松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

目的は森友・加計・桜疑惑潰し 異様な“菅談合”の全容

   


 菅官房長官、石破元幹事長、岸田政調会長の3人が立候補する自民党総裁選(8日告示、14日投開票)。国会議員票で圧倒的優位に立つ菅が4日、選対本部を立ち上げ、大メディアは「各陣営が選挙活動を本格化」などと報じているが、すでに結果が見えているのに茶番もいいところだ。
 投開票日までに致命的なスキャンダルや失言が出て失速する可能性もゼロではないが、今のところ石破派、岸田派をのぞく主要5派閥が総乗りした菅が圧勝するのは間違いない。党内の関心は早くも総裁選後の人事に移り、菅の選対本部は貢献度を競い合う“猟官運動クラスター”と化している。
 だが、我が世の春を謳歌するかに見える菅を中心にこの政局が組み立てられたのかというと、それは違う。今回の総裁選の“中心人物”は、紛れもなく石破だ。
 政権運営がニッチもサッチもいかなくなって、低迷する支持率の回復も見込めず、病気を理由に辞意表明して責任放棄した安倍首相が後継選びに託した最重要課題は「石破にだけは政権を渡さないこと」だったという。
 どうすれば石破に政権が渡らずに済むのか、誰なら石破に勝てるか、いかにして石破を潰すか――。そういう文脈で担ぎ上げられたのが菅だった。もともと国民の待望論があったわけではない。
 安倍と、盟友の麻生財務相の意中とされてきた後継候補は岸田だ。
 岸田も無邪気に禅譲を信じ、昨年の参院選でお膝元の広島選挙区に手を突っ込まれても、黙って尽くしてきた。しかし、地味で発信力のない岸田では、国民人気が高い石破に太刀打ちできないことは誰の目にも明らかだった。
 安倍の唐突な政権ブン投げ、岸田の頼りなさ、そして石破の存在感。そのどれかひとつでも欠ければ、菅総裁という選択肢は浮かんでこなかったのではないか。


■「次善の策」として急浮上
 4日の朝日新聞が、岸田が脱落して菅が本命に躍り出るに至った内幕をこう明かしている。
<「党内は岸田さんではまとまりませんよ」。首相の出身派閥・細田派の閣僚経験者が首相にそう伝えると、首相が「やっぱり、そうだよね」と応じることもあったという。そんな中で首相の体調が悪化し、「次善の策」(閣僚経験者)として急浮上したのが菅氏だった>
<「いつから総理になりたいと思ったんだ」。麻生氏は9月1日、立候補の意向を伝えに来た菅氏に尋ねた。菅氏は最近、自身に近い若手議員を集め、石破、岸田両氏のどちらが後継首相にふさわしいか聞いたところ、大半が石破氏の名を挙げたと説明。「出なければいけないと決意しました」と話したという>
 政界で菅と麻生の折り合いの悪さを知らない者はいない。麻生と二階幹事長も微妙な関係だ。だが、とにかく石破を総理総裁にしないこと。その一点のために、反目し合ってきた連中がすぐさま手を結び、「次善の策」である菅に主要派閥が雪崩を打って乗っかった。そういう醜悪な総裁選なのである。


■やましさ満載の政権中枢が石破の正論を封じ込めた
 ひとたびパンドラの箱が開けば、安倍ひとりの汚名では済まない。政権を中枢で支えてきた菅や麻生も同罪だし、下手したら自民党政権そのものがひっくり返る。そういう危機感、やましさを共有しているからこそ、主要派閥がこぞって菅に乗っかったのだ。瞬く間に石破を封じ込める包囲網が出来上がっていた。
 自己保身と疑惑潰しが最優先で、国民不在の権力闘争。昭和の自民党に先祖返りしたかのような、派閥談合の薄汚い総裁選をわれわれは今、見せつけられている。
 菅が2日に出馬会見した直後、党内最大派閥の細田派(98人)と第2派閥の麻生派(54人)、竹下派(54人)の会長3人がそろって会見に臨み、菅支持をわざわざ表明したのもおぞましかった。
 いち早く支持表明して「菅で決まり」の流れをつくった二階派(47人)を牽制し、大派閥の数の力を誇示して人事や政権運営の主導権を握るためのアピールだろうが、そんなこと公の場でやることか。小渕元首相の後継を選んだ「5人組」の方が密室だった分、まだつつましく思えるほどグロテスクな光景だった。公共の電波で流すなら、3領袖の卑しい悪人ヅラにモザイクをかけて欲しいくらいだ。とても正視に堪えるものではない。
「それに何の疑問も持たず、派閥領袖や菅氏に取り入ろうと必死で媚を売る自民党議員は本当に浅ましく、どうしようもない。同時に、安倍政権の7年8カ月で“逆らえば潰される”という恐怖政治がここまで浸透してしまった現実に戦慄します。安倍政権下で、官邸の意に沿わない議員や官僚は冷や飯を食わされてきました。プライドだけは高く精神的に未熟な安倍首相は、思うように物事が進まなかったり、批判されると“あいつは許さない”などと私怨を抱きがちですが、直接、手を下すわけではない。実行役を担ってきたのは菅官房長官です。河井夫妻の事件にも黒川元検事長の人事にも関わっている。安倍首相が経産官僚と二人三脚で仲間に利権を与え、警察官僚をはじめとする“官邸ポリス”を率いる菅長官が党内や官僚機構に睨みを利かせ、恫喝し、メディアへのコントロールを強める役割分担でやってきた。その結果、党内も霞が関もイエスマンばかりになり、大マスコミも権力の顔色をうかがう広報機関に成り下がってしまいました」(本澤二郎氏=前出)


■イメージアップ戦略にも協力
 安倍政治の検証も総括もないまま、テレビは連日、総裁選で本命に躍り出た菅を追いかけ、腰巾着におべっかを言わせている。令和おじさん、叩き上げ、苦労人、パンケーキ大好き――など、国民ウケしそうなキーワードを羅列して過去の悪行を覆い隠し、菅のイメージアップ戦略に協力しているのだ。
 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)が言う。
「不正に不正を重ね、嘘やゴマカシ、隠蔽、改ざん、嘘の上塗り……。そうやって国民の信頼を失ってきた腐敗政権をようやく民意が追い込んだと思ったら、よりによって、鉄面皮の嘘と隠蔽で政権を守ってきた菅長官が後継とは、悪い冗談としか思えません。目をつけられたら何をされるか分からない、恐ろしい官房長官だとメディア人は骨身にしみて感じているはずですが、だからこそ、機嫌を損ねないように競って歓迎ムードを演出しているように見える。安倍長期政権で、メディアは権力に対峙する気概を完全に失ってしまいました。本来は、このコロナ禍に何もできないまま政権を投げ出した無責任首相と連帯責任で内閣総辞職、蟄居謹慎が筋なのに、当事者の菅氏が首相に上り詰めようとしている。安倍政権の利権構造を温存したい人々が彼を支えているのです。それを国民が許容するのか問われる局面です」
 安倍が辞任しても、安倍政治は終わらない。むしろ、その中枢を担ってきた菅によって、安倍政治のエッセンスを凝縮したような暗黒政治が始まるのかもしれない。分断と監視はますます強化され、息苦しい社会になっていく。メディアの追従も深化し、続いていくのか。こんな暗澹たる気分になる総裁選はない。
(日刊ゲンダイ)
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