松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

米で公開された「アフガニスタン・ペーパーズ」衝撃の中身


 先月9日「ワシントン・ポスト」は、アフガニスタンでの作戦や復興支援に関し、米政府当局者が失敗を続けていることを認識しながら、国民に対して成果を上げているように装い、データの改ざんや隠蔽を行っていたことを示す文書を公表した。
 ベトナム戦争でも同様な欺瞞行為が行われていた証拠となる機密文書を「ニューヨーク・タイムズ」が1971年6月に公表した。それが「ペンタゴン・ペーパーズ」と呼ばれ、反戦運動とニクソン辞任の一因となったことと類似し「アフガニスタン・ペーパーズ」と称されている。この文書は米政府の「アフガニスタン復興特別監察官」が関係者約400人から聞き取り調査した2000ページの証言記録だ。「ワシントン・ポスト」は3年間の情報公開請求と法廷闘争の結果、入手に成功した。
 例えばブッシュ、オバマ政権でホワイトハウスの軍事顧問を務めたダグラス・ルート退役中将は「我々は何を成し遂げようとしているのか分からず、考えも方向性もなかった」と述べた。国務省でアフガニスタン政策を担当したジェームズ・ドビンズ元特別代表は「我々は紛争の絶えない国に侵攻し、平和をもたらそうとしたが明らかに失敗した」と認めている。米国は2001年の侵攻以来18年も続く戦闘と復興支援に1兆ドルを費やしたが、それが大規模な腐敗を招き「アフガン治安部隊の司令官たちは兵員の数を水増しして数万人分の給料を着服していた」「募集した警察官の3分の1は麻薬患者かタリバンだった」などと現地でアフガン軍の編成、訓練に当たった米軍将校たちが述べている。
 戦闘が始まって5年後の2006年には状況が悪化していることを訴える報告が出ていたが、作戦が成功中の印象を与える情報操作が常態化し、訓練したアフガン兵の数や、政府軍の支配地域などの統計は改ざんされ、首都カブールでの自爆テロ件数の増大も「タリバンが弱体化し、直接戦闘ができず、絶望的になったことを示す」と発表された。


■なぜか反応が鈍い日本のメディア
 政府のウソが露見した米国では議会に特別監察官を呼び公聴会を開くことを決めるなど大問題になっている。日本ではNHKが12月14日に報じたが、新聞の反応は鈍く、読売が12月24日、朝日が27日、毎日は1月4日に報じた。
 ベトナム戦争では日本は直接関与しなかったから「ペンタゴン・ペーパーズ」は他国の話だった。だが、アフガニスタン攻撃には日本は2001年から10年まで給油艦を出し、米軍艦などに134回給油、アフガン警察官8万人の給与も半分は日本が出したから情報操作、心理戦の被害者の一端と言える。
 今回、表面化したのと同様の米国の情報操作は、イラク戦争、コソボ紛争、シリア内戦への介入などでも行われた形跡がある。米国は一方的なイラン核合意離脱による対立、革命防衛隊司令官の殺害でも、法的に無理な理屈で正当化をはかっている。
 集団的自衛権の行使、「同盟の深化」で日本も偽情報に踊らされる機会が増える。米国の情報や情勢判断をうのみにしない情報分析の姿勢と、その能力が重要であることを「アフガニスタン・ペーパーズ」は示している。
(日刊ゲンダイ・田岡俊次)
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