松尾篤興のブログ「閑話放題」

今迄にない科学的な整合性から導かれた正しい発声法から、日本の政治まで、言いたい放題の無駄話。

「失われた10年」を「30年」に拡大させた戦後の無責任体制

         

 自民党の萩生田光一幹事長代行が先週、6月の日銀短観次第で10月の消費増税を先送りし、「信を問う」解散・総選挙を示唆した。2016年の伊勢志摩サミットで、安倍首相は「世界経済はリーマン・ショック前に似ている」と発言し、国際的な批判を浴びながら2度目の増税延期を決めた。萩生田発言の通りになれば、6月短観の発表は参院選直前で、アベノミクスの失敗批判をかわせるタイミングだ。どこか、「狼がきた」と始終嘘をつき、最後は狼に食べられてしまうイソップ物語に似ている。いま必要なのはアベノミクスの失敗を認めることだ。
 先週上梓した拙著「平成経済 衰退の本質」(岩波新書)でこの間の経済衰退の本質について分析したが、アベノミクスは「失われた30年」をもたらした失敗経済政策の集大成にすぎない。
 衰退の原因に戦後の無責任体制があるのは明らかだ。90年代のバブル崩壊後、経営責任を曖昧にして抜本的な不良債権処理を怠った。財政拡大と金融緩和でごまかし続け、97年の金融危機に帰結した。その後も財政赤字は拡大する一方だが、GDPは横ばい。平均所得や家計消費は低下し、非正規雇用が急増。生産年齢人口(15~64歳)も97年をピークに減少に転じた。原発事故でも同じ無責任が繰り返された。結局、日本は「失われた30年」になった。
 実際、スパコン、半導体、液晶、エネルギー、バイオ医薬品、太陽光発電、リチウムイオン電池……と、日本の産業衰退がひどくなっている。世界的な技術革新や産業の大転換期に、財政・金融政策でごまかすだけで、日本を「ゆでガエル」にしてしまったからだ。この根本的な間違いを正さない限り、消費増税を先送りしても財政赤字を拡大させるだけで、経済衰退は止まらない。
 自民党は戦争責任を免罪してくれた米国に頼れば何とかなるという思考停止に陥っている。その無責任体質は、不良債権問題でも原発事故でも責任を棚上げし、産業構造の転換を進めず、先端産業での置いてけぼりを招いた。だが、緩やかに滅んでいけるほど、世の中はのどかではない。やがて大きな痛みとショックに見舞われるのは必定だ。いち早い政策転換が必要である。
(日刊ゲンダイ・金子勝)
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