松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

ウクライナ機は本当にイランが撃墜したのか?


<トランプ米大統領やトルドー・カナダ首相は、撃墜の可能性あると話したが、具体的な証拠はまだない>
1月8日、ウクライナの旅客機がイランの首都テヘランの空港を離陸した直後に墜落。乗客乗員176人全員が死亡した。アメリカとイランの軍事的な緊張が高まっていた時だけに、事故直後からイラン撃墜説がまことしやかに囁かれていたが、それが今有力な仮説として浮上している。アメリカの当局者2人とイラクの当局者1人は本誌に対し、ウクライナ機は本当に、イランの地対空ミサイルで撃墜されたと話した。
ウクライナ国際航空が運航するボーイング737-800型機は、テヘランからキエフに向かう予定だったが、離陸直後に通信が途絶えた。この前日、イランは隣国イラクにある複数の米軍基地に向けてミサイルを発射していた。前述の3人の当局者は本誌に対し、問題の旅客機はロシア製のTor-M1地対空ミサイルによって撃墜されたとみられると語った。
米国防総省の高官1人と米情報機関の高官1人によれば、国防総省は旅客機の墜落を「イランにとって想定外の誤射」だったとみている。情報筋によれば、アメリカが3日にイラン革命防衛隊の精鋭部隊「クッズ部隊」のカセム・スレイマニ司令官を殺害したのを受けて、イランは地対空ミサイルシステムを作動させていた可能性が高い。


*トランプ「間違いはあり得る」
本誌の報道を受けてドナルド・トランプ米大統領は記者団に対し、「疑念はある」と語った。「旅客機は非常に危険な地域を飛行していた。誰かが間違いを起こすことはあり得る」
米中央軍はこれについてノーコメント、国家安全保障会議(NSC)と米国務省にもコメントを求めたが返答はない。
旅客機の墜落を最初に報じたイランの報道機関は、「原因は機械の故障とみられる」という赤新月社(赤十字に相当するイスラム圏の組織)の見解を伝えた。在テヘランのウクライナ大使館も当初は同じ見方を示していたが、政府から結論を急ぐべきではないという警告を受け、後にこれを撤回した。
事故の翌日、テヘラン付近で発見されたというTor M-1ミサイルの破片とみられる写真が出回り始めた。ウクライナ国家安全保障当局のオレクシー・ダニーロフ長官は声明を出し、イランと協力して事故原因の調査を行っているとした上で、Tor M-1システムとの接触も考えられる原因のひとつだと指摘。そのほかに考えられる原因として、無人航空機などの飛行物体との衝突、機械の故障とテロ攻撃を挙げた。
イラン民間航空機関はカナダとスウェーデンの調査協力も受け入れる意向を表明。だが同機関のアリ・アドベザデ局長は、回収した墜落機のブラックボックスをアメリカに渡すつもりはないと強調した。ブラックボックスには、墜落直前のコックピット内の会話やフライトデータの詳細が記録されている可能性がある。


その後、イラン政府は声明を発表。国際民間航空機関の規則に従い、諸外国の調査協力を受け入れることに加えて、ボーイングから派遣された担当者がブラックボックス(アドベザデによれば損傷している)を調べることを許可するとも述べた。


これに先立ちアドベザデは、問題の旅客機がミサイルで撃墜されたという憶測を否定。声明の中で彼は、そのようなことは「科学的に不可能で、噂は全くのナンセンスだ」と主張した。「もしロケットかミサイルが命中したのであれば、飛行機は真っ逆さまに墜落するはずだ」と、アドベザデは言う。だが操縦士は飛行機を戻そうとしたという。「ロケットかミサイルにやられた航空機が空港に戻ろうとするなどあり得ない」
カナダのフランソワ・フィリップ・シャンパーニュ外相は9日にイランのジャバド・ザリフ外相と異例の電話会談を行い、「カナダ当局者が迅速にイラン入りを認められ、遺体の身元確認を行い、また調査に参加できる必要があると強調」した。「カナダとカナダ国民は、多くの疑問への答えを必要としている」と彼は語った。


*背景にある米イラン対立の歴史
カナダ外務省は、墜落機がミサイルで撃墜された可能性があると考えているかという本誌の質問に対して、回答を保留している。
だが同国のジャスティン・トルドー首相は9日、「問題の旅客機がイランの地対空ミサイルで撃墜された」ことを示す機密情報を、政府当局者が「複数の情報筋から得ている」と認めた。
その上でトルドーは、「(撃墜は)意図的なものではなかった可能性がある」と語った。「この新たな情報により、徹底した調査の必要性がさらに高まった。カナダは同盟諸国と協力して、墜落事故の原因を特定するために徹底した、信頼できる調査が行われるようにしていく」
アメリカとイランの間の緊張は、2019年末にイランの指示とみられるイラク駐留米軍への攻撃が増加したことを受けて、一気に高まった。そして1月3日にアメリカがスレイマニを殺害すると、イランは報復としてイラク国内の複数の駐留米軍基地を攻撃した。
直接的な衝突はほとんどなかったものの、両国の対立は40年前から続いている。きっかけは1979年に起きたイラン・イスラム革命で、このときテヘランの米大使館が占拠され、職員やその家族が14カ月以上にわたって人質に取られる事件があった。
さらに翌年、隣国イラクがアメリカの支援の下、革命の混乱に乗じてイランに侵攻し、8年に及ぶイラン・イラク戦争が勃発。これでアメリカとイランの関係はさらに悪化した。この戦争が終わる直前の1988年7月には米海軍のミサイル巡洋艦がイランの民間航空機を撃墜し、乗客乗員290人全員が死亡する事態が発生した。この撃墜も誤射だったとされている。
「アメリカにも旅客機撃墜の過去があるため、国防総省は今回の事態をエスカレートさせたくないと考えている」と、米情報機関の高官は本誌に語った。1988年に起きたこの一件は、いまだに両国の間に重くのしかかっている。
トランプは7日にイラク国内の駐留米軍基地2カ所がイランによる攻撃を受けた後、軍事報復は行わない意向を示し、事態の鎮静化に向けて動き出した。今後イランに対しては制裁強化の対応を取るとした上で、武装勢力の支援や核・ミサイル開発をやめるよう改めて呼びかけた。
(Newsweek)
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