松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

人がSNS中毒になる理由は「反応の遅さ」と「ギャンブル的要素」


<「居場所」であるはずのSNSに、なぜ人は依存してしまうのか。コミュニケーション術の専門家が教える「居心地のよい居場所」のつくり方>


生きていくためには、人間関係で悩む必要がない、居心地のよい居場所が必要だ。それはリアルな場であろうがSNSであろうが関係ない。そして、そんな居場所を確保するためのコミュニケーション方法は「インプロ」を通して学ぶことができる――。
そう主張するのが、『自分の居場所はどこにある?――SNSでもリアルでも「最高のつながり」の作り方』(CCCメディアハウス)の著者、渡辺龍太氏だ。インプロとは、即興演劇がベースになったコミュニケーション術を指す。
人はなぜ、SNS中毒になってしまうのか。SNSに「居場所」を求めたはずなのに、なぜネットでのコミュニケーションに疲れてしまうのか。
ここでは『自分の居場所はどこにある?』からSNSでの居場所づくりのコツを一部抜粋し、2回に分けて掲載する。
2回目となる今回は、SNSを居場所にするためにどんなことを発信すればいいか、どんなことを発信すべきでないか、そして「依存」しないために何に注意すべきかについて。


※第1回:「正義感」と「偽物の人」に注意! SNSを居心地のよい場にする方法
人のためになる発信をする
では、SNSを居場所とするために、具体的にどんなことを発信したらよいのかというと、人が読んで役に立つ情報です。SNSの利用に長けている人は、明快な自分のキャラクターを構築し、フォロワーがどんな人であるかを分析した上で、彼らが求めているような情報を定期的に発信していきます。
しかし、普通はそんなことは考えないので、そう簡単にはできません。そもそもSNSをビジネスで利用するのではなく、居場所をつくりたいという動機だけであれば、そこまでする必要もありません。それでもSNSを居場所としたいという人には、日常的な事柄や愚痴を、人が読んでためになる情報に変換して発信することをおススメします。
たとえば、「今日は、奮発しました!」という一言とともに高級肉を食べている自撮り写真を投稿していても、単に「いいな〜」と思われるか、逆に「自慢してて痛い人だな」と思われるくらいです。
しかし、「〇〇牛というのが、本当に美味しいと聞いたので、その専門店で、ついにお肉にありつけました。美味しいです! 〇〇牛は高いといっても、他の超有名なお肉よりは安いですし、お肉好きな人は一度は試したほうがよいですよ!! 」と書き込んだら、それが仮に自慢であったとしても印象は大きく変わります。それは少なくとも、お肉好きにとっては参考になって役に立つ情報を発信しているからです。読み手にとってアイデアを出されたり、読み物として面白くなければ、日記や愚痴はそれ以上にも以下にもなりません。
インプロでは、他人に対して自分のアイデアをぶつけることを『オファー(提案)』と言います。SNSで見ている人が役に立つ情報を「どう思いますか?」というかたちで提案するというイメージです。


*愚痴や不満は学びのある内容に
また、愚痴や不満をネットでぶちまける行為は、多くの人がやりたくなります。あなたも実際にやった経験があるのではないでしょうか。しかし、暗い話を延々と書き綴ったところで、それは他の人が知りたい情報ではありません。もしそれでも愚痴りたいのであれば、周りの人の共感を呼んだり、何らかの気づきのある情報にする工夫が必要です。
たとえば、「ああ、今日も疲れた。外回りは疲れる......」というような愚痴では、フォロワーがそこから学べる内容は1つもありません。しかし、「久々に外回りをしたら、体力の衰えを実感。そんなに頭は疲れてないけど、一日歩き回って、腰が痛くなってきました。意識的にトレーニングしないと、体力って確実に落ちるんですね〜」であれば、トレーニングや体力について考えさせられる内容になり、学びや共感をある程度はもって受け取ってもらえます。
これは少し上級編ですが、グルメや筋トレなど一貫したジャンルで定期的に書き込み続けていると、多くの人が注目してくれるようになります。次第に専門家のようなイメージが定着し、あなたを頼りにする人も出てくるはずです。これがネット上であなたの居場所が構築されるということです。
しかし、投稿に義務感が生まれると疲れてしまいます。ですから、自分の実生活で起きたことを、他の人が学べるかたちで、気が向いたら投稿するということを続けてみましょう。すると、ゆるく反応してくれる人も現れ、そこにあなたの居場所を確保できるはずです。
この作法はネットだけではなく、リアルの場所でも同じです。会社であった嫌なことを家族に話す場合も、先ほど述べた「どう思いますか?」といった、『オファー(提案)』にする工夫をすると、聞く側も直球をぶつけられないので負担にならずに聞きやすくなります。


*居場所に「依存」してはいけない
しかし、そうやってSNSに居場所ができると、SNS中毒の人が出てきてしまいます。その理由は単純で、1つにリアルで誰かと話しているときと違い、すぐに反応が返ってくるわけではないことと、2つ目は影響力の広がりという意味でギャンブル的要素があるからです。
前者についていえば、対面コミュニケーションでは自分が何か発言すると、一瞬で相手からのリアクションが返ってきます。すると、誰がどれだけリアクションを返してくれたかが一目瞭然です。
しかし、SNSでは投稿に対して、いつ誰からどのような反応が来るかは、まったく予測不能です。ですから、頻繁にSNSアカウントをチェックし、反応の有無を何度も確認してしまいます。しかも、そのときに必然的に他のアカウントが目に入り、「自分のSNSは反応が薄いのに、どうしてこの人のは?」と嫉妬し、その投稿が気になり、延々とチェックがやめられなくなってしまいます。
また、他の人よりも、自分の投稿を目立たせたいという意識が生まれ、自分の投稿内容をもっと面白く、刺激的にしなければというループに突入します。その結果、写真映えするような投稿をするために、食べたくもない物を注文したり、高級品を購入するなど、まさにギャンブルのようにやめられなくなります。
近年、動画によって逮捕されているYouTuberをよく見聞きしますが、これもまったく同じです。周囲の興味が尽きないように、より刺激的な動画を撮影し続けています。そうしているうちに周囲からの関心を失うことが恐怖になり、もっと刺激を強めるための負のループに突入し、抜け出せなくなってしまうのです。
さらには、ネタの反響がどう広がるかという「ギャンブル」に勝つために一日中、SNSを確認し続けることにもつながります。本人はSNSこそが自分の居場所と錯覚してしまいますが、これは単なる「依存」です(居場所としては、まったく機能していません)。


『自分の居場所はどこにある?――SNSでもリアルでも「最高のつながり」の作り方』
 渡辺龍太 著
(Newsweek)
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