松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

世界は3選“大歓迎”…「外交の安倍」が聞いて呆れる無残

 


「外交の安倍」が形無しだ。衆人の前で不意打ちを掛けられ、日本の国益に反する提案をされたのに、反論すらできなかった。さんざっぱら喧伝してきた「親密外交」の正体みたり、である。
 ウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで12日、ロシアのプーチン大統領が「前提条件なしの年内の平和条約締結」を求めた一件だ。日本の立場は北方領土の返還が先決。国境線が公式に固定される平和条約を領土交渉を先送りして結べるはずがなく、安倍首相はのめない要求を突き付けられた形だ。当然、野党は「国辱」と猛批判、自民党総裁選で戦っている石破元幹事長も「皆の前でそんなことを言われていいのか」と反発した。
 政府は「日本の方針に変わりはない」と平静を装い、安倍は帰国した13日、公明党の山口代表に「プーチン氏の平和条約締結への意欲の表れだ」と取り繕った。河野外相に至っては、「向いてる方向は日ロで同じ」と言っていたが、ロシア政府高官が「北方領土の棚上げ」と明言しているのだからアホじゃないのか。
 安倍はプーチンとこれまで22回も首脳会談を行ってきた。「シンゾー」「ウラジーミル」とファーストネームで呼び合い、地元・山口の温泉にも招くほどの近しい関係だというのが自慢だったが、完全にコケにされていたことがハッキリしたわけだ。
 2014年のクリミア危機を理由に、プーチンはG8から追い出され孤立した。しかし、北方領土交渉を進めたい安倍は、ロシアへの経済制裁こそ欧米と足並みを揃えたものの、世界の首脳がこぞってボイコットしたソチ五輪開会式に出席、プーチンにシッポを振ってきた。「未来志向の新しいアプローチ」とか言って、まずは共同経済活動からと、「8項目の経済協力プラン」まで提案してきた。ところが、交渉が進むどころか、3000億円の経済協力を食い逃げされ、ロシアは北方領土の実効支配を強めている。今回の訪ロ中には、北方領土のすぐそばで中ロ合同の軍事演習まで見せつけられた末、ちゃぶ台返しである。結局、安倍はプーチンにいいように利用され、振り回されただけなのだ。


■安倍外交は、もはや限界
「親密」の化けの皮が剥がれたのは米国のトランプ大統領との関係でも同じだ。
 巨額の対日貿易赤字を問題視するトランプが、〈日本がどれだけ(米国に)払わなければならないかを伝えた瞬間、(良好な関係は)終わる〉と語ったと米紙が報じたが、「アメリカファースト」のトランプにどんなにスリ寄って、ゴルフ友達になろうと便利づかいされるのが関の山。
 トランプの眼中には、中間選挙と次の大統領選しかない。トランプのポイント稼ぎのために、安倍はバカ高い兵器を爆買いさせられただけでなく、今度は、貿易協議で無理難題を押しつけられる。すでにトランプは貿易取引で合意しなければ「日本は後悔する」と脅してきてもいる。
 国連総会に合わせて行われる見通しの日米首脳会談で、安倍が日本の望まない「2国間FTA」の締結を迫られるなど、厳しい要求を突き付けられるだろうことは火を見るより明らかだ。
 国際ジャーナリストの春名幹男氏がこう言う。
「対ロシアでも対米国でも、安倍外交の限界が露呈したという一言に尽きます。特に米国については、6月の首脳会談でトランプ大統領が、対日貿易赤字に不満をぶつけて『私は真珠湾攻撃を忘れない』と発言したとされる。その時点で『蜜月』などと言える状況ではないことを、安倍首相は悟っていなければおかしい。トランプ大統領にしてみれば、『拉致問題で頼みごとばかりしてきて、だったらおまえは何をしてくれるんだ』といったところでしょう。日本は宣戦布告されたに等しい状況ですよ」
“強固な信頼関係”が聞いて呆れる。しょせんただの金ヅルだったのだ。


