松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

年明けから噴出 2020年「波乱」「混迷」「破局」の予兆

        


■不安におののく庶民は首をすくめて祈るしか術はないのか
 元号が令和に改まって初めての新年を迎え、56年ぶりの東京五輪が開催される2020年。安倍首相の年頭所感は「未来への躍動感があふれている今こそ、新しい時代に向けた国づくりを力強く進める時です」と高揚感いっぱいだったが、おとそ気分が抜けてくると、年明けから高まる波乱、混迷、破局の予兆に暗澹としてくる。8年目に入った安倍政権のスローガン政治はこの国を少しも前進させず、ただただ劣化させてきた。
 国家を私物化し、オトモダチにだけ甘い汁を存分に吸わせるアベ政治の最たるものが首相主催の「桜を見る会」をめぐる数々の疑惑だ。公金で催される会に後援会関係者をどんどん招き、参加者はうなぎ上り。反社会的勢力やマルチ商法のサギ社長まで接待していた。野党が追及に動き始めると、絶妙なタイミングで招待者名簿を破棄。安倍は疑惑の核心を突かれると「名簿を廃棄したので詳細はお答えできない」と逃げ回り、臨時国会を早々に閉じた。しかし、20日に召集される通常国会ではそうはいかない。19年度の補正予算をめぐる集中審議を皮切りに予算委員会が連日開かれ、20年度予算の成立が見込まれる3月いっぱい続く。臨時国会で“逃げ恥”を許した野党は手ぐすね引いていて、安倍が予算委で火ダルマになるのは必至である。
 カジノ汚職も火を噴いている。恥も外聞もなく「成長戦略の柱」に据えたカジノを含む統合型リゾート(IR)をめぐり、参入を目指してきた中国企業「500ドットコム」が広範囲にカネをバラまいていた疑いが強まっている。東京地検特捜部に収賄容疑で逮捕されたIR担当の内閣府副大臣だった秋元司衆院議員ばかりでなく、進出候補地の北海道や沖縄が地元の国会議員にも便宜供与を働きかけていたのだ。芋づる式の展開となる可能性大だ。


■米国追従、中国接近で国益台無し
 “外交の安倍”の化けの皮は完全に剥がれ落ちた。「個人的な信頼関係」を誇る米国のトランプ大統領が暴走し、米軍はイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害。周辺国も巻き込み、中東は一触即発の情勢だが、米国とイランの仲介役を自負していた安倍は相変わらずのトランプ追従だ。
 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は言う。
「日本外交はこれまで“戦略的あいまいさ”によって国益を守ってきましたが、米国一辺倒のアベ政治によって台無しです。伝統的な友好国であるイランの顔を立てた中途半端な自衛隊の中東派遣もアダとなりかねない。事態がエスカレートすれば米国陣営の一員であると旗幟を鮮明にする必要に迫られるでしょう。イランとの関係悪化は避けられない。片やカジノ汚職をめぐっては、中国が与党の深部に食い込んでいることが浮き彫りになった。米国追従のかたわら、習近平政権の香港や台湾への圧力に目をつぶり、容認せざるを得なくなっている。ゴーン逃走劇もそうですが、日本はリベラルな国際秩序を担える国ではないと世界に喧伝してしまっています」
 外交は安倍の“やってる感”演出の小道具だ。「われわれの世代で解決する」と息巻いた北方領土返還をめぐる対ロ交渉は暗礁に乗り上げ、「安倍内閣の最重要課題」に掲げる北朝鮮による拉致被害者の帰国は夢物語。それで今年の見せ場は習近平国家主席の国賓来日だというからお笑い草だ。
「一国二制度」が有名無実化しつつある香港では、元日恒例のデモに103万人(主催者発表)が集まり、97年の中国返還後、最大規模となった。「一つの中国」の原則を掲げる習近平に統一を迫られる台湾では、対中強硬路線の蔡英文総統が再選し、北東アジアの緊張も高まっている。
 初詣では絵馬を手にした参拝客が「新しい時代が平和であってほしいとの思いを込めて書いた」と言い、「今年は平和な年になってほしい」「世の中が平和であってほしい」といった声が多く聞かれた。ひたすら安寧を願い、「何も起こらなければいい」と祈る国民の鋭さが表れている。
 覆い隠してきたデタラメ安倍政治の歪みがあちこちで一気に露呈、噴出する中で、国際情勢の緊迫、景気の低迷、災害の懸念は高まる一方だ。
 アベノミクスの3本の矢が放たれてから7年。デフレ脱却はいまだ実現せず、トリクルダウンも起きず、地方創生はほど遠い。景気回復どころか、安倍政権で2度も実施された消費増税で国民生活は痛めつけられっぱなしだ。19年11月の景気動向指数は景気の現状を示す一致指数が95・1と6年9カ月ぶりの低水準で、家計調査では消費支出が前年同月比2・0%減。景気の一致指数(15年=100)の推移から機械的に決まる基調判断は4カ月連続「悪化」となった。ちなみに、10月の前月比のマイナス幅は5・6ポイントで、東日本大震災が発生した11年3月以来の大きさ。前回14年4月の増税時(4・8ポイント低下)よりも落ち込みが激しい。14年は消費支出の前年割れが増税後13カ月続いた。政府は財政支出13・2兆円、事業規模26兆円という大型経済対策を打ち出しているが、焼け石に水だ。経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「景気動向指数の推移は景気後退を示唆していますし、消費指数も悪化しています。ベースとなる日本経済が弱っている中で26兆円の対策を打っても、絵に描いたモチになるリスクがある。政府は消費増税の影響を軽く見て、昨秋の台風被害を一過性のものとしかとらえていないのではないか。緊迫化する中東情勢も追い打ちをかけています。一昨年の原油輸入は約19・3兆円でしたが、昨年だけで原油価格は3割上がり、足元でも上昇している。5兆~6兆円の負担増はGDPを1%ほど引き下げます。26兆円の対策によるGDP押し上げ効果が1・4%とされていますから、相殺される可能性がある」


■本気度が疑われる野党合流
 痛み切った経済に五輪不況が待ち受け、災害とは隣り合わせの日常だ。日本列島では震度5弱は珍しくなく、昨年の記録的台風で水害危機にも直面している。不安におののく庶民は首をすくめて祈るしか術はないのか。反アベの受け皿と期待される立憲民主党と国民民主党の合流は一進一退。野党の多弱が「安倍1強」を生んだ落とし前をそろそろつけてくれなければ困る。
「合流でさえパッとまとめられない野党に国をまとめることができるのか。これでは政権交代は到底難しいのではないか。そういぶかる有権者は少なくありません。本気度を疑われるような小競り合いをいつまでやるつもりなのでしょうか」(五野井郁夫氏=前出)
 映画監督マイケル・ムーア氏はソレイマニの画像をツイッターにアップし、皮肉たっぷりにこう書き込んでいた。
〈米国のみなさん、こんにちは。この男を知っていますか? 彼があなたの敵だと知っていましたか? え? 聞いたことがない? 今日中に彼を憎むように教え込まれるでしょう。トランプが彼を暗殺したことを喜び、言われたことをやるようになるでしょう。あなたの子供たちを戦争に送り出す準備を始めなさい〉
 翻ってこの国はどうか。安倍政権の延命を許し続ければ、国民は道連れとなり、悲劇的な幕切れを迎えることになりかねない。自己防衛の準備を始めなければ時間切れだ。
(日刊ゲンダイ)
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