信用できなくなる。今回の参院選は50%を切る低投票率でしたが、『当選してしまえばこっちのもの』という国会議員の姿を見せられ、有権者はニヒリズムに陥り、ますます政治離れを起こす。民主主義の危機だということを、与野党ともに国会議員はどこまで深刻に受け止めているのでしょうか」
 30日のワイドショーは、N国に現職議員がどんどん吸い寄せられる“快進撃”をこぞって報じていたが、前出の森田実氏は「メディアが面白がって取り上げていると、結局、N国の宣伝になる。日本がどんどん堕落していく怖さを感じます」と言った。この国の民主主義はいよいよ底が抜けてしまったようだ。
(日刊ゲンダイ)
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