■影響力も存在感もなく、全く相手にされなくなった日本
 そんな中、日本に対し融和姿勢を見せてきているのが中国だ。
 12日にウラジオストクで行われた習近平国家主席との首脳会談では、来月の安倍訪中で合意した。「米中貿易摩擦でトランプとバチバチやっている中国が、対米牽制で日本へ接近」などと解説されるが、むしろ、トランプに見捨てられる不安から、成果欲しさに訪中する安倍の方が、足元を見られることになるのではないか。中国主導の経済圏構想「一帯一路」に関し、安倍は第三国へのインフラ投資に協力する方針を見せているが、ここでも利用されることになりかねない。
 拓大教授の富坂聰氏(現代中国)はこう言う。
「米中の関係が悪化しているので、今、日本に対中関係改善のチャンスが出てきているのは間違いありません。とはいえ、5年かかって、ようやく第2次安倍政権発足以前の状況に戻ったにすぎず、マイナスがゼロになった程度ですけどね。もっとも、日本に対する中国側のわだかまりが少なくなったのは、日本に対して、もはや興味がなくなっているから。中国は、GDPで日本を抜き、将来は、米国も抜いて世界最大の経済大国になる見通しです。日本のことなど、もう意識する必要も本気で相手にする必要もないと思っていますよ」
 しょせん「外交の安倍」なんて、国内向けの国民だましでしかないのだ。世界のリーダーには、八方美人の外面外交の無定見が見透かされている。米ロ中のパワーゲームの中で、シンゾーは格好の「便利屋」なのではないのか。


■こんな御しやすい首相はいない
 G7の先進諸国でメルケル独首相に次いで在職期間が長いと威張ってきたのが安倍だ。普通なら、総裁3選を確実にしているのだから、世界がちょっとは安倍に媚びてもおかしくないのに、全く逆なのだから、驚いてしまう。
 5年半も首相をやっているくせに、一体、誰と渡り合えるのか。胸襟を開けるのか。一人でもいるなら、挙げて欲しいものだ。プーチンにもトランプにもハシゴを外された。こんな御しやすい首相はいない。世界は「安倍3選」大歓迎で、シメシメだろう。
元外交官の天木直人氏がこう言う。
「日朝会談を熱望しても、北朝鮮にすら相手にされないのが今の安倍外交です。世界の覇権国家との駆け引きにおいて、日本が影響力を及ぼすことはなく、存在感はありません。世界にとって全くと言っていいほど害がない、という意味でも、米ロ中にとって安倍3選は好都合なのです」
 そんな安倍を8割の自民党国会議員が支持しているのだからどうかしている。「世界と渡り合えるのは安倍首相だけ」などと言っている自民党も、世界中の笑いものだ。
「ここまで安倍外交の限界がはっきりして、無残な状況が露呈したのに、それでも安倍さんに3期9年も首相をやらせようとするなんて、自民党はおかしくなっているとしか言いようがありません。安倍さんは、改憲してレガシーを残したいがために3期目に執着しているだけなのですから、安倍さんのためを思うなら『もうお辞めになった方がいい』と退陣を促すのが筋じゃないですか。これ以上、安倍政権が続けば、日本外交はますます劣化していくばかりです」(春名幹男氏=前出)
 まだ総裁選の投票日までには時間がある。今度のプーチンの突然の平和条約提案の一点だけでも、安倍支持を返上する国会議員が続出してもおかしくない事態である。だが、ヘタレの自民党に、そんな期待はできないところが、この国の不幸だと言うしかない。
(日刊ゲンダイ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「美声を科学する」販売店
◉Mazzuola Editore ダイレクトセール・松尾出版直販(送料無料)
http://mazzola-editore.easy-myshop.jp
◉Amazon
https://www.amazon.co.jp/美声を科学する-松尾篤興/dp/4990812808/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1521368401&sr=8-1&keywords=美声を科学する