松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

この声も警察は排除するのか 地鳴りのような「安倍辞めろ」

     

 この国を私物化し、劣化させる安倍政権に審判を下す参院選の投開票日が21日に迫った。第2次政権発足以降、国政選挙5連勝を誇る安倍首相は勝敗ラインを「与党で過半数」と低く設定しているが、安倍官邸のなりふり構わぬ選挙戦は常軌を逸している。
 安倍を批判する市民に対し、公権力を使ったシャットアウトが横行。15日に札幌市の首相演説で「安倍辞めろ」と連呼した男性や「増税反対」を叫んだ女性らが警察官に取り押さえられて排除されたのに続き、18日に大津市でも「安倍辞めろ」などと声を上げた男性が警察官に取り囲まれ、会場端に追いやられる騒動が起きた。北海道警は「ヤジが公職選挙法(選挙の自由妨害)にあたるおそれがある」としていたが、専門家から「表現の自由の侵害」「過剰警備」などの指摘が相次ぐと、「聴衆同士のトラブルを防ぐための通常の警察活動」などと見解を修正。批判を嫌い、ヤジに異常反応する安倍に対する配慮、あるいは忖度なのは明らかだ。
 ラストサタデーの20日、安倍は激戦区を遊説する。
 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」をめぐる不祥事で逆風が吹き荒れる1人区の秋田に湯沢市生まれの菅官房長官と入り、自民2人目候補が落選危機にある複数区の埼玉、千葉、東京を回る予定だ。最終演説は因縁深い秋葉原。2017年都議選のラスト演説で聴衆の「安倍辞めろ」コールにブチ切れ、コールを続ける聴衆を指さして「こんな人たちに負けるわけにはいかない!」とイキリ立ち、歴史的大敗を招いたスポットである。


■ステルス遊説が招いたアンチ安倍の団結
 それ以降、自民は国政選挙で安倍の遊説日程を事前公表しないステルス遊説を始め、今回はそれを徹底。安倍側近の萩生田光一幹事長代行は「日程を公表すると演説を妨害する人がやって来る」と正当化したが、それがさらなる反発を招き、ツイッターでは「#会いに行ける国難」「♯会いに行ける蚊帳の外」などのハッシュタグで安倍のスケジュールが拡散されている。“こんな人たち”の集結に構える自民党都連は「党運動員の大動員により、選挙妨害の組織的ヤジにも負けず、訴え続ける安倍総裁に声援を送ってほしい」と記した動員要請を16日付で通知したという。しかし、焼け石に水ではないのか。地鳴りのように響く「安倍辞めろ」コールを警察は排除できるのか。
「『デモ』とは何か」などの著書がある高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は言う。
「街頭演説にヤジを飛ばす聴衆を警察が排除する動きは、戦前戦中を除けば安倍政権で初めて見られる現象です。共産党独裁体制の中国統治下にある香港でさえ大規模デモを実行できるのに、民主主義のこの国でなぜ許されないのか。しかも、警察が神経をとがらせているのは、首相演説に対するヤジだけ。『選挙の自由妨害』が理由にされていますが、安倍首相は候補者ではない。ヤジ排除は恣意的です。
 打たれ弱い首相の器の小ささに合わせて民主主義の幅が削られるなんてあり得ません。秋葉原のラスト演説では100人ほどの仲間と安倍政権に対する抗議活動を実施します。弁護士を少なくとも2人配置してカメラを回し、大きなプラカードももちろん掲げます」
 アンチを締め出し、居心地の良い空間を整えたところで、安倍はロクな演説をしていない。序盤は立憲民主党の枝野代表をネタにし、「野党の枝野さん。民主党の、あれ民主党じゃなくて今、立憲民主党ですね。どんどん変わるから覚えるのが大変」と笑いを取って悦に入っていた。立憲民主の略称は「りっけん」。比例代表で「民主党」と書けば国民民主党の得票となり、「民主」と書いた場合は無効になる可能性がある。枝野からは「一種の選挙妨害だ。いい加減にしてほしい」と猛反発を食らい、安倍1強とモテはやされながら横綱相撲とはほど遠い情けなさである。
 つい先日は「お父さんも恋人を誘って、お母さんは昔の恋人を探し出して投票箱に足を運んで」と口を滑らせ、ヒンシュクを買った。
「友達、家族、恋人も連れて、あるいは昔の恋人も探し出して期日前投票に行ってほしい」と訴えるのを十八番にしていて、舌足らずで言葉足らずになったようだが、一国のトップがこれではやりきれない。落語家の立川談四楼が〈何それ?男ばかりの聴衆がドッとウケてるからギャグのつもりなんだろうけど、夫に愛人がいて、妻がモテたことをニヤニヤしながら示唆するなんて、いつの時代だよ〉とツイートしていた通りで、「家族の絆」を盛んにうたう保守が聞いて呆れる程度の低さである。


