松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

米中貿易戦争で日本が受ける最大級のとばっちり


<サプライチェーン網が米中経済をしっかりと結び付けている今、対中貿易額が大きい国ほど米中貿易戦争による痛手も大きくなる>
貿易戦争は「勝者のいない戦争」だ。当事者双方が経済的な損失を受ける上、無関係なほかの国まで巻き添えを食らう。
今の米中貿易戦争は間違いなく、第二次大戦後で最も激烈な貿易戦争だろう。アメリカの同盟国も含め多くの国々がとばっちりを受けている。
なぜか。経済のグローバル化が進んだ今、世界中に張り巡らされたサプライチェーン網が米中経済をしっかりと結び付けているからだ。対中貿易額が大きい国ほど、米中貿易戦争による痛手も大きくなる。
日本にとって中国は最大の貿易相手国。そのため日本は、先進国の中でも最大級のとばっちりを受けることになる。
とばっちりには直接的なものと間接的なものがある。アメリカに輸出される中国製品には、日本製の電子部品や材料が多く使われている。アメリカが中国製品に制裁関税をかければ、実質的には日本製品にも高関税がかかると考えていい。
例えば、中国の輸出に占める他国から輸入した部品や材料の割合は、金額でざっと33%。2017年の日本の対中輸出は約1360億ドルで、そのうち少なくとも約450億ドル分が中国から他の国々に輸出されているとみていいだろう。中国の輸出に占める対米輸出の割合は20%だから、450億ドルの20%に当たる約90億ドルの日本製品に高関税がかかる計算になる。
直接的なとばっちりにはもう1つ、日本企業が中国からの工場撤退を決めた場合にベトナムやインドなどへ移転する際の費用がある。サプライチェーンの再編には多額のコストがかかる。移転先の国に新たに工場を建設し、働き手を育成しなければならない。移転先の国のインフラが未整備であれば、輸送コストなども中国より高くつく。

*インバウンド客も減る
間接的なものとしては、世界経済の成長が鈍化し、日本製品やサービスの需要が減ることが挙げられる。いま中国は世界経済の最大の牽引役で、世界経済の成長への貢献度は28%に及ぶ(アメリカは11%足らずだ)。
貿易戦争で中国経済が減速すれば、世界経済の成長にもブレーキがかかり、結果的に日本製品の需要も低下する。
加えて、貿易戦争で中国の外貨収入が減るため、日本へのインバウンドの中国人客も大幅に減るだろう。昨年、インバウンド客が日本に落としたカネは約410億ドル。うち中国人客が使ったカネが一番多く、140億ドルに上る。仮に中国人客が2割減れば、ざっと30億ドルの観光収入が失われることになる。
米中貿易戦争がテクノロジーでの優位を競う本格的な覇権争いにエスカレートすれば(今の形勢ではそうなりそうだ)、日本経済はさらに深刻な痛手を受けるだろう。
米政府は中国の先端技術へのアクセスを遮断しようとしている。中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が米政府の制裁対象となったことを受け、半導体製造装置で世界第3位の日本企業・東京エレクトロンは中国企業との取引停止を発表した。今後、多くの日本企業が米政府の圧力を受けて、中国企業との取引を控えざるを得なくなるだろう。
10月には閣僚級の米中通商交渉が行われる予定だが、貿易戦争はすぐには収まりそうもない。安全保障でアメリカに依存し、地域における中国の影響力拡大を警戒する日本は、米中の覇権争いではアメリカ側に付かざるを得ない。大いにはた迷惑なこの状況にも耐えるしかない。
(News week)
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