松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

「ポスト安倍」が現れないこの国は本当にヤバイ


 うまい魚の条件は、激しい流れの中で育つことだという。人間も同じ。競い合う中で成長する。ましてリーダーを目指すものならなおさらだ。同時にリーダーは、常に後進を育成することが大切で、いつまでもその座にしがみつき、次の世代の台頭を抑え込もうとするヤツは、その業績にかかわらず、後世に禍根を残す。
 かつて、佐藤栄作は後継候補でありライバルであった福田赳夫と田中角栄を競い合わせることで、自身の政権維持を図る一方、結果的にこの2人を育て上げた。「ポスト佐藤」の座を勝ち取った田中角栄も、経緯はともあれ、結果的に竹下登、羽田孜、橋本龍太郎、小渕恵三と、4人もの総理を育てている。短期間とはいえ、田中派に所属していた細川護熙を加えると、なんと5人に上る。安倍総理自身も、小泉純一郎元総理に育てられ、総理の座に就いたという事実は指摘するまでもない。
 翻って今の自民党はどうか。「安倍1強」もやがては終わりを告げる。だが、見渡してみると、実は「ポスト安倍」候補が全く見当たらないことに気づくはずだ。取り巻きや人事狙いの連中が「安倍4選も」などと言いだす背景には、この“惨状”がある。
 かつて、派閥は総裁候補養成機関であり、派閥のトップになることが総裁(総理)候補になるための必須条件だった。当然、各派のトップはイコール総裁候補。だが、今の派閥はどうか。7派閥のうち、総裁候補といえる人材を抱えているのは石破派と岸田派の2つだけしかない。
 今、総裁候補として名前が挙げられているのは岸田文雄、石破茂、河野太郎、加藤勝信、菅義偉らだが、以前は「禅譲」が噂されていた岸田は、その「戦闘能力」欠如から完全に失速し、石破は安倍総理や大多数の安倍支持派閥から包囲網を敷かれ、身動きが取れない状況に陥っている。その他の顔ぶれは全くの未知数だし、自ら積極的に動く気配もない。今の自民党には競い合いのかけらもない。野党が政権を奪う可能性がほとんどないから、政党間のせめぎ合いもない。
 安倍総理にとって、この状況は確かに「思うつぼ」かもしれないが、自らが政権の座を守ることしか考えず、後継者の育成に全く取り組まないどころか、その台頭を力で抑え込もうとする姿勢は、無責任との批判を受けて当然だろう。「安倍4選」の可能性が、現実には限りなくゼロに近い状況の中で、しっかりとした後継者を競い合いの中で育てていくことはリーダーの義務でもあるはず。まともな後継者も育たない状況は、日本の将来に暗い影を落としている。リーダー候補の劣化が、この国を滅ぼすことになるかもしれない。
(日刊ゲンダイ・伊藤惇夫)
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