松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

ちょっとした“配慮”で官邸に尻尾を振るNHKの印象操作

  


 翁長知事が亡くなったことを受けて、歌手の安室奈美恵が自分のHPで追悼のコメントを公開した。彼女は今年5月に同知事から県民栄誉賞を授与されたばかりなので、格別の思いがあったのだろう、心のこもったいいコメントだった。その全文は以下の通りである。


「翁長知事の突然の訃報に大変驚いております」


「ご病気の事はニュースで拝見しており、県民栄誉賞の授賞式でお会いした際には、お痩せになられた印象がありました。今思えばあの時も、体調が優れなかったにも関わらず、私を気遣ってくださり、優しい言葉をかけてくださいました」


「沖縄の事を考え、沖縄の為に尽くしてこられた翁長知事のご遺志がこの先も受け継がれ、これからも多くの人に愛される沖縄であることを願っております」


「心から、ご冥福をお祈り致します。安室奈美恵」


 このコメントの肝心要は第3パラグラフで、翁長が「沖縄の事を考え、沖縄の為に尽くしてこられた」人物であること、その「ご遺志がこの先も受け継がれ」ていくことを彼女が願っていることが述べられている。翁長が「オール沖縄」と呼ばれた県民の世論を一身に背負ってオスプレイ配備反対、辺野古基地建設阻止に命を懸けてきて道半ばで逝ったことは誰でも知っている。彼の遺志を受け継ぐと言えば、その闘いを引き継いでいくという意味しかありえない。


 沖縄のメディアはもちろんきちんと全文をキャリーし、本土の多くのメディアもこの肝心要の部分を外すことはなかった。ところが、私が目配りした範囲では、NHKだけはそこを飛ばして「今思えばあの時も、体調が優れなかったにも関わらず、私を気遣ってくださり、優しい言葉をかけてくださいました。心から、ご冥福をお祈り致します」という要約の仕方をした。これは別に誤報でも歪曲でもないのだが、要約する時にどこを採ってどこを捨てるかをちょっと“配慮”するだけで、翁長を憎悪してきた官邸に尻尾を振ってみせることができるという、NHKお得意の印象操作の好例である。


 一見すると公正ぶっているかのようなニュースにも、こういう仕掛けが組み込まれていて、日々「洗脳シャワー」として浴びせられていることを知っておく必要がある。
(日刊ゲンダイ)
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