■テレビの参院選報道は3年前の7割に激減
 アメとムチで安倍官邸に飼い慣らされた大手メディアは、安倍のどうしようもない発言を含め、この選挙戦をマトモに報じてこなかった。
 とりわけ露骨なのがテレビだ。テレビ番組を調査・分析するエム・データ社によると、地上波のNHKと在京民放5社の参院選報道は激減。公示日の4日から15日までの選挙に関する放送時間は計23時間54分で、3年前に比べ6時間43分も減少した。特に「ニュース/報道」番組の減少が目立ち、全体で約3割減、民放に限っては約4割も減らしているという。モリカケ疑惑、アベノミクス偽装の統計不正、老後資金2000万円不足問題、浮き彫りになった貧弱な年金制度、消費増税。安倍政権に対する不信は高まる一方なのに、選挙戦が盛り上がらないわけである。
 一方でこの間、韓国叩きはエスカレート。元徴用工訴訟をめぐる仲裁委員会開催要請に応じなかったとして河野外相はきのう19日、南官杓駐日大使を呼び出しで猛抗議。ノータイでソファにふんぞり返り、手を振り回しながら、こうまくし立てた。
「ちょ、ちょっと待ってください、韓国側の提案は全く受け入れられるものではない、国際法違反の状況を是正するものでないということは、以前に韓国側にお伝えをしております。それを知らないふりをして改めて提案するのは極めて無礼でございます」
 事実上の対抗措置として安倍政権が発動した輸出規制をめぐり、説明を求めた韓国産業通商資源省の課長らをとっちらかった汚部屋に通した経産省の対応もひどかったが、それを上回る外交非礼だ。そしてテレビは安倍政権の「強い外交」を垂れ流し。元徴用工の個人請求権は1965年の日韓請求権協定で解決済みとするのが日本政府の立場だが、徴用工問題を生じさせたのは日本の植民地支配だ。国際法を振りかざしてケンもホロロとは、血も涙もない。


■デタラメ政治が通用しない「与党過半数」
 政治評論家の森田実氏はこう言う。
「河野外相の態度はあまりに下品、愚かだとしか言いようがありません。外交の基本である話し合いを放棄するのであれば外務大臣の資格はない。安倍首相が喜び、政権にプラスになると思い込んでパフォーマンスに走ったのかもしれませんが、相手国の政府を認めないやり方は根本的に間違っている。韓国の人々は侵略時代を思い出したのではないでしょうか。日本が強硬姿勢を続ければ、国交断絶という重大な局面を迎えかねない。安倍首相が熱を入れる東京五輪に隣国が参加を拒否する事態になれば、日本は戦後70年間守り通してきた平和国家の看板を下ろすことになりますよ」
 いくら国家権力が批判を封じ込めようとし、メディアが忖度を続けても、選挙期間中でさえ頻発するオレさま政権の横暴に、民意はもう黙っていられないだろう。参院選の焦点は自公与党と日本維新の会を合わせた勢力を3分の2割れに追い込めるか否か、である。期日前投票は堅調に推移しているものの、世論調査では相変わらず参院選に対する関心は低く、低投票率が懸念されている。投票所に足を運ぶ有権者が少なければ少ないほど、組織力で戦う与党を利することになる。
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は言う。
「3年前の参院選で安倍政権が衆参3分の2の勢力を握って以降、民主主義はないがしろにされてきた。政治が安定したのではなく、民意が黙殺されるようになったのです。安倍政権は野党の要求も世論の声も無視し、予算委員会を3カ月も開かずに好き放題やってきた。問題は改憲発議ができるかどうかだけではないのです。少なくとも参院で与野党の勢力が伯仲する状況に持ち込めれば、デタラメは通用しません」
 参院選で政権交代は起こせないが、安倍1強を打ち崩すことはできる。注目の投票率、激戦区の雌雄によって暴政をストップさせる可能性は辛うじて残っている。「安倍ノー」を突き付ける好機をフイにしてはいけない。
(日刊ゲンダイ)
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