松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

2人は同じ穴のムジナ 桜の安倍首相と買収の河井前法相

  


 共同通信が実施した全国電話世論調査(20~21日)で、安倍内閣の支持率が前回(5月末)より2・7ポイント減の36・7%となった。不支持率は49・7%で、前回より4・2ポイント増加。調査手法が異なるため単純比較できないが、内閣支持率は2012年12月に発足した第2次安倍政権で最低を記録した17年7月(35・8%)に次ぐ低水準だ。
 17年といえば、国会で学校法人「加計学園」の獣医学部新設の問題が取り沙汰されていた時だ。今回、下落した背景には、新型コロナウイルスへの対応や、賭けマージャンで辞職した黒川前東京高検検事長の定年延長問題などがあるが、何と言っても最大の要因は、昨年7月の参院選をめぐり、広島県の地元政界に多額の現金を配ったとして、東京地検特捜部に公選法違反(買収)容疑で逮捕された河井克行前法相(57)と妻の案里参院議員(46)=共に自民党離党=の汚職事件があるのは間違いない。
 現職の国会議員夫妻がそろって逮捕されるという前代未聞の不祥事に加え、仮にも法務行政のトップに就いていた政治家が買収工作に平然と手を染めていた疑いがあるのだから、国民の政治不信に拍車がかかるのは当然だろう。
 共同通信の調査によると、河井両容疑者については「議員辞職すべきだ」との回答は90・4%にも達している。


■過去に例がない露骨な金権選挙
 国会閉幕と同時に地検特捜部に電撃逮捕された河井両容疑者をめぐっては、連日の検察リーク報道などによって、克行の買収工作の実態が徐々に明らかになり始めた。
 一部報道によると、克行は、自分が衆院広島3区で初当選した1996年にも選挙区内の議員に現金封筒を配っていた疑いがあるほか、2005年9月の郵政解散選挙や、14年12月の衆院選でも、それぞれ地元有権者に現金を配っていた可能性があるという。
 また、今回の逮捕容疑となった参院選では、案里の演説会に出席した元議員がトイレに向かうと、背後から近寄ってきた克行が突然、元議員のスーツの右ポケットに現金入りの封筒を押し込んできた――などという生々しい証言も報じられたが、これらが事実であれば、克行の買収工作は「ほんの出来心でカネを渡した」なんてレベルじゃ済まない。買収行為をほぼ日常的に繰り返していた異常な“常習犯”だったということだ。
 一方、案里は「違法な行為をした覚えはありません」とシラを切り続けているという。だが、初めて選挙に出たズブの素人ならともかく、広島県議を4期も務めるなど、選挙運動の酸いも甘いも知り尽くしているベテラン政治家が、1・5億円も投じられた自分の選挙資金の出所や、選挙期間中の使途について「知らぬ存ぜぬ」だったはずがないだろう。
 ましてや、カネを配り歩いていたのが自分の選挙を手伝っている旦那であればなおさらで、この期に及んでも逃げ切れると思ったら大間違いだ。ジャーナリストの歳川隆雄氏はこう言う。
「現職の国会議員が公示日の直前まで有権者に堂々と現金を配る。驚きと同時に呆れ果ててしまいます。いくら何でも、ここまで露骨で酷い金権選挙は聞いたことがない。特捜部の捜査によって、他にもいろいろな疑惑が出てくる可能性はあります」


■安倍1強体制による驕りがすべての元凶
 共同通信の調査によると、河井両容疑者の汚職事件について、党総裁である安倍首相に対しても「大いに責任がある」「ある程度責任がある」とした回答の合計は75・9%にも達している。
 安倍は常習的に買収を繰り返していた疑いのある克行を選挙後、よりによって法務大臣に抜擢。その妻・案里の選挙についても、自分の秘書を応援に派遣するだけじゃなく、自ら現地に乗り込んで積極的に支持を訴えていたのだから、2人について安倍の政治的、道義的責任が免れないことは言うまでもない。
 2人とも離党したとはいえ、公認した党の総裁として、検察捜査とは別に疑惑の徹底調査を指示し、全容解明に努めるのがスジだ。ところが、例によって安倍は「責任」を口にするばかりで何もしない。18日の会見でも「(克行を)法務大臣に任命した者として、その責任を痛感しております」とか言っていたが、会見後、報道機関が書面で<どう責任を取る(のか)>と問いただしても、<さまざまな批判があることを真摯に受け止めながら、一層の緊張感を持って政権運営に当たる>などとノラリクラリだ。
 首相として説明責任を果たしたかどうか――についても、<国民が判断すべきものであり、私個人の評価は差し控える>などと木で鼻をくくったような答えだから言語道断。不祥事のたびに「責任」や「反省」を口にしながら、具体的な行動は何も起こさず、シレッとして世論批判が沈静化するのを待つ。見慣れた光景とはいえ、今回も、国会を閉じて「会見でオシマイ」というふざけた姿勢だから許せない。


■桜疑惑と参院選の買収構図は同じ
 もっとも、安倍が「責任」を感じているわけがない。なぜなら、安倍と克行は、選挙の買収という意味では「同じ穴のムジナ」だからだ。
 首相主催の「桜を見る会」をめぐる疑惑では、都内高級ホテルで前夜祭パーティーが開かれ、地元の後援会関係者らはホテルが公表している最低料金1・1万円を大幅に下回る5000円の会費で参加していた。
「会費を払わず入場した人もいる」という証言もあり、不足分を安倍後援会が補填していれば買収になる可能性が高い。
 つまり、「現金バラマキの河井」と「桜供応の安倍」は全くの同類。お友だちというわけだ。
 しかも、買収工作が繰り広げられた構図も似ている。毎日新聞は、桜前夜祭に安倍の地元の招待者が急増したのは17年の下関市長選が契機だったのではないか、と報じていた。安倍が推す候補と、同じ自民党の林芳正参院議員側が推す候補が争い、安倍派の候補が勝った選挙戦だ。毎日は地元市議の証言として「協力してくれた『ご褒美』に桜を見る会が利用されたのでは」と報じていたが、今回の河井のケースも、党県連の反対を押し切って擁立された案里を安倍がバックアップし、安倍が敵視していた自民党の溝手顕正前参院議員と議席を激しく競り合った。
 つまり、河井は以前から金権選挙に手を染めていたとはいえ、手口がより大胆になったのは、「首相がやっているのだから俺も大丈夫」と思ったのだろう。まさに、上が腐れば下もこうなるという腐敗、堕落、破廉恥集団のおぞましさの表れと言っていい。政治アナリストの伊藤惇夫氏がこう言う。
「モリカケ、桜の疑惑にしても、安倍首相は責任を口にはするものの、一度たりとも具体的に行動したことはない。責任は『取る』ものではなくて『感じる』もの。こういう解釈なのでしょう。今回の河井前法相夫妻の疑惑、モリカケ桜疑惑で共通するのは、安倍1強体制の驕りによる『何をしてもおとがめなし』という傲慢さがあった面は否めません」
 有権者は安倍政権の本性にいい加減、気付くべきだ。
(日刊ゲンダイ)